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特別展『ポンペイ』東京国立博物館 「きものでミュージアム」vol.7

特別展『ポンペイ』東京国立博物館 「きものでミュージアム」vol.7

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紀元79年、イタリアのヴェスヴィオ山で大規模な噴火が発生。ローマ帝国の都市ポンペイが飲み込まれました。今回、ナポリ国立考古学博物館からポンペイ遺跡の名品がかつてない規模で来日。「ポンペイ展の決定版」ともいえる迫力の展覧会が東京国立博物館にて開催されています!恒例、招待券プレゼントもお見逃しなく。

ナポリ国立考古学博物館から名品が来日!

今回は、東京国立博物館で開催中の特別展『ポンペイ』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。
特別展『ポンペイ』ポスター

公式サイトより

「そこにいた。」

約2000年前の紀元79年、イタリアのナポリ近郊のヴェスヴィオ山で大噴火が発生。人口1万人ほどのローマ帝国の都市ポンペイが姿を消しました。

大量の噴出物で埋没した都市は「タイムカプセル」となり、当時の人々の生活空間と家財がそのまま封印されています。18世紀に発掘されるまで、ほぼ噴火当時の状態のまま埋もれていました。以後、ポンペイでは現在に至るまで発掘が続いています。

特別展『ポンペイ』では、モザイク、壁画、彫像、工芸品の傑作から、豪華な食器、調理具、といった日用品にいたる様々な発掘品を展示。古代ローマの都市の繁栄と、市民の豊かな生活をよみがえらせます。

ポンペイ遺跡の膨大な遺物を収蔵するナポリ国立考古学博物館が誇る名品が約150点、かつてない規模で出品される「ポンペイ展の決定版」ともいえる展覧会です。

序章から迫力満点

会場に入るとまず、大画面にヴェスヴィオ山の噴火CGが。かなりの迫力です!

女性犠牲者の石膏像
女性犠牲者の石膏像 ナポリ国立考古学博物館蔵

手前に《女性犠牲者の石膏像》が横たわります。これは、噴火物の堆積層の中で発見された空洞に、石膏を入れ乾くまでおいてから掘り出したもの。空洞は、人間の遺体が分解されてできたものだそう。リアルさに驚きます。

《凝灰岩にはまり込んだ 片手鍋》《遺物が塊になったもの》
《凝灰岩にはまり込んだ 片手鍋》と《遺物が塊になったもの》ナポリ国立考古学博物館

そして、《凝灰岩にはまり込んだ 片手鍋》、《遺物が塊になったもの》と生々しい出土品が並びます。

冒頭から噴火の威力を見せつけられ、動悸が高まります。

この後、展示は5章で構成されます。

第1章 ポンペイの街:公共建築と宗教
第2章 ポンペイの社会と人々との活躍
第3章 人々の暮らし:食と仕事
第4章 ポンペイ繁栄の歴史
第5章 発掘のいま、むかし

ナポリ国立考古学博物館が誇る名品の数々のほか、ポンペイ繁栄の歴史を示す3軒の邸宅「ファウヌスの家」「竪琴奏者の家」「悲劇詩人の家」の一部を再現。会場内を歩きながら、遺跡や生活空間の雰囲気を感じることができます。

展示室風景
展示室風景

また、臨場感あふれる「ファウヌスの家」3DCG、高精細映像の 巨大ディスプレイで古代都市ポンペイのすがたも体感できます。

バックスとヒョウとブドウ

私の一番のお気に入りは、フレスコ画の《バックス(ディオニュソス)と ヴェスヴィオ山》。ローマ神話のワインと酩酊を司る神バックス(英語読みはバッカス)は、しばしばブドウとヒョウとともに表現されます。

こちらのバックスは、ブドウを身にまとっています。まるでブドウの着ぐるみを着ているような姿、なんてかわいいんでしょう。

そして、彼が右手に持つ酒杯からワインが滴り、ヒョウがうれしそうに飲んでいます。ブドウの着ぐるみのバックスと呑兵衛のヒョウ。とてもほほえましくて気に入ってしまいました。

ここに描かれているヴェスヴィオ山は、現在よりも高く、頂上までブドウ畑が広がっています。噴火前の山を描写した唯一の作品だそうです。

《バックス(ディオニュソス)と ヴェスヴィオ山》※広報画像
《ヒョウを抱くバックス(ディオニュソス)》
《ヒョウを抱くバックス(ディオニュソス)》 ノーラ歴史考古学博物館蔵

会場にはもうひとりバックスが。

パロス大理石の彫刻《ヒョウを抱くバックス(ディオニュソス)》は、ヒョウとブドウを腕に抱えています。小さなヒョウが甘えるようにバックスを見あげ、彼もとても優しいまなざしで、愛おしそうに見つめています。

この彫刻は、1930年代に下半身が、2003年から2004年にその他の部分が東京大学の学術発掘隊により発掘されました。

そしてバックスに関連した作品がもう1点。

《ブドウ摘みを表わした 小アンフォラ(通称「青の壺」)》。

胴の部分はバックスの世界に関連した描写で装飾されています。

クピドたちがブドウを収穫して桶に入れワイン作りをしている面と、たわわに実るブドウの木を細やかに彫刻している面があり、とても繊細な彫刻に目を見張ります。

紺青色ガラスに白色ガラスを重ねたカメオ・ガラスの美しい壺は、2000年前のものとは思えません。

《ブドウ摘みを表わした 小アンフォラ(通称「青の壺」)》
《ブドウ摘みを表わした 小アンフォラ(通称「青の壺」)》の正面と側面 ナポリ国立考古学博物館

美女と装飾品

『ポンペイ』展は、美女ぞろいです。

《ビキニのウェヌス》
《ビキニのウェヌス》ナポリ国立考古学博物館

まず筆頭は、《ビキニのウェヌス》。

金のビキニ姿で、金のネックレスとブレスレットを身に着け、そして腹部にも金の装飾があります。サンダルを脱ごうとしているその姿はとても艶めかしいです。

次に《書字板と尖筆を持つ女性(通称「サッフォー」)》。こちらはフレスコ画です。

右手に持った尖筆を唇に当て、左手に書字板を持ち、金のネットで髪をまとめ、金のイヤリングをつけています。聡明な表情が美しく、古代ギリシアの女性詩人であるサッフォーという通称名で呼ばれています。

そのほか、《三美神》に《ウェヌス》と美女がたくさんいます。美男もたくさんいますので、探してみてくださいね。

《書字板と尖筆を持つ女性》(通称「サッフォー」)
《書字板と尖筆を持つ女性(通称「サッフォー」)》ナポリ国立考古学博物館
《ポリュクレイトス 「槍を持つ人」》
《ポリュクレイトス 「槍を持つ人」》ナポリ国立考古学博物館

そして、今回とても惹き付けられたのは、デザインがすばらしい豪華なアクセサリーの数々。

美しい指輪やイヤリング
美しい指輪やイヤリング

指輪にブレスレットに、ネックレス。
ゴールドでエメラルドや淡水パールを使ったもの、カメオもあります。どこかのハイブランドの新製品といわれたら、そのまま信じてしまいそうです。

《エメラルドと真珠貝のネックレス》ナポリ国立考古学博物館

ポンペイの人々の豊かな暮らし

1万人ほどの人口を擁したポンペイの街には、フォルム(中央広場)、劇場、円形闘技場、浴場、運動場といった公共施設があり、水道もありました。

発掘された生活用品やから、豊かな暮らしぶりがうかがえます。

食器や生活用品が並ぶ
食器や生活用品が並ぶ

裕福な市民たちの家財や装飾、宴席を飾った豪華な品々。さまざまな調理器具や湯沸し器、料理保温機まであります。

パンはパン屋で売られ、その様子はフレスコ画の《パン屋の店先》に描かれています。またそのパンにそっくりな《炭化したパン》も展示されていました。

ポンペイの人々は思ったより豊かな生活を楽しんでいたようです。

《パン屋の店先》
《パン屋の店先》ナポリ国立考古学博物館
炭化したパン、ブドウなどが並ぶ
炭化したパン、干しブドウなどが並ぶ

モザイクの素晴らしさ

《辻音楽師》

『ポンペイ』展では、邸宅の床やテーブルを飾ったモザイクの数々も出展されています。

数ミリのモザイクで、細かい描写や微妙な色合いが写実的に表現されて。これだけの表現には、どんなに時間と労力がいることだろう…とその工程に思いを馳せます。

「ファウヌスの家」を再現したエリアに飾られたモザイクは、まさに当時の栄華の象徴。

《ナイル川風景》

装飾目的のものだけでなく、複数の邸宅の玄関の床には《猛犬注意》のモザイクが描かれていました。

当時は字が読める人ばかりではないため、文字だけでなく猛犬の絵を描いていたよう。猛犬のモザイクは、単純ですがとてもかわいいですね!

猛犬のモザイク
再現された邸宅の玄関
再現された邸宅の玄関

いにしえのポンペイに思いを馳せて

『ポンペイ』展は、予想を超える大迫力の展覧会でした。

紀元79年頃といえば、日本では弥生時代。

稲作をし、倭奴国王が後漢から「漢委奴国王」の金印を受け 取ったころです。当時のポンペイで裕福な人々は、豪華な邸宅に住み豊かな生活を楽しんでいました。

そして、それらが一瞬にしてすべて埋もれてしまった災害の恐ろしさも実感。

日本は世界有数の火山国です。つい最近も小笠原諸島の海底火山が噴火し、各地に大量の軽石が漂着して被害が出たり、トンガの海底火山の噴火で広範囲に津波が起きたりしました。ポンペイの火山噴火はひとごとではないように思えました。

現在、海外旅行は難しいご時世ですが、いつの日かポンペイを訪れて、遺跡をこの目で見たいと思います。早くその日が来るように祈りつつ…

家の模型を眺める
家の模型を眺め、ポンペイに思いをはせる

この日の装い

ワインの神バックスと《ブドウ摘みを表わした小アンフォラ(通称「青の壺」)》にちなんで、この日のテーマは「ブドウ」。

あえてブドウ柄ではなく、ブドウ色の装いをセレクトしました。

小糸染芸のモダンな小紋は、裁ち合せにもこだわって仕立てました。洒落袋帯はとなみ織物の総紗縫。

この日の装い1
ポンペイ展の公式Instagram(@pompeii2022)のキャラクター、モデルのAMONさん扮する「#ポンペイくん」と
この日の装い 帯回り

帯揚げと草履は「きものと」のコラムでもおなじみの着物スタイリスト・秋月洋子さんの『れん』より。ブドウの帯留と根付けはコットンパールで作りました。帯留は、微妙に違う2色のコットンパールを使って立体感を出しています。

ちょっと、きちんと

秋月洋子さんのコラムはこちら!
「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」

小糸染芸 5代目当主・小糸太郎さん

小糸太郎さんのインタビューはこちら!
小糸染芸 5代目当主・小糸太郎さん

190cmの長身におしゃれな着こなし、ダンディな佇まいの奥にのぞく優しい笑顔。創業明治元年の老舗染屋「小糸染芸」5代目当主・小糸太郎さんは、着物に豊かな自己表現の可能性を見出します。個々人がもつストーリーがスタイルになる…そんな着物の魅力を伺いました。

今回ご紹介の展覧会情報

特別展『ポンペイ』ポスター

特別展『ポンペイ』

東京国立博物館 平成館 特別展示室
https://pompeii2022.jp/

日 時:
2022年1月14日(金)~4月3日(日)
9:30~17:00

休館日:
月曜日、3月22日(火)※ただし、3月21日(月・祝)、3月28日(月)は開館

■ 巡回予定

2022年4月21日(木)~7月3日(日)
京都市京セラ美術館
https://kyotocity-kyocera.museum/

2022年10月12日(水)~12月4日(日)
九州国立博物館
https://www.kyuhaku.jp/

ほか1会場(宮城)

※本展は事前予約(日時指定券)を推奨します。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。

※特別展『ポンペイ』は、個人利用にかぎり展示室内で写真撮影ができます。注意事項をよく読んで撮影してください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

特別展「体感! 日本の伝統芸能」ポスター

ユネスコ無形文化遺産 特別展
「体感! 日本の伝統芸能―歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界―」

東京国立博物館 表慶館
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/dentou2022/

日 時:
2022年1月7日(金) ~ 2022年3月13日(日)
※会期中、一部展示替えあり
9:30~17:00
事前予約(日時指定券)推奨

休館日:月曜日

【開館55周年記念特別展】上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界― ポスター

【開館55周年記念特別展】上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―

山種美術館
https://www.yamatane-museum.jp/

日 時:
2022年2月5日(土)~4月17日(日)
添付チラシ画像記載の開館時間が変更となりました。
午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)

休館日:
月曜日 3/21(月・祝)は開館、3/22(火)は休館

上村松園 《蛍》 1913(大正2)年 絹本・彩色 山種美術館
上村松園 《蛍》 1913(大正2)年 絹本・彩色 山種美術館

◆ 読者プレゼント ◆

さて、ここでうれしいお知らせです。
今回は、山種美術館【開館55周年記念特別展】「上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―」を5組10名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

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https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2022年2月17日(木)まで

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