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『マティス展』東京都美術館 「きものでミュージアム」vol.22

『マティス展』東京都美術館 「きものでミュージアム」vol.22

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20世紀芸術の巨匠、アンリ・マティスの大回顧展が20年ぶりの開催です!パリ、ポンピドゥー・センターから来日した名品約150点は、晩年の傑作南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂まで網羅的に。どうぞお見逃しなく!

色彩の魔術師、アンリ・マティス20年ぶりの大回顧展

メインビジュアル

会場入り口のメインビジュアル

今回は、東京都美術館で開催中の『マティス展』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

20世紀を代表するフランスの巨匠、アンリ・マティス(1869‒1954)の大規模な回顧展が約20年ぶりに開催されています。

世界最大規模のマティスコレクションを誇る、パリ、ポンピドゥー・センターから、名品約150点が勢ぞろい!

ポンピドゥー・センター外観

ポンピドゥー・センター外観(レンゾ・ピアノ、リチャード・ロジャース設計)©Berengo Gardin, Gianni ©Centre Pompidou, 2020

北フランスの裕福な家に生まれ、法律家への道を歩んでいたマティス。画家になることを決心してからは、パリ国立美術学校で、象徴主義の画家ギュスターヴ・モローのアトリエに入門します。

フォーヴィスム(野獣派)を生みだした近代美術の中心人物であり、84歳で亡くなるまで鮮やかな色彩と光を探求し続けました。

マン・レイが撮影したアンリ・マティス

アンリ・マティス(1922年、マン・レイ撮影)© Man Ray Trust / Adagp, Paris Photo © Centre Pompidou, MNAMCCI/Dist.RMN-GP

「物自体を描くのではなく物と物が持っている関係を描く」

と語り、初期から晩年まで実験を続けたマティス。

今回の展覧会では、絵画をはじめ、彫刻、ドローイング、版画、切り紙絵、そして晩年最大の傑作でありマティス創作の集大成である南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する資料までを網羅します。

各時代の作品を観ることでその変遷に驚き、あらためてマティスが生み出す色彩の豊かさに気づくとともに、その神髄を深く味わうことができるでしょう。

※出品作品は特に記載がない限りアンリ・マティスの作品で、ポンピドゥー・センター/国立近代美術館所蔵。

初期の作品に感じる色彩のめばえ

エントランスは白一色

会場の作品を引き立てるためか、白一色のエントランス

エントランスから展示室に入ると……

そこには色彩があふれています。

冒頭に飾られているのは、《読書する女性》。

《読書する女性》

《読書する女性》1895年 カトー゠カンブレジ・マティス美術館寄託

写実的で、最初私は、同時代のデンマークの画家ヴィルヘルム・ハンマースホイの作品かと思ったほど。言われなければマティスの作品とは思わないでしょう。

しかし、その色彩の奥深さにはただならぬものを感じました。

数年後に描かれた《ホットチョコレートポットのある静物》は、《読書する女性》から作風に少し変化がみられます。

《ホットチョコレートポットのある静物》

《ホットチョコレートポットのある静物》1900–02年

何と趣のある絵なのでしょう。すべての色味が、引き立て合いつつも絶妙な調和をみせているところに目を奪われました。

そして初期の傑作《豪奢、静寂、逸楽》へ。

《豪奢、静寂、逸楽》

《豪奢、静寂、逸楽》1904年秋ー冬

新印象派ポール・シニャックの招きで南仏サント・ロペでひと夏を過ごしたマティスが、パリに戻ってから描いた挑戦的な作品です。

明らかにシニャックの影響がみられますが、この後再び、大きく方向性を転換していきます。

実験と探求の時代

《白とバラ色の頭部》

《白とバラ色の頭部》1914年秋

第一次世界大戦が勃発し、息子ふたりを含む周りの人間が徴兵されていくなかにあっても、マティスは画家としての探求と実験を進めました。

展示を順に観ていくと、年代とともに変化していく作風に本当に驚きます。どれほどの熱量を持って試行錯誤し、制作していたのだろう……と感嘆するほどに。

《アトリエの画家》の右の画家はマティス本人ですが、洋服を着ていないように見えます。

《アトリエの画家》

《アトリエの画家》1916年末–1917年初め

モデルは緑の洋服を着て紫の椅子に座り、キャンバスの中にも同じ配色で描かれています。洋服と椅子の補色的な色使い、モデルと画家の対比、室内と窓から見えるパリの風景が不思議なバランスで調和し、とても心に残りました。

《金魚鉢のある室内》

《金魚鉢のある室内》1914年春

この時期のマティスの作品には、室内と窓、窓から見える外の風景が印象的に描かれているものが何点もあります。

室内と窓の外の風景の対比と調和。

風景そのものを描くのではなく、窓によって区切られた風景を描くことに興味を持っていたのでしょうか。

《ニースの室内、シエスタ》

《ニースの室内、シエスタ》1922年1月ごろ

シャルル=フェリックス広場のアトリエのマティスの写真と彫刻の展示

シャルル=フェリックス広場のアトリエのマティスの写真と彫刻の展示

ニースからヴァンスへ

1938年、マティスはニースからヴァンスへ移転します。翌1939年の第2次世界大戦勃発時には70歳になっていました。1941年に十二指腸癌を患い手術を受け、その後2年間療養します。

ヴァンスでの10年は、世界情勢もマティス自身の体調も決してよくはなかったのですが、対極的に、この時期に残した作品は大変明るい色彩にあふれ、光に満ちています。

《緑色の大理石のテーブルと静物》

《緑色の大理石のテーブルと静物》1941年9月

原色も多用しているのですが、不思議とくどさはなく、どこまでも明るく、優しい印象さえ受けます。

《マグノリアのある静物》

《マグノリアのある静物》 1941年12月

《赤の大きな室内》

《赤の大きな室内》 1948年春

シンプルですが厳選された色と形と線。

マティスらしい作品の数々を味わえ、楽しい気分になります。

《黄色と青の室内》

《黄色と青の室内》 1946年

音楽が鳴り響くようなリズム感の切り紙絵

1930年代より習作のための手段として用いてきた切り紙絵が、40年代になると重要なものとなっていきます。

切り紙絵とは、グワッシュで彩色された鮮やかな紙を、ハサミで切り出して描く手法のこと。

《ジャズ》の展示風景

《ジャズ》の展示風景

鮮やかな切り紙絵による書籍《ジャズ》。

さらには、建築的なスケールで切り紙絵を原画にして制作され、アトリエの壁に設置された2枚組の大作《オセアニア》などが展示されています。

ジカ・アッシャーのプリントによる壁掛け《オセアニア》

左:《オセアニア、空》1946年夏、右:《オセアニア、海》1946年

ヴァンス・ロザリオ礼拝堂

ヴァンス礼拝堂

中央:《ヴァンス礼拝堂、ファサード円形装飾〈聖母子〉(デッサン)》、両脇:《上祭服[マケット]》1950–1952年 表側[左]/裏側[右] カトー=カンブレジ・マティス美術館寄託

マティスが最晩年に、自身の集大成として建築、装飾、家具、オブジェ、典礼用の衣装などを手がけ、最高傑作のひとつともいわれている南仏・ヴァンスのロザリオ礼拝堂。

マティスの言葉

マティスが持つすべての技法を駆使して作り出された、色と光にあふれた空間です。

ロザリオ礼拝堂 堂内

ロザリオ礼拝堂 堂内 ©︎NHK

ロザリオ礼拝堂 外観

ロザリオ礼拝堂 外観 ©︎NHK

こちらでは、ヴァンスの内部や、制作中のマティスの様子を伝える豊富な資料と残されたドローイングが展示され、また今回の展覧会のために4K映像で撮影された礼拝堂内の様子も、巨大なスクリーンにて上映されています。

スクリーンで上映される礼拝堂をながめる

最後に

マティスの作品は赤、黄色、青、緑、紫など鮮やかな色を多用しているのですが、目に優しく、とても生命力にあふれています。

一見単純に見える線や形は、究極まで余分なものをそぎ落とし洗練されたもの。展示会場を出るころにはとても気分が明るくなり、なんだかスキップしたいような気持ちになりました。

マティスの生涯を、年代を追って展観できる回顧展でした。ぜひ着物でお出かけくださいね。

ミュージアムショップ
ミュージアムショップ
グッズのクオリティも高く、どれもこれも欲しくなるものばかりでした

この日の装い

ヴァンスのロザリオ礼拝堂を完成させたのち、典礼の種類に合わせた6色の上祭服をデザインしたマティス。

《上祭服[マケット]》

《上祭服[マケット]》1950–1952年 表側] カトー=カンブレジ・マティス美術館寄託

復活の象徴である十字架に、植物のモチーフや、「見る、察知する」を意味するプロヴァンスの言葉がちりばめられています。

この日の装い1

そのうちの黒い上祭服を意識して、黒地に白の絞りの訪問着を選びました。20代のころ母に買ってもらい今もお気に入りのものです。

この日の装い:後ろ姿

帯はとなみ織物の唐花文様ですが、マティスと通ずるものを感じて。

この日の装い:帯回り

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

マティス展ポスター画像

マティス展

会場:東京都美術館 企画展示室
https://matisse2023.exhibit.jp/

日 時:2023年4月27日~8月20日 
    9:30~17:30(金~20:00)
※入室は閉室の30分前まで

休館日:月曜日
(ただし、7月17日、8月14日は開室)、7月18日 

※日時指定予約制です。
※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

マティス展ポスター画像

【特別展】 小林古径 生誕140年記念 小林古径と速水御舟 ―画壇を揺るがした二人の天才―

山種美術館
https://www.yamatane-museum.jp/

日 時:2023年5月20日(土)~7月17日(月・祝)
    会期中、一部展示替えあり。
    前期:5月20日(土)~6月18日(日)
    後期:6月20日(火)~7月17日(月・祝)
    午前10時~午後5時 (入館は午後4時30分まで)

休館日:月曜日 [但し、7/17(月・祝)は開館]

※きもの特典:きものでご来館のお客様は、一般200円引き、大学生・高校生100円引きの料金となります。
※複数の割引・特典の併用はできません。
※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

染織図案とあかね會ポスター

丸紅ギャラリー開館記念展Ⅳ 染織図案とあかね會―その思いを今につむぐ―

丸紅ギャラリー
https://www.marubeni.com/gallery/

日 時:2023年5月16日(火)~7月31日(月)
   (前期:2023年5月16日~6月17日/後期:2023年7月3日~7月31日)
    午前10時~午後5時 (入館は閉館の30分前まで)

休館日:日曜日、祝日、年末年始、展示替え期間日※6月18(日)~7月2日(日)は展示替え期間のため休館

※着物・浴衣など、和装でのご来館の方は無料
※現金利用不可。交通系ICまたはクレジットカードをご用意ください。
※詳細は丸紅ギャラリー公式サイトをご覧ください。

◆ 読者プレゼント ◆

◆ 読者プレゼント ◆

さて、ここでうれしいお知らせです。
今回は『マティス展』東京都美術館の招待券を2組4名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

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https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2023年5月30日(火)まで

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