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東京国立近代美術館70周年記念展『重要文化財の秘密』東京国立近代美術館 「きものでミュージアム」vol.21

東京国立近代美術館70周年記念展『重要文化財の秘密』東京国立近代美術館 「きものでミュージアム」vol.21

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今回は、すべてが重要文化財!明治以降の絵画・彫刻・工芸について、全指定68件のうちの51点が展示されます。重要文化財のみで構成される展覧会は、今回が初。どこかで観たことある……という作品ばかりをリアルに鑑賞できます!

51点、すべてが重要文化財!

エントランス前

今回は、東京国立近代美術館で開催中の、東京国立近代美術館70周年記念展『重要文化財の秘密』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

明治以降に指定された重要文化財の大半が集結

そもそも、重要文化財とは?

文化庁は、絵画・彫刻等の美術工芸品及び建造物である有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定し、そのうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定し、その保護を図っている。

ー文部科学省HPより

川合玉堂 《行く春》

川合玉堂 《行く春》 重要文化財  1916(大正5)年 東京国立近代美術館  3月17日~5月1日

2022年11月現在、906件が国宝に、10,872件が重要文化財に指定されています。

そのうち明治以降の絵画・彫刻・工芸で重要文化財に指定されたのは68件で、国宝はまだ1件もありません。今回はそのうちの51件、実に4分の3にあたる作品数が集まる稀有な展覧会となります。

重要文化財は保護の見地から、公開のための移動回数や公開日数が制限されており、これは驚くべき数字です!

「重要文化財指定年順年表」

重要文化財指定年順年表

また会場に展示されている「重要文化財指定年順年表」を見ると、近代美術評価基準の変化を知ることができます。今回展示されない作品も含まれていますので、ぜひこちらにもご注目を。

2022年11月に指定されたばかりの鏑木清方の《築地明石町》《新富町》《浜町河岸》の三部作も展示されます(展示期間4/16まで)。

東京国立近代美術館開館70周年だからこそ実現した、貴重な展覧会と言えましょう。

《生々流転》40m一挙公開!

横山大観 《生々流転》の解説パネル

横山大観 《生々流転》の解説パネル

横山大観《生々流転》は、まずその長さに驚くことでしょう。

山奥で一滴の水が集まり渓流となり、やがて大河に、そして海へと……

その間、季節の移り変わりや人々の生活、動物たちも。最後は龍となり嵐とともに天に還るという水の輪廻が描かれます。

横山大観 《生々流転》

横山大観 《生々流転》重要文化財 1923(大正12)年 東京国立近代美術館 通期

制作されてから重要文化財に指定されるまでが44年と、最短である作品。

人物や橋の細かい描写から大胆な嵐のうねりまで、墨の濃淡の表現を存分に味わうことができます。40mと、作品の長さと物語の壮大さをじっくりと堪能したい作品です。

高橋由一《鮭》の迫力

高橋由一《鮭》

高橋由一 《鮭》 重要文化財 1877(明治10)年頃 東京藝術大学蔵 通期展示

高橋由一《鮭》は、油彩画最初の重要文化財で、高橋の代表作。多くの人が見覚えのある有名な作品ではないでしょうか。

昭和時代であれば、お歳暮に贈られた荒巻鮭を天井からつるしておくのは年の瀬によく見られた光景。平凡な風景でありながら、そこには非凡なものを感じます。

高橋は繰り返し鮭を描き、1982年に西宮市大谷記念美術館で開催された高橋由一展には9点もの鮭を描いた作品が展示されたそうです。

実物はまず、その大きさに驚きます。

140.0cm × 46.5cmと実物の鮭よりぐっと大きく、また半身が切り取られていることにより、身のみずみずしさ、そして皮や顔との色や質感の対比がとても鮮やか。吊り下げるための荒縄からも表現の多彩さを感じることができます。

《騎龍観音》龍の意外なモデル

原田直次郎 《騎龍観音》

原田直次郎 《騎龍観音》 重要文化財 1890(明治23)年 護國寺(東京国立近代美術館寄託) 通期

原田直次郎 《騎龍観音》は東京国立近代美術館の所蔵作品展「MOMATコレクション」によく展示されている作品で、今まで何度も観ているのですが、観るたびに不思議な印象を持っていました。

龍がどこかかわいらしくて、親近感を覚えるのです。

今回その原因がわかりました!

原田は龍を描くにあたり、なんと顔は犬を、手は軍鶏をモデルにしたそうです。

原田直次郎 《騎龍観音》部分

原田直次郎 《騎龍観音》部分  重要文化財 1890(明治23)年 護國寺(東京国立近代美術館寄託) 通期

……犬がモデルとは!と、とても腑に落ちました。

観音様の静かで慈悲深い顔との対比も際立ちます。背景の陰影の描写もあいまって、ドラマティックであり、どこか劇画チックでもあり、とても印象深い作品です。

南風をリアルに感じる《南風》

右:和田三造 《南風》

右:和田三造 《南風》重要文化財 1907(明治40)年 東京国立近代美術館 通期

《南風》も有名な作品です。《南風》は、最初の官設展覧会である第1回文展で最高賞を受賞しました。

中央の男性の筋肉隆々の上半身に嫌が応でも目が吸い寄せられますが、当時は不自然な筋肉の隆起という批評もあったそうです。頭にかぶった服のはためきや波しぶきに、南風をリアルに感じることができます。また、4人の男性の表情の対比も印象的ですね。

そして実はその隣には、萬鉄五郎 《裸体美人》が展示されています。

2人とも、ほぼ同時代に東京美術学校で黒田清輝を師としていたことから、2人の画風の違いが大変興味深いです。見比べるのも一興です。

工芸品も超絶技巧の逸品ぞろい

工芸品も逸品ぞろいです。

まずは大迫力の鈴木長吉《十二の鷹》。江戸時代、徳川家の鷹狩りの際は全国から12羽の優秀な鷹が集められたそうで、12羽が将軍にお目見えする儀式にのっとった作品です。

鈴木長吉 《十二の鷹》

鈴木長吉 《十二の鷹》  重要文化財 1893(明治26)年 国立工芸館蔵 通期展示

12羽の鷹が木製漆塗の架(ほこ)に止まり、1羽1羽丁寧に作られ、全て表情も姿勢も色も違います。その大迫力に引き込まれ、鷹の表情の多彩さ豊かさに驚くことでしょう。

鈴木は輸出向けの大作を多く手がけ、内外の博覧会でも注目の的でした。

工芸品は、ほかに高村光雲《老猿》、新海竹太郎《ゆあみ》、初代宮川香山《褐釉蟹貼付台付鉢》などが並び、これらも見逃せない展示となっています。

高村光雲 《老猿》

高村光雲 《老猿》 重要文化財 1893(明治26)年 東京国立博物館蔵 通期展示

初代宮川香山 《褐釉蟹貼付台付鉢》

初代宮川香山 《褐釉蟹貼付台付鉢》 重要文化財 1881(明治14)年 東京国立博物館蔵 通期展示

最後に

今回の展覧会では、普段あまり美術館に足を運ばない人でもどこかで観たことがある……という作品が多く並びます。それらの実物を観るのはとても感動する体験になるはず。

春の陽気に誘われて、近くの北の丸公園や千鳥ヶ淵などを散策するのも気持ちいい季節。ぜひ着物姿でお出かけください。

なお、展示期間は作品により異なります。お目当ての作品がある場合、公式サイトで事前にご確認を。以下3点は、内覧会の時には展示されていなかった作品ですので、私もこれらを観に再訪するつもりです!

菱田春草 《黒き猫》

菱田春草 《黒き猫》 重要文化財 1910(明治43)年 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託) 5月9日~5月14日

上村松園 《母子》

上村松園 《母子》 重要文化財 1934(昭和9)年 東京国立近代美術館蔵 4月18日~5月14日

黒田清輝 《湖畔》

黒田清輝 《湖畔》 重要文化財 1897(明治30)年 東京国立博物館蔵 4月11日~5月14日

ミュージアムショップにも、たくさんの魅力的な商品がそろっています。ぜひ鑑賞後に覗いてみてくださいね!

ショップの《築地明石町》の複製

ショップの鏑木清方《築地明石町》の複製を見る

この日の装い

この日の装い
この日の装い

すべてが重要文化財ということですので、『工芸染匠成謙』の付け下げに『誉田屋源兵衛』の袋帯と、正統派の装いで居住まいを正して伺いました。

帯締めは道明の高麗組・信解品、帯揚げは『ゑり萬』の輪出し、根付けはハンドメイドです。

この日の装い 帯回り

2019.12.12

イベント

誉田屋源兵衛 特別展示レポート〜「温故知新」伝統の技と革新の精神〜

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

『重要文化財の秘密』ポスター画像

東京国立近代美術館70周年記念展『重要文化財の秘密』

東京国立近代美術館
https://jubun2023.jp/

日 時:2023年3月17日(土)~5月14日(日)
    9:30-17:00(金曜・土曜は9:30-20:00)
    *入館は閉館30分前まで

休室日:月曜日 (ただし5月1日、8日は開館)

※作品保護のため、会期中一部展示替えがあります。

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

『京都 細見美術館の名品 -琳派、若冲、ときめきの日本美術-』ポスター
展示風景 右:伊藤若冲 《雪中雄鶏図》江戸中期 細見美術館蔵

展示風景 右:伊藤若冲 《雪中雄鶏図》江戸中期 細見美術館蔵

開館25周年記念展 京都 細見美術館の名品 -琳派、若冲、ときめきの日本美術-

大阪髙島屋 7階グランドホール
https://www.mbs.jp/hosomi25-tokimeki/

日 時:2023年3月22日(水)~4月10日(月)     
    午前10時~午後6時30分(閉場午後7時)
    最終日4月10日(月)は午後4時30分まで(閉場午後5時)

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

◆巡回予定
2023年4月26日(水)~5月15日(月)
日本橋髙島屋S.C.

2023年12月23日(土)~2024年1月7日(日)
ジェイアール名古屋タカシマヤ

2024年4月13日(土)~5月26日(日)
静岡市美術館

『富士と桜 ―北斎の富士から土牛の桜まで―』ポスター

【特別展】 世界遺産登録10周年記念 富士と桜 ―北斎の富士から土牛の桜まで―

山種美術館
https://www.yamatane-museum.jp/exh/2023/fuji-sakura.html

日 時:2023年3月11日(土)~5月14日(日)
    前期:3月11日(土)-4月16日(日)
    後期:4月18日(火)-5月14日(日)
    10:00~17:00 (入場は閉館の30分前まで)

休館日:月曜日 但し、5/1(月)は開館

※会期中、一部展示替えを行います。
※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

◆ 読者プレゼント ◆

『重要文化財の秘密』ポスター画像

さて、ここでうれしいお知らせです。
今回は『重要文化財の秘密』東京国立近代美術館の招待券を2組4名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆Facebook
https://www.facebook.com/kimonoichiba/
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https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2023年4月9日(日)まで

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