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特別展『日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱』 東京藝術大学大学美術館「きものでミュージアム」vol.13

特別展『日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱』 東京藝術大学大学美術館「きものでミュージアム」vol.13

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今回は東京藝術大学大学美術館の特別展へ。宮内庁三の丸尚蔵館収蔵の国宝5作品が公開されます。狩野永徳、伊藤若冲など皇室の珠玉の名品の数々… 恒例の招待券プレゼントもお見逃しなく!

前後期ともに見逃せない展示

東京藝術大学大学美術館、外観

東京藝術大学大学美術館

今回は、東京藝術大学大学美術館で開催中の特別展『日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱』 をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

国宝 春日権現験記絵 第四、五 (巻五部)

国宝 春日権現験記絵 第四、五 (巻五部分) 高階隆兼筆 鎌倉時代・延慶2年 (1309) 頃 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示 (巻四:2022/8/6(土)~9/4(日) / 巻五:9/6(火)~9/25(日) )

国宝 蒙古襲来絵詞 (前巻部分)

国宝 蒙古襲来絵詞 (前巻部分) 鎌倉時代 (13世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示(前巻:2022/8/6(土)~9/4(日) / 後巻:2022/9/6(火)~9/25(日) )

宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する皇室の珠玉の名品に、東京藝術大学のコレクションを加えた82件のさまざまな作品が展示されます。

昨年三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された全5件が前期後期に分けて展示されますので、前後期ともに見逃せない内容です。

《唐獅子図屏風》
 桃山時代を代表する狩野永徳筆/前期展示①

《動植綵絵》
 伊藤若冲の代表作/後期展示①

《春日権現験記絵》
 高階隆兼筆のやまと絵の集大成として名高い絵巻/通期展示(巻四:前期展示②/巻五:後期展示②)

《蒙古襲来絵詞》
 元寇の様子を描いた絵巻/通期展示(前巻:前期展示②/後巻:後期展示②)

《屏風土代》
 平安時代三跡の一人・小野道風筆の書/後期展示②

書や和歌、人と物語、動物、風景などを4つのテーマに分け、日本美術が優雅にひも解かれています。

迫力満点!永徳の代表作

前期展示の目玉は何といっても…

桃山文化の代表作、狩野永徳の国宝《唐獅子図屏風》(右隻)です。

国宝 《唐獅子図屏風 》

国宝《唐獅子図屏風》(右隻) 狩野永徳 桃山時代(16世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/6(土)~8/28(日)
国宝《唐獅子図屏風》(左隻) 狩野常信 江戸時代(17世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/6(土)~8/28(日)

まず、その大きさに圧倒されます。そしてさらに、2頭の唐獅子の眼力と威風堂々たる姿の迫力に息を呑みます。金地に黒々と渦巻くたてがみと体毛、太い脚に鋭い爪、全身に気迫がみなぎります。豪胆な筆遣いが、一層力強さを感じさせます。

現在は屏風ですが、元は城郭内の主人の座の背後を飾る大きな障壁画だったと考えられています。

屏風からはみ出しそうな唐獅子も切りとられたような木の根や岩の構図も、そう考えると納得できます。

狩野永徳は、1543年に狩野派三代目棟梁・狩野松栄の長男として生まれ、幼少時から画才を発揮しました。『洛中洛外図屏風』『聚光院障壁画』などが現存します。織田信長や豊臣秀吉に仕え、狩野派の棟梁として安土城、聚楽第、大坂城などの障壁画を制作。

唐獅子の雄姿を堪能した後は、そっと目を閉じて、かつてこの絵の前に座っていた主を想像してみるのも一興です。

国宝 《唐獅子図屏風 (右隻)》狩野永徳

国宝《唐獅子図屏風》(右隻) 狩野永徳 桃山時代(16世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/6(土)~8/28(日)

さて、私は今回初めて左隻を観ました。

左隻は屏風に改装された永徳の作品に添わせるため、江戸時代に永徳のひ孫、常信によって制作されたもの。並べてみるとその差は歴然。跳ねる姿勢も表情も軽やかで、作風の違いを比較するのも大変興味深く拝見しました。

《唐獅子図屏風 (左隻)》狩野常信

国宝《唐獅子図屏風 》(左隻) 狩野常信 江戸時代(17世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/6(土)~8/28(日)

抱一の優しいまなざし

次に目を奪われたのは、酒井抱一の《花鳥十二ヶ月図》。

《花鳥十二ヶ月図》酒井抱一

《花鳥十二ヶ月図》 酒井抱一 江戸時代・文政6年(1823) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/6(土)~8/28(日)

繊細に描かれた季節の花々と鳥たち、虫たちの取り合わせが愛らしい作品です。鳥や虫の目がみなかわいらしく、抱一の優しいまなざしを感じます。斜めに伸びた枝葉に区切られた余白の美も絶妙に感じました。

《花鳥十二ヶ月図》酒井抱一

《花鳥十二ヶ月図》 酒井抱一 江戸時代・文政6年(1823) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/6(土)~8/28(日)

ぜひ一点一点、じっくりと細かいところまで鑑賞いただきたい作品群です。

動物たちの姿がたまらない!

展示風景

大の犬好きとしては、山口素絢《朝顔狗子図》を外すわけにはいきません。

この時代の犬の愛らしさは本当にたまりません。つぶらな瞳、丸々とした足と身体、白い犬と黒い犬の毛の描き分け方、そしてひげもかわいい!3匹を一度に抱き上げて顔をうずめたい…!

《朝顔狗子図》 山口素絢

《朝顔狗子図》 山口素絢 江戸時代・寛政4年(1792) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/6(土)~8/28(日)

そして今回は隣の猫も。なんて美猫ちゃん!長沢蘆雪(ながさわろせつ)の《綿花猫図》です。

《綿花猫図》 長沢蘆雪

《綿花猫図》 長沢蘆雪 江戸時代(18世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/6(土)~8/28(日)

毛並みが素晴らしく、ちょっとすまし顔もいいですね。蘆雪の犬が大好きですが、この猫にもぐっと惹かれました!

そしてこちらは葛飾北斎《西瓜図》。北斎80歳、晩年の作品です。

《西瓜図》 葛飾北斎

左:《西瓜図》 葛飾北斎 江戸時代・天保10年(1839) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/6(土)~8/28(日)
右:重要文化財《鮭》 高橋由一 明治10年(1877) 頃 東京藝術大学蔵 通期展示

西瓜に濡らした和紙がかけられ、透けて見える果肉がなんともみずみずしい表現。上には包丁が置かれています。上の縄には、薄くむいた西瓜の皮がかけられて。ゆるゆるとした線美に透明感と涼感が漂います。さすが北斎、と納得の一枚。

これは乞巧奠(きこうでん・七夕)の見立絵であるという解釈もあるそうです。

《東都時名画帖》 増山雪斎ほか

《東都時名画帖》 増山雪斎ほか 江戸時代・文化14年(1817) 頃 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示(場面替えあり) 鑑賞中

後期のお楽しみは、伊藤若冲

そのほか工芸品にも、かわいらしい動物の作品がたくさん!

展示を見つめる

兎に鶏、牛に鹿。お子さんも一緒に楽しめそうです。

《菊蒔絵螺鈿棚》《七宝寰宇無双額》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵、通期展示)など、美しく贅を尽くした作品もありました。

《菊蒔絵螺鈿棚》

《菊蒔絵螺鈿棚》 (図案) 六角紫水・(蒔絵) 川之邊一朝ほか・(金具) 海野勝珉 明治36年 (1903) 展示期間:通期展示

さて後期展示の楽しみは、やはり伊藤若冲の国宝《動植綵絵》でしょうか。なんと10幅が一堂に公開されます!

《動植綵絵》伊藤若冲筆

国宝《動植綵絵》 伊藤若冲筆/江戸時代・宝暦7年(1757) 頃~明和3年(1766) 頃 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:2022/8/30(火) ~ 9/25(日)

芍薬群蝶図
梅花小禽図
向日葵雄鶏図
紫陽花双鶏図
老松白鶏図
芦鵞図
蓮池遊魚図
桃花小禽図
池辺群虫図
芦雁図

スケジュールを確認して、なるべく早く出かけたいと思います。みなさんも、好きな作品の展示時期を確認してお出かけくださいね。

展示を眺める

この日の装い

この日の装い

本展覧会後期の目玉、伊藤若冲に敬意を払い、伊藤若冲の象の意匠のきものと帯で臨みました。

きものは根善織物、帯は同柄のとなみ織物の帯です。

この日の装い 帯回り

帯締めはこの帯に合わせて道明組紐教室で組んだ御岳組のもの、草履は夏らしくパナマ草履をあわせました。

この日の装い
この日の装い後ろ姿

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」

東京藝術大学大学美術館(台東区・上野公園)
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/

日 時: 2022年 8月 6日(土)~9月 25 日(日)
    午前10時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
     9月の金・土曜日は午後7時30分まで開館

休館日:月曜日(ただし、9月19日(月・祝)は開館)

※会期中、作品の展示替えおよび場面替えがあります。
前期展示:① 8月 6日(土)~ 8月 28 日(日)/ ② 8 月 6日(土)~ 9月4日(日)
後期展示:① 8月 30 日(火)~ 9月25日(日)/② 9 月 6日(火)~ 9月 25 日(日)

※本展は日時指定予約の必要はありませんが、今後の状況により入場制限等を実施する可能性があります。
※詳細は展覧会公式HPやTwitterをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

【特別展】水のかたち ―《源平合戦図》から千住博の「滝」まで―
特集展示:日本画に描かれた源平の世界

山種美術館
https://www.yamatane-museum.jp/exh/2022/water.html

日 時:2022年7月9日(土)~9月25日(日)
    午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)

休館日:月曜日(9月19日(月)は開館、9月20日(火)は休館)

※会期中、一部展示替えあり。
前期:7月9日(土)~8月14日(日)
後期:8月16日(火)~9月25日(日)

※きもの特典:きものでご来館された方は、一般200円引きの料金となります。

キース・ヴァン・ドンゲン展―フォーヴィスムからレザネフォル

パナソニック汐留美術館
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/22/220709/index.html

日 時:2022年7月9日(土)〜9月25日(日)
    午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
    ※9月2日(金)は夜間開館 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)

休館日:水曜日

特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」ポスター

◆ 読者プレゼント ◆

今回は『特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」』の招待券を5組10名の方に。ぜひ、きものでお出かけくださいね!

お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

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※応募期間:2022年8月28日(日)まで

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