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『芭蕉布―人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事―』&『「美」の追求と継承-丸紅コレクションのきもの-』 「きものでミュージアム」vol.11

『芭蕉布―人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事―』&『「美」の追求と継承-丸紅コレクションのきもの-』 「きものでミュージアム」vol.11

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今回は、”ミュージアムで観るきもの”。着物ファン憧れの「喜如嘉の芭蕉布」、そして絢爛の美世界「丸紅コレクションのきもの」に行ってまいりました。いずれも着物ファン必見、恒例の招待券プレゼントもお見逃しなく!

きものをミュージアムで

美術館外観

今回は、大倉集古館で開催中の『芭蕉布―人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事―』と、丸紅ギャラリーで開催中の『「美」の追求と継承-丸紅コレクションのきもの-』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

1.『芭蕉布―人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事―』大倉集古館へ

きものと読者のみなさんは、平良敏子さんのお名前と『喜如嘉の芭蕉布(きじょかのばしょうふ)』、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。なかには芭蕉布のきものや帯をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。

平良敏子氏
平良敏子氏 © Naruyasu Nabeshima ©Kateigaho

芭蕉布は、沖縄県北部の大宜味村(おおぎみそん)喜如嘉で作られる、糸芭蕉からとれる天然繊維を原料とした織物のこと。『喜如嘉の芭蕉布』は、1974年に国の重要無形文化財に指定されました。

第二次世界大戦後に消滅しかけた伝統技法を復興させ、現代へ繋いだ女性こそが平良敏子さんです。その功績により、2000年に『芭蕉布』の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定、2021年2月で百寿を迎えられています。

本展では、喜如嘉に工房を設け、芭蕉布とともに生きる平良敏子さんの情熱と手仕事が紹介されています。

糸芭蕉畑
糸芭蕉畑 ©Atsushi Higa_Photo Studio Tsuha

民藝運動の主唱者・柳宗悦に「今時こんな美しい布はめったにないのです。」と言わしめた手織物の数々。本展ではなんと、約70点もの作品が公開されています。

芭蕉の糸が織りなす透けるような風合い。
古くから伝わる琉球藍や車輪梅の力強い色彩。
バラエティに富んだ絣柄の世界をはじめとする芭蕉布の手わざ。

これらの魅力を、ぜひきものファンならではのさまざまな角度からお楽しみください。

鮮やかな色彩に驚く

芭蕉布といえば生成、茶色、藍色の3色が頭に浮かびます。ところが展示室に入ると赤や黄色、緑、鮮やかな色彩とさまざまな絣模様の『煮綛 芭蕉布 裂地』に迎えられます。

「煮綛(ニーガシー)」とは、糸を染めやすく、柔らかくするために木灰汁で煮て精錬すること。この工程を経た芭蕉布を『煮綛(ニーガシー)芭蕉布』と呼びます。

平良敏子さんによって古典柄を応用したさまざまな絣柄が考案され、また、喜如嘉では煮綛芭蕉布づくりに挑戦し、煮綛芭蕉布ならではの鮮やかで豊かな色彩を実現させました。

煮綛 芭蕉布 裂地

糸芭蕉の栽培から

芭蕉の糸と道具類
繊維・糸:(右から)キヤギ、ナハグー、ナハウー、ウバサガラ(原皮)
(平置き)チング、芭蕉糸(ウンゾーキ内)
道具類:苧(ウー)チンギバタ/整経台(ハシ)、シーグ、エービ、ウンゾーキ、枠、管巻き串、経管(ハシクダ)/緯管(ヌキクダ)、ピジキ、サバキ、伸子(シシ)、茶碗

館内で配布される「喜如嘉の芭蕉布が生まれるまで」と題されたフライヤーには、イラスト入りで、糸芭蕉の栽培から芭蕉布ができるまでの手順が解説されています。とても分かりやすいので、ぜひお手に取ってご覧ください。

絣柄の裂地の展示
絣柄の裂地の展示を観る

こちらには24種類もの絣模様の裂地が並びます。

緻密に計算された模様と絶妙な色使いがすばらしく、素朴ななかにも光を放つ絣の表現に目を見張ります。

さまざまな芭蕉布

芭蕉布の着物と琉装着物
(右)芭蕉布 着物 「ジンコービーマー」 車輪梅、琉球藍/平成/喜如嘉の芭蕉布保存会、
(中央)芭蕉布 琉装着物 「藍 クヮーサー アキファテ柄 」琉球藍/平成27年(2015)/喜如嘉の芭蕉布保存会
(左)芭蕉布 着物 「波型(ナミガター)」車輪梅、琉球藍/不明/芭蕉布織物工房

会場にはバラエティ豊かな絣柄の作品が並びます。絣模様を眺めて、糸をどのように染め、織ったらこの柄が出せるのか考えるのも楽しいかもしれません。

また、絣柄だけでなく、芭蕉糸で織った花織の布や紅型染めを施した芭蕉布の着物もありました。

芭蕉布 琉装着物
(右から2つ目)芭蕉布 琉装着物 型付(カタチキ) 舞菖蒲 藍棒(紅型部分)紅型 城間びんがた工房作 令和2年(2020)大宜味村 前期展示6/7~7/3

一番気になった着物と帯

会場内の芭蕉布は軽やかに透き通り、独特の艶がありました。時にセミの羽に例えられるのも納得です。思わず手を触れたくなってしまいますね。

それにしても糸芭蕉を育てて糸を作り、染め、織り、仕上げの洗濯まで、なんと手のかかることでしょう。高価なのは仕方ないのですね。

平良敏子さんは戦後滅びかけていた糸芭蕉の畑を自ら再生し、王朝時代の煮綛を復活させ、得意な数学で精緻な絣の柄を実現してきました。そこにはどれだけの努力と苦労があったことでしょう。そんなことにも思いをはせながら、素晴らしい作品の数々を鑑賞しました。

最後に私が一番気になったものをご紹介します。

芭蕉布 着物「ムチリーくずし」
芭蕉布 着物「ムチリーくずし」車輪梅、琉球藍/昭和/芭蕉布織物工房所蔵
芭蕉布 帯地 「藍コーザー アササ」
芭蕉布 帯地 「藍コーザー アササ」 芭蕉布織物工房所蔵

いつかはお気に入りの芭蕉布を身にまとってみたいものです。みなさんも、ぜひ会場に足を運んでお気に入りをみつけてくださいね。

2.丸紅ギャラリー開館記念展Ⅱ
『「美」の追求と継承-丸紅コレクションのきもの-』丸紅ギャラリーへ

オープンしたばかりの丸紅ギャラリー

丸紅ギャラリーは、 昨年11月「古今東西の美が共鳴する空間」をコンセプトとして、丸紅本社の3階にオープンしました。
まずビルに入るとエントランスホールは贅沢にスペースが確保され、美しいです。さすが日本有数の総合商社の本社ビルです。

丸紅ギャラリーのポスター

丸紅の美術品コレクションは、「染織品(きもの、帯、袱紗など)」「染織図案」そして「和洋絵画」の3本柱から構成されます。本展では、丸紅コレクションの3本柱のひとつである染織品コレクションの一部が展示されます。

丸紅の歴史と美術コレクションの年表
丸紅の歴史と美術コレクションが一目でわかる年表の前で

2020年東京国立博物館で開催された特別展「きもの」において、丸紅所蔵のものが11点出展されており、丸紅のコレクションの素晴らしさを知りました。その時に出展されていたものも一部展示されるとのことで、楽しみに伺いました。

明るく見やすい展示室

展示位置が低く見やすい展示ケース
展示位置が低く見やすい展示ケース
白綸子地扇菊模様小袖 鹿の子絞り、刺繍 江戸時代 17世紀後半

展示室に入るととても明るくて、展示ケースの設置位置が低いせいか、とても近い距離でじっくりと鑑賞することができます。

納戸紋縮緬地淀の曳舟模様 小袖
納戸紋縮緬地淀の曳舟模様 小袖 江戸時代18世紀後半

裾から褄、衿にかけてモチーフを配した江戸褄模様の小袖。描かれているのは淀川の三十石船で、舟子や船頭、乗客たちも描かれています。下絵は江戸時代中期の浮世絵師・勝川春章によるものと伝えられています。

お写真からお分かりいただけますでしょうか。一見地味な柄付けですが、蝶と花の地紋が大変美しいのです。

そしてこの小袖は、丸紅ギャラリーのロゴデザインのモチーフにもなっているそうです!

納戸紋縮緬地淀の曳舟模様小袖①
納戸紋縮緬地淀の曳舟模様小袖②

八掛は見えませんでしたが、裏勝り(うらまさり)が流行っていた時代ですので気になり問い合わせましたところ、快くお写真をご提供くださいました!

無地ではありますが、味わいある良いお色ですね。

茶紋綸子地木賊花兎模様小袖(部分)
茶紋綸子地木賊花兎模様小袖(部分) 友禅染 刺繍 江戸時代 19世紀前半

こちらは木賊(とくさ)に作土(釣り鐘型のモチーフ)、その中にそれぞれ違う模様が描かれています。
統一感のあるなかにもアクセントとなる多彩使いがなんとも美しく、地色と地紋もそれらを引き立てていますね

藤鼠縮緬地流水草木風景模様振袖
藤鼠縮緬地流水草木風景模様振袖三代中川華邨 友禅染 刺繍 1937年

こちらもまた見ごたえのある作品。

右肩の滝と松は遠景に、そこから左裾に目を移すとぐぐっと近景にズームアップして太い幹の松文に流水模様が臨場感豊かに描かれています。

またその合間には藤・桜・菊・紅葉などが豪華に、これでもかと情景を埋め尽くして。

展示風景
展示風景(右)黒縮緬地近江八景模様振袖 上野為二 友禅染、刺繍 1933年(昭和8)

そのほか木村雨山、上野為二など、昭和期の人間国宝の作品も展示されてとても華やかです。

そしてなんと…丸紅ギャラリーは「着物・浴衣など、和装でのご来館の方は入館料無料」とのこと!!「きものでミュージアム」にぴったりですね。ぜひきもので前期も後期も訪れたいです。

※画像はすべて前期展示のものです。

この日の装い

この日の装い1
この日の装い 帯回り
この日の装い 帯回り

芭蕉布と”自然布繋がり”で科布(しなふ)の帯に、奄美織物・枡屋儀兵衛の大島紬を合わせました。帯締めは道明組紐教室で組んだ自作の笹浪組。根付は八重山ミンサーの糸巻きです。

大島紬枡屋儀兵衛八代目

ポーカーフェイスの奥にひそむ、いたずらっ子な瞳。家業である大島紬メーカーを継がれた立場から、伝統的工芸品である大島紬のこと、セカンドライン「Kimono Factory nono」のこと、また現在の着物の姿と未来の形について伺いました。

松岡福羅さんと
コラム内の写真は、美術館側からご提供いただくものと、内覧会にて自分で撮影しているものがあります。今回私が映っている写真は、松岡福羅さんに撮ってもらいました。お付き合いありがとうございました!

今回ご紹介の展覧会情報

芭蕉布展ポスター

〈特別展〉「芭蕉布―人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事―」

大倉集古館
https://www.shukokan.org

日 時:2022年6月7日(火)~7月31日(日)日)
    10:00~17:00
    (入館は16:30まで)

休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日)

※事前予約は不要です。

※会期中お着物でご来館の方は200円引き(割引併用不可)

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

 
丸紅ギャラリー ポスター画像

丸紅ギャラリー開館記念展Ⅱ
『「美」の追求と継承-丸紅コレクションのきもの-』

丸紅ギャラリー
https://www.marubeni.com/gallery/

日 時:2022年6月7日(火)~8月1日(月)
    10:00~17:00
    (入館は16:30まで)

 前期:2022年6月7日(火)~7月2日(土)
 後期:2022年7月4日(月)~8月1日(月)

休館日:日曜日、祝日、年末年始、展示替期間

※事前予約は不要です。

※着物・浴衣など、和装でのご来館の方は無料

※支払時に現金はご利用いただけません。交通系ICカード等電子マネーまたはクレジットカードのみご利用いただけます。

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

リヒター ポスター画像

ゲルハルト・リヒター展

東京国立近代美術館
https://richter.exhibit.jp/

日 時:2022年6月7日(火)~10月2日(日)
    (金・土曜は10:00~20:00)
    (入館は閉館30分前まで)
    
休館日:月曜日[ただし7月18日、9月19日は開館]、7月19日(火)、9月20日(火)

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

スイスプチバレポスター画像

スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ

SOMPO美術館
https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2021/petit-palais/

日 時:2022年7月13日(水)~10月10日(月)
    10:00~18:00
    (入館は閉館30分前まで)

休館日:毎週月曜日( ただし7/18、9/19、10/10は開館)

※日時指定予約は不要となりました。展示室内が混雑し、一定の人数を超えた場合は入場制限を行う可能性があります。

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

スイスプチバレポスター画像

◆ 読者プレゼント ◆

さて、ここでうれしいお知らせです。
今回は『スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ』の招待券を5組10名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆Facebook
https://www.facebook.com/kimonoichiba/
◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja
◆Twitter
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2022年6月27日(月)まで

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