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『ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』 国立西洋美術館 「きものでミュージアム」vol.16

『ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』 国立西洋美術館 「きものでミュージアム」vol.16

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世界的な画商、ハインツ・ベルクグリューンが厳選したコレクションからピカソ、セザンヌ、クレー、マティス、ジャコメッティなど97点が。うちピカソ作品は、なんと35点が日本初公開です!!

2022.11.02

よみもの

東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』「きものでミュージアム」vol.15

世界的な画商・ベルクグリューンが選んだ個性豊かなコレクション

今回は、国立西洋美術館で開催中の『ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』 をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。
※ピカソ作品は著作権存続のため、展示風景の掲載となります。

ベルクグリューン美術館

ベルクグリューン美術館 Courtesy of Museum Berggruen

ベルクグリューン美術館の改修を機に実現した今回の展覧会。

ベルクグリューン美術館の設立後、館外でまとめてコレクションを紹介するのは今回が初めてです。

ハインツ・ベルクグリューン

ハインツ・ベルクグリューン ⒸHeinz Berggruen Collection, Photo: Mary Ellen von Schacky-Schultz.

世界的な画商 ハインツ・ベルクグリューン(1914-2007年)の、類まれなる審美眼にて選ばれたコレクション。

パブロ・ピカソ、パウル・クレー、アンリ・マティス、アルベルト・ジャコメッティ、そして彼らが師と仰いだポール・セザンヌ。

個性的なコレクションから97点の作品がやってきました。加えて日本の国立美術館の所蔵・寄託作品11点を加えた合計108点で構成されています。

うち76点が日本初公開、ピカソ作品はなんと35点が初公開です!

ピカソが描いたさまざまなドラ・マール

展示室エントランス

展示室エントランス

20世紀の巨匠、パブロ・ピカソ。

さまざまな女性と交際し、彼女たちをモデルに多くの作品を制作しました。なかでもフランスの写真家で画家のドラ・マールをモデルにした作品を多く残しています。

かの有名な《ゲルニカ》に描かれた女性も、数々の《泣く女》と題された作品群もドラ・マールがモデルと言われています。

《緑色のマニキュアをつけたドラ・マール》
《黄色のセーター》
《花の冠をつけたドラ・マール》

今回出展のピカソ作品のうち、ドラ・マールがモデルとなったのはこちらの3点です。

《緑色のマニキュアをつけたドラ・マール》

黒い服に白い肌。緑のマニキュアに、紫がかったアイシャドウと口紅。この2色が使われているのはほんのわずかですが、非常に効果的で美しく、白い肌を引き立てています。

物憂げな表情で何を考えているのでしょうか。

展示風景

左から2つ目が《緑色のマニキュアをつけたドラ・マール》。一番左は後述する《花の冠をつけたドラ・マール》

《黄色のセーター》

エントランス前にも用いられた黄色のセーター

エントランス前のメインビジュアルにも用いられた《黄色のセーター》は、その名の通り、非常に細かな網目を描き込んだセーターが目を惹きます。

セーターの黄色と、紫のスカート、青い衿と帽子が実に鮮やか。なめらかな石膏の彫像のような右手と、ごつごつしたしわの多い左手の違いも気になります。

展示風景右から2つ目が《黄色のセーター》

展示風景右から2つ目が《黄色のセーター》

正面を向く目と横を向く目、愁いを帯びた表情。

第2次世界大戦開戦直後の1939年に制作されたこの絵には、戦争の影と不安が色濃くあらわれています。

美術館エントランス

美術館エントランス前にて

《花の冠をつけたドラ・マール》

そしてぜひとも会場にてご覧いただきたい《花の冠をつけたドラ・マール》。紙に色チョーク・鉛筆で描かれた素描です。

前述の2点とは違って、写実的に描かれています。ある意味一般的なピカソのイメージとは異なりますし、また現実のドラ・マールが大変美しい女性だったことが分かります。

白い花冠を付けて毅然と前を見るまなざしは気高く美しく、描き込まれた頭部に比べ簡略化された着衣表現が、一層表情を引き立ててるように思います。服にはさまざまな色のチョークが使われ、白い輪郭線が印象的に浮かび上がります。

ピカソはなぜこの絵を写実的に描いたのでしょう。いろいろ想像してしまいました。

展示風景

それぞれ別の表情を見せるドラ・マール。同じモデルでもこれだけ別の表現をするピカソの力量に見惚れます。

この3点以外にも今回は珠玉のピカソ作品が出展されていますので、ぜひ美術館にてじっくりとご鑑賞ください。

ピカソ作品鑑賞の手助けにーakemi流鑑賞法

展示風景

ピカソは、青の時代、ローズの時代に始まり、キュビズム、新古典主義、シュルレアリスムとさまざまな作品を制作しました。

ピカソの絵を観ると混乱することはありませんか?

ひとつの顔の中に正面を向く目と横を向く目があったり、身体がゆがんでいたり…

そんな時には、ちょっと顔の前に手をかざして絵の一部ずつを観る―それから全体を観てみてください。

例えば、まず作品の右目周辺を隠して左目あたりを観る。

次に、左目周辺を隠して右目あたりを観る。

それからあらためて全体を観ると、少し情報が整理されるような気がします。

展示風景

撮影:akemi

akemi流鑑賞法なのですが、混乱したら試してみてください。

パウル・クレーの色彩に癒される

パウル・クレー作品を鑑賞中

今回、パウル・クレーの作品は30点以上出展されています。これほどクレーの作品を一度に見るのはもちろん初めてです。

とても美しい色遣いのクレー作品。《夢の都市》は色のグラデーションが美しく、さまざまなフォルムの重なり合いが魅力的です。水彩画独特の透明感があります。

クレーは幼少期からヴァイオリンを嗜み、プロ並みの腕前だったそうです。どこか音楽的な感性を絵画作品からも感じますね。ヴァイオリンの音色が聞こえてきそうです。

展示風景、右はパウル・クレー 《夢の都市》

展示風景、右はパウル・クレー 《夢の都市》

クレーがバウハウス(総合アートスクール)に赴任するためヴァイマルに転居すると、自宅の裏手には見事な野菜農園がありました。そこから想を得て制作されたと言われているのが《緑の風景》。

昔よく読んでいた絵本から抜け出してきたような、どこかメルヘンチックで懐かしさのある風景が広がります。

パウル・クレー《緑の風景》を鑑賞中

パウル・クレー《緑の風景》は、右から2つ目

この作品も、フォルムの重なりと色の重なりがすばらしいです。油彩・水彩・ペン・インクとさまざまな画材を使用しているため、とても奥行きを感じます。

この独特な質感は、ぜひ美術館で直接目にして味わっていただきたいです。

セザンヌはじめ、マティスにジャコメッティも

マティスの作品の展示風景

マティス作品の展示風景

今回出展されているコレクションは、ベルクグリューンの審美眼にかなった素晴らしいものでした。

画商として成功しているだけに、作品の選び方が秀逸です。ピカソのこれだけ充実した作品を一度に観られる機会はめったにないのではと思います。

ジャコメッティ《広場Ⅱ》を鑑賞中

ジャコメッティ《広場Ⅱ》を鑑賞中

またベルクグリューンのコレクションのすばらしさは、こだわり抜かれた額装にも感じられます。

アンティークの額縁や、作品にあったものを厳選していたベルクグリューン。私は常々、額装や表装も作品の一部であると思っているので、非常に共感し、楽しむことができました。

今回、ピカソ作品は著作権存続のため、こちらには展示風景しか掲載できません。

しかし、展覧会場では個人利用に限り撮影が可能なのです(一部の作品を除く。SNS投稿は厳禁ですので要注意)!

ぜひお出かけしてお気に入りの作品を撮影し、自分のアルバムを作るのも楽しそうですね。

この日の装い1

この日の装い

7章の展示室

7章の展示室

ピカソ展のこの日は、抽象的な柄のきものと帯を選びました。小紋は小糸染芸、帯はじゅらくです。

この日の装い 帯回り

帯締めには、道明組紐教室で組んだ自作の唐組帯締めをあわせて。

この日の装い・お太鼓
この日の装い2

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展

国立西洋美術館
https://picasso-and-his-time.jp/

日 時:2022年10月8日(土)~2023年1月22日(日)午前9時30分~午後5時30分(金・土曜日は午後8時まで)(入室は閉室の30分前まで)

休室日: 月曜日、12月30日(金)~2023年1月1日(日)、1月10日(火)
※ただし、2023年1月2日(月・休)、1月9日(月・祝)は開館

※本展は日時指定予約制です。詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

■巡回予定

2023年2月4日(土)~5月21日(日)
大阪展 国立国際美術館
https://www.mbs.jp/picasso-and-his-time-osaka/

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

『つながる琳派スピリット神坂雪』ポスター

つながる琳派スピリット神坂雪佳

パナソニック汐留美術館
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/22/221029/

日 時:2022年10月29日(土)〜12月18日(日)
    10:00〜18:00 (12月2日(金)は20:00まで)
    ※最終入場は閉館時間の30分前

休館日:水曜日(ただし11月23日(祝)は開館

『展覧会岡本太郎』ポスター

展覧会 岡本太郎

東京都美術館
https://taro2022.jp/

日 時:2022年10月18日(火)~12月28日(水)
    9:30~17:30、金曜日は20:00まで
    ※入室は閉室の30分前まで

休室日:月曜日

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

◆ 読者プレゼント ◆

さて、ここでうれしいお知らせです。

今回は『ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』国立西洋美術館の招待券を、5組10名の方にプレゼント!ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆Facebook
https://www.facebook.com/kimonoichiba/
◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja
◆Twitter
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2022年11月30日(水)まで

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