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『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり展』 弥生美術館 「きものでミュージアム」vol.28

『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり展』 弥生美術館 「きものでミュージアム」vol.28

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『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり展』開催中の弥生美術館へ。銘仙蒐集家・研究家 桐生正子さんの約600点のコレクションから選び抜いた約60点の銘仙着物。着物スタイリストの大野らふさんのコーディネートが超かわいい!恒例の招待券プレゼントも!!

2023.10.28

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特別展『やまと絵 -受け継がれる王朝の美-』東京国立博物館 「きものでミュージアム」vol.27

大正から昭和初期に大流行した大胆で華やかな着物

展示風景

今回は、弥生美術館で開催中の『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり展』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

「銘仙」は、大正から昭和初期に女学生を中心に大流行した着物で、現代の着物にはない斬新な色柄や意表を突くデザイン、世相を反映したものなど多種多様なものがあります。アンティーク着物ブームの牽引ともなりました。

2021.06.28

まなぶ

銘仙(めいせん)とは?産地ごとの特徴や歴史、着用シーンについてご紹介!

本展では、銘仙蒐集家・研究家である桐生正子さんの約600点のコレクションから選び抜いた約60点の銘仙が紹介されています。

一部の銘仙は着物スタイリスト 大野らふさんのコーディネートで展示され、小物までかわいく、銘仙の魅力が最大限に引き出されています!

展示風景

西洋文化の流入、伝統的な価値観の変化、そして戦争の影……

そんな時代に生まれた若い女性たちのカルチャーが、銘仙を通して紹介されています。

銘仙と四大産地

銘仙アップ01

銘仙とは、大正から昭和にかけて人気を博した平織の絹織物のこと。

大正時代、女学生の通学着として使われ、少女たちのニーズを受けて独特のデザインが次々に生まれました。

銘仙アップ02

模様銘仙は、仮織りした上に型紙で文様を染めてから一度ほぐして織り直す技法で、これによって大胆な柄の表現ができるように。化学染料が輸入され、鮮やかな色の表現も可能になり人気に拍車がかかります。

昭和に入ると働く女性向けにクールなデザインも増え、幅広い年代に広まりました。

銘仙には四大産地があり(桐生を加えて五大産地とする場合もあり)、産地ごとに特徴があります。

伊勢崎銘仙

群馬県伊勢崎市近郊が産地。華やかで多色遣い、手の込んだ柄が特徴。模様銘仙の発祥の地で、銘仙最大の生産量。

足利銘仙

栃木県足利市近郊が産地。「足利銘仙会」が結成され品質を向上。昭和初期から急成長し、お召銘仙というヒット作の発明も。

秩父銘仙

埼玉県秩父市近郊が産地。最も歴史のある産地の一つ。植物柄が多く、少し厚手で玉虫色の光沢があり、渋めの色合い。

八王子銘仙

東京都八王子市近郊が産地。「カピタン織り」という細かい地紋のある織り方が特徴。

またそれぞれの産地が工夫し、解し絣(ほぐしがすり)、お召銘仙、半併用絣、併用絣、緯総絣(よこそうがすり)などさまざまな織り方が生まれました。

展示を観る

4つのカテゴリーで銘仙を紹介

本展では、4つのカテゴリーに分けて銘仙が紹介されています。

ネオクラシック

《竹に雪持ち蔦文様》(部分)

《竹に蔦文様》(部分)

市松模様や麻の葉など、日本の伝統文様に西洋の柄をミックスしたポップな柄。

ガーリッシュ

《紫陽花に蝶々文様単衣》

《紫陽花に蝶々文様単衣》

アール・ヌーボーの影響を受けた、女学生好みの大正ロマン柄。

ジオメトリック

左:《四角重ね幾何学文様》

左:《四角重ね幾何学文様》、ジオメトリックな銘仙の展示を観る

アール・デコや構成主義などの影響を感じる、若い職業婦人向けの幾何学柄。

キッチュ

《バレリーナ文様》

《バレリーナ文様》

技術の進歩で精緻な柄も織り出せるようになり、ニュースや出来事を織り込んだユニークな柄。

南の島や竜宮城などキッチュな柄の銘仙の展示

南の島や竜宮城など、キッチュな柄の銘仙の展示

桐生さんのコレクションの銘仙が紹介されていますが、一部は大野らふさんが小物までを魅力的にコーディネートして展示されています。

単独で衣桁に掛けた銘仙の着物を見るより数倍魅力的。女学生、カフェの女給さん、子ども用など、どれもこれも、とってもかわいいのです。

コーディネートされた展示風景

わきに置かれた帽子やパラソルもかわいい

「3日間死力を尽くしました。すごく頑張って時間がかかりましたが、コーディネートに満足です」

と大野さん。

小物は基本的に銘仙と同時代のものでコーディネートしているそうです。

コーデアップ01
コーデアップ02

半衿や帯留、帽子、パラソル、バッグなどの小物まで、そのかわいさと言ったら!もうキュンとしてハートをわしづかみにされました!!乙女心が刺激されます。

『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり展』

銘仙蒐集家・研究家の桐生正子さんへインタビュー

今回は、銘仙蒐集家・研究家の桐生正子さんに直接お話を伺いました。

桐生正子さん

桐生正子さん

——銘仙のコレクションを始めたきっかけを教えてください。

桐生さん:京都で一人暮らしをしていた学生時代、着付けを習い始めその練習着をさがしに骨董市に行ったとき、矢絣の銘仙に出会いました。漫画『はいからさんが通る』(大和和紀作)を読んで女学生のスタイルに憧れていたのでその銘仙を購入。学生にも買える値段も魅力的でした。栃木出身なので、足利で織られていたのを知って一層興味を持ち、コレクションするようになりました。

——どのように600枚ものコレクションを蒐集したのでしょうか。

桐生さん:最初は色柄がポップで華やかでかわいらしいものに目が行き、着てみたいものを蒐集していました。そのころは骨董市で購入していましたが、最近はアンティークショップやネットショップ、オークションも利用しています。毎年3月第1土曜日に開催される「いせさき銘仙の日」の銘仙市でも。私が集めたものはほとんど伊勢崎銘仙なのです。

20年ほどかけて集めているのですが、銘仙の大胆で自由なデザインのとりこになり、気付けばいつの間にかたくさん蒐集していました。本を出版するにあたってあらためて数えてみたら600枚もありました。

※大野らふ+桐生正子(著)『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり 桐生正子着物コレクション』(河出書房新社)2021年

桐生正子さん、大野らふさんと

桐生正子さん(左)大野らふさん(右)と。お二人の共著『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり 桐生正子着物コレクション』を持って

——コレクションの保管やお手入れはどうされていますか。

全部を虫干しするのは難しいので、自分で着たいものをシーズンに合わせて入れ替えます。簡易な重ねるタイプの桐ダンスも使用していますが、枚数が枚数なので、普通のクローゼットや棚に積んで収納しています。量は6畳間一部屋に収まるくらいです。

桐生さんの解説で展示を観る

桐生さんの解説で展示を観る

——実際に着用する頻度はどのくらいでしょう。また、どのようなときにお召しになられますか。

若い頃は京都に住んでいましたので、季節のイベントなどで着る機会もありましたが、地元(栃木県)に帰ってきてからは着る機会も減ってしまいました。それでも着物を着ると非日常を味わえるので、最近では月に1〜2度、季節の花を見に行くのに銘仙をコーディネートして出かけたり、美術館や食事、カフェでお茶するときに着たりしています。

——銘仙はサイズが小さいものが多いですが、どうされていらっしゃいますか。

着用を前提に、なるべく大きいものを探して選ぶようにしています。サイズが小さくてもどうしても気に入ったものは対丈で着ます。着用できないものでも、柄が気に入ってコレクションとして購入することもあります。

コーディネートされた展示風景

——コーディネートの秘訣を教えてください。

コーディネートは季節に合わせたり、意味を持たせたりするのが楽しいですね。モチーフで繋ぐことも多いです。基本的に銘仙は「織り」の着物なので「染め」の帯を合わせたいと思っていますが、今日(取材日2023年9月29日)は中秋の名月なので、どうしてもうさぎ柄を締めたくて「織り」の帯にしました。時には水玉を月に見立てたりもします。

左:《エリザベス女王戴冠式文様》

左:《エリザベス女王戴冠式文様》

——展示品でお気に入りの銘仙は?

《よろけ縞に薔薇薬玉と蝶々文様》と《エリザベス女王戴冠式文様》《春花文様単衣》がお気に入りです。《春花文様単衣》は大変手が込んでいます。銘仙は織る前に型染めするので色の数だけ型が必要です。ところどころに金糸銀糸が入っているのでそのあたりも見ていただきたいです。

《よろけ縞に薔薇薬玉と蝶々文様》

《よろけ縞に薔薇薬玉と蝶々文様》

《春花文様単衣》

《春花文様単衣》

——本展のみどころを教えてください。

銘仙は産地で競い合い技術を高め、流行もありました。またデザインの豊富さだけでなく、時代の波に翻弄された歴史にもスポットを当てています

戦後はペンギン柄やスピッツ柄など、見ていて楽しい柄もたくさん。洋装化が進んで着物の需要が減る時代に、どうしたら売れるかという産地の方の発想で生まれたものです。

時代の流れによる変化もみどころです。

右:《子猫とスピッツ文様》などキッチュな銘仙が並ぶ

右:《子猫とスピッツ文様》などキッチュな銘仙が並ぶ

——「きものと」読者のみなさまにひとことお願いします。

銘仙はアンティークの中でも安く、普段使いしやすい価格で購入できるので、ぜひチャレンジしてみてくださいね!

桐生さんと大野さん

大野さん(左)と桐生さん(右)の帯姿

お二人が並ぶと、一層カラフルで目にも楽しく感じられます。この日桐生さんは、お花にも花火にも見える幾何学模様の銘仙にうさぎと月の帯を合わせ、小物にもこだわられていらっしゃいました。

最後に

全身

1925年(大正14年)、銀座を歩く女性の99%が着物を着用し、そのうち51%が銘仙の着物や羽織を身につけていたという調査報告があります。その3年後に日本橋で行われた調査では84%が銘仙を着用していたとのこと。洋装の『モガ』も登場していた時代ですが、むしろ銘仙を着る女性の比率が上がっていました。

(展示より抜粋)

展示風景

当時、百貨店や女性誌の販売戦略もあって銘仙は大流行。

約100年前の日本で、鮮やかでかわいらしい銘仙を着たたくさんの女性が銀座や日本橋の街を歩く様子を想像してみてください。きものファンとしてはとてもワクワクしますね!

桐生さんと大野さん、そして弥生美術館の熱い想いの詰まった展示をぜひご覧ください。

ショップには古布などが並ぶ

ショップには古布などが並ぶ

この日の装い

この日の装い1

展示にあわせて、もちろん銘仙で。

矢絣の銘仙に昭和後期の牡丹唐草の帯を合わせました。レースの半衿やアンティーク風帯留で、少しレトロな装いです。

この日の装い 帯回り
この日の装い お太鼓

撮影/五十川満

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今回ご紹介の展覧会情報

『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり』展

会 場:弥生美術館(東京都文京区弥生2-4-3)
https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/
日 時:2023年9月30日(土)〜12月24日(日)
    午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)

休館日:月曜日

※一部展示替えがあります。
※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

モネ 連作の情景

上野の森美術館
www.monet2023.jp

日 時:~2024年1月28日(日)
    9:00~17:00(金・土・祝日は~19:00)※入館は閉館の30分前まで ※日時指定予約制

休館日:2023年12月31日(日)、2024年1月1日(月・祝)

※本展は、日時指定予約制を導入しています。会場内混雑が予想されるため、館内で販売する当日券も、ご購入順に入場時間が設定されます。混雑時はご購入からご入場までに時間がかかる場合があります。

■巡回予定
2024年2月10日(土)~5月6日(月・休)
大阪中之島美術館

開館記念展 皇室のみやび―受け継ぐ美―
 
皇居三の丸尚蔵館
https://shozokan.nich.go.jp/exhibitions/miyabi.html

日 時:2023年11月3日(金・祝)~2024年6月23日(日)  
    第1期:「三の丸尚蔵館の国宝」
    2023年11月3日(金・祝)~12月24日(日)  
    午前9時30分~午後5時 (入館は午後4時30分まで)
 
休館日:月曜日  
(ただし月曜が祝日または休日の場合は開館し、翌平日休館)  

※12月25日(月)~1月3日(水)および展示替え期間・その他事情により、臨時に休館する場合があります。

◆読者プレゼント◆

さて、恒例の招待券プレゼント!
今回は『大正の夢 秘密の銘仙ものがたり』展の招待券を5組10名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja
◆Twitter
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2023年11月26日(日)まで

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