着物・和・京都に関する情報ならきものと

『ガウディとサグラダ・ファミリア展』 東京国立近代美術館「きものでミュージアム」vol.23

『ガウディとサグラダ・ファミリア展』 東京国立近代美術館「きものでミュージアム」vol.23

記事を共有する

スペインの建築家アントニ・ガウディと代表作サグラダ・ファミリア聖堂を読み解く展覧会。長らく”未完の聖堂”と言われながら、いよいよ完成の時期が視野に収まってきました。高精細映像やドローン映像を駆使しての空中散歩も感動的。スペインに飛んで行きたくなること必至!お見逃しなく!!

2023.05.19

よみもの

『マティス展 』東京都美術館 「きものでミュージアム」vol.22

いよいよ完成が視野に!

入口メインビジュアル

今回は、 東京国立近代美術館で開催中の『ガウディとサグラダ・ファミリア展』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館より撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

《ガウディ肖像写真》

《ガウディ肖像写真》 1878年、レウス市博物館

建築家アントニ・ガウディ(1852-1926)は、スペイン、カタルーニャ地方に生まれ、バルセロナを中心に活動しました。

市内には世界遺産にも登録された建築群、カサ・ビセンス、グエル公園、カサ・バトリョ、カサ・ミラ、サグラダ・ファミリアなど7点が点在します。

”未完の聖堂”と長らく言われてきたガウディのサグラダ・ファミリア。

新型コロナウィルスの影響で一時建築が中断していましたが、2020年秋に再開、2021年12月に頂点に星をいただくマリアの塔が完成。塔頂の星に光が灯り、人々に希望を与えました。

サグラダ・ファミリア聖堂、2022年12月撮影

サグラダ・ファミリア聖堂、2022年12月撮影 ©Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

聖堂中央の最も高い塔となるイエスの塔は2026年までに完成を予定。いよいよ完成の時期が近づいてきました!

本展では、サグラダ・ファミリアに焦点を当て、ガウディの総合芸術とも言える建築を読み解きその魅力に迫ります。

若きガウディの足跡

第1章の展示を観る

第1章の展示を観る

ガウディの若き頃、19世紀後半は万国博覧会の時代で、会場には世界各地から代表する建築が集まりました。

ガウディも出展に関わり影響を受けたとか。

展示室に入るとまず、ガウディが若き頃に参考にした当時の図版集や写真集、学生時代に制作した図面、スケッチやノートが並びます。

アントニ・ガウディ《Antoni Gaudí桟橋》

左から:アントニ・ガウディ《桟橋、立面図》/複製/オリジナル:1876年、アントニ・ガウディ《桟橋、詳細図》/複製/オリジナル:1876年 いずれもサグラダ・ファミリア聖堂蔵

非常に精緻で繊細な図面は美しく、その後の数々の名建築の源泉を感じます。

アントニ・ガウディ 《大学講堂、横断面》

アントニ・ガウディ 《大学講堂、横断面 (卒業設計〈建築家資格認定試験〉) 》/ファクシミリ/オリジナル:1877年 ガウディ記念講座蔵、ETSAB

サグラダ・ファミリアまでの道のり

《換気塔(門番小屋上部) 模型 》と《コローニア・グエル教会堂、地下聖堂模型》

左:《フィンカ・グエル、換気塔(門番小屋上部) 模型 》スケール:1:5/1984-85年 西武文理大学蔵、右:《フィンカ・グエル、馬場舎厩 模型》/スケール:1:25/1984-85年 西武文理大学蔵

ここでは、サグラダ・ファミリア以前の作品の展示で「歴史」「自然」「幾何学」の3つのポイントから、ガウディ独自の建築様式の源泉とその展開をたどります。

人間は創造しない。人間は発見し、その発見から出発する。

とガウディは語りました。過去の古今東西の建築や自然を研究し尽くしたからこそ、あれほど独創的で斬新な作品の数々が生まれたのです。

カサ・カルベ―ト、カサ・ミラの室内装飾のパーツ

カサ・カルベ―ト、カサ・ミラの室内装飾のパーツの展示を観る

ゴシック建築の限界を感じ、それを超えようと誕生したのがガウディの建築なのかもしれません。

非常に興味深かったのは、コローニア・グエル教会堂の設計のための逆さ吊り実験です。

《コローニア・グエル教会堂、地下聖堂模型》

《コローニア・グエル教会堂、地下聖堂模型》/スケール:1:25/1984-85年 西武文理大学蔵

紐におもりを取り付け、垂れ下がり具合で合理的な形状を探りました。垂れ下がった形状の曲線を上下反転させ設計に取り入れたのです。

コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験(部分)

《コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験》(部分)/1984-85年 西武文理大学蔵、下に鏡が置かれ反転した様子が写る

それはその後のニューヨーク大ホテル計画案へ、そしてサグラダ・ファミリアへと発展していきます。

《ニューヨーク大ホテル計画案模型 (ジュアン・マタマラのドローイングに基づく)》

《ニューヨーク大ホテル計画案模型 (ジュアン・マタマラのドローイングに基づく)》1985年 制作:群馬県左官組合  伊豆の長八美術館蔵

サグラダ・ファミリアの軌跡 ーガウディの時代ー

Taller de modelistes de la Sagrada Famíliaサグラダ・ファミリア聖堂全体模型/1:200/2012-23年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室、サグラダ・ファミリア聖堂蔵

《サグラダ・ファミリア聖堂全体模型》/スケール:1:200/2012-23年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 サグラダ・ファミリア聖堂蔵

1883年、ガウディはサグラダ・ファミリアの二代目建築家に就任しました。

ガウディはまず『降誕の正面』の建設に着手します。建築にあたり膨大な数の石膏模型を制作し、空間や細部を検討しました。大きいものは数メートルの高さで、『降誕の正面』地階や現場事務所兼アトリエの増築部を模型室にあてました。

また聖堂の計画案全貌を明らかにする『聖堂アルバム』は、1910年から出版作業に入り、1915年8月に初版を、以後12年間計画案が練られ、最終案としての身廊部模型が公表されました。

《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》

《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》 2001-02年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 西武文理大学蔵

《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》

《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》を横から見たところ

聖堂内を飾る人体彫刻は、モデルの型取りと写真を使用し、解剖学も研究し、細部にもこだわり忠実に表現。

ガウディは建築家であり、彫刻家でもあったのです。

アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂の模型》

サグラダ・ファミリア聖堂の模型の展示風景

《サグラダ・ファミリア聖堂、主身廊円柱の柱頭オリジナル模型》

アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、主身廊円柱の柱頭模型》/スケール:1:10/1918-22年ごろ サグラダ・ファミリア聖堂蔵
石膏像が部分により色が違うのは、スペイン内戦時に破壊され、その後復元したため。

ところが……

1926年、ガウディは路面電車にはねられ死亡します。葬儀では遺体を運ぶ馬車の後に1.5㎞もの行列が続き、それを待つ市民で街路は埋め尽くされました。

ガウディ作の塑像の断片を観る

ガウディ作の塑像の断片(左)を観る

サグラダ・ファミリアの軌跡 ーガウディ以後ー

第3章の展示を観る

第3章の展示を観る

ガウディの死後も『降誕の正面』の建設は続行します。

その後スペイン内戦が勃発し、聖堂もかなりの被害を受けました。模型は破壊され、図面類も焼失。また内戦終了後も資金難など大きな問題が立ちはだかりますが、1954年に『受難の正面』着工、1976年その4鐘塔が完成します。

外尾悦郎《歌う天使たち》

外尾悦郎《サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち》サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面に 1990~2000 年に設置 作家蔵

日本人の外尾悦郎氏は1978年から、最初は研究生として、そして修復家、彫刻家として認められてサグラダ・ファミリアに深くかかわることになりました。

今回、外尾氏が制作し1990〜2000年の間『降誕の正面』に設置されていた石膏像《歌う天使たち》が展示され、大きな話題を呼んでいます。

外尾氏は外国人でありながら、その熱意と努力が実を結び、現在ではサグラダ・ファミリアにとって欠くことのできない人物となっています。

石膏像は、実際に設置されていたものと思うと感慨深く……清らかで無垢な表情をぜひじっくりご覧ください。

想いはスペインに飛び

「諸君、明日はもっといい仕事をしよう」

ガウディは一日の終わりに毎日、職人たちにこう声をかけたそうです。なんと前向きなのでしょう!毎日そんな気持ちで過ごせるなんて理想的です。

ガウディの死後も数々の模型や資料をもとに想いは受け継がれ、建設は続いています。

サグラダ・ファミリア聖堂、2023年1月撮影

サグラダ・ファミリア聖堂、2023年1月撮影 ©Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

そして、会場ではNHKが撮影した高精細映像やドローンを駆使した迫力の映像も観ることができます。これが大変すばらしく、間違いなくスペインに行きたくなります!

今までは私たちがサグラダ・ファミリアを見るときには、常に高いクレーンも一緒に映し出されていました。そのクレーンがなくなり、完成した姿を見る日も近い……そう考えると胸が踊ります。

完成前に訪れましょうか?それとも完成まで待ちましょうか?

ワクワクとそんなことを考えながら美術館を後にしました。

この日の装い

この日の装い 全身
この日の装い お太鼓

大島紬の訪問着にて、前身頃の文様をサグラダ・ファミリアの塔に見立てて。

この日の装い お太鼓

帯は栗山工房の麻帯をコーディネート。

この日の装い 帯回り

二分紐と帯留は「きものと」の連載でもおなじみ、着物スタイリスト・秋月洋子さんのオリジナルブランド「れん」のものです。

秋月洋子さんコラムはこちら

まなぶ

徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー

この日の装い

大島紬は夏物ですが、濃い色の長襦袢で透け感を押さえて単衣の時期から着ています。

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

ポスタービジュアル

『ガウディとサグラダ・ファミリア展』ポスタービジュアル

ガウディとサグラダ・ファミリア展

会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
https://gaudi2023-24.jp/

日 時:2023年6月13日(火)~9月10日(日)
    10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで)
    ※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日(ただし7月17日は開館)、7月18日(火) 

▪️巡回予定

滋賀会場・佐川美術館
2023年9月30日(土)~12月3日(日)

愛知会場・名古屋市美術館
2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。
※平日や夕方の時間帯での鑑賞がおすすめです。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

『日本服飾の美』ポスタービジュアル

日本服飾の美

文化学園服飾博物館
https://museum.bunka.ac.jp/

日 時:2023年6月17日(土)~2023年8月6日(日)
    前期展示:6/17~7/8 後期展示:7/10~8/6
    10:00~16:30 7/7、7/21は19:00まで開館

休館日:日曜日・祝日、7/16、7/30、8/6は開館

特別展『古代メキシコ ─マヤ、アステカ、テオティワカン』

特別展『古代メキシコ ─マヤ、アステカ、テオティワカン』

東京国立博物館 平成館
https://mexico2023.exhibit.jp/
日 時:2023年6月16日(金)〜9月3日(日)
    9:30〜17:00
    ※土曜日は19:00まで 
    ※7月7日(金)~ 9日(日)はメキシコウィークのため20:00まで。

休館日:月曜日(7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開館)、7月18日(火)

■巡回予定

・九州会場・九州国立博物館
2023年10月3日(火)~12月10日(日)

・大阪会場・国立国際美術館
2024年2月6日(火)~5月6日(月・振替休日)

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

ポスタービジュアル

三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions

千葉市美術館
https://www.ccma-net.jp/
日 時:2023年6月10日(土) – 9月10日(日)
    10:00 – 18:00 (金・土曜日は、20:00まで)
    ※入場受付は閉館の30分前まで

休室日:7月3日(月)、10日(月)、18日(火)、8月7日(月)、21日(月)、9月4日(月)
※第1月曜日は全館休館

◆ 読者プレゼント ◆

ポスタービジュアル

『ガウディとサグラダ・ファミリア展』チラシビジュアル

さて、ここでうれしいお知らせです。
今回は『ガウディとサグラダ・ファミリア展』の招待券を3組6名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆Facebook
https://www.facebook.com/kimonoichiba/
◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja
◆Twitter
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2023年7月9日(日)まで

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する