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辻が花とは?幻と称される染め物の特徴をご紹介

辻が花とは?幻と称される染め物の特徴をご紹介

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みなさまは「辻が花」をご存知でしょうか。辻が花と聞くと花の種類をイメージされる方もいらっしゃるかと思いますが、実はそうではありません。”幻の染め”とも称される辻が花の染め物についてご紹介いたします。

幻と称される辻が花の染め物について

辻が花

みなさまは「辻が花」をご存知でしょうか。

辻が花と聞くと花の種類をイメージされる方もいらっしゃるかと思いますが、実はそうではありません。”幻の染め”とも称される辻が花の染め物についてご紹介いたします。

辻が花とは?

辻が花は、模様の輪郭を細かく縫うことで絵画的表現のできる縫い取り絞りや、帽子絞り、桶絞りなどの絞り染めと、カチン染め(墨描き)など伝統的な技法を用いる絞り染めのこと。摺り箔や刺繍などの技法を加えたものなどもあります。

美しく絵画的な模様で人気の高い辻が花が、なぜ”幻の染め”と呼ばれているのかについて歴史をふまえてご紹介します。

※摺り箔…布地に糊をおき、金銀箔を付着させる伝統的な技法のこと

なぜ辻が花が幻と称されるのか

なぜ辻が花が幻と称されるのか

辻が花は、絞り染めの技法の全盛期である室町時代に生まれたと言われています。

室町末期から桃山時代にかけて大流行しますが、その時代を過ぎると突如、世間から姿を消します。

これは「友禅染め」の出現などの時代背景によって次第に人々が着なくなってしまい、作り手が減少、技術を伝承する者がいなくなってしまったことが原因とも言われていますが、真偽は定かではなく、謎に包まれたまま。

こうして辻が花は「幻の染色」と言われるようになりました。

辻が花の語源について

辻が花の語源について

● 二つの道路が十字に交差している場所を表す「辻(つじ)」に咲いている名もなき花から来た説

● 模様が頭頂部の旋毛(つむじ)に似ているからという説(「つじ」という言葉は、「つむじ」という言葉がなまって生まれた言葉だと言われています)

このように、辻が花の語源に関してはいくつかの説がありますが、どれが正しいものなのかは未だ分かっておりません。

辻が花の魅力

辻が花の魅力は、何といっても、絞り染めによって表現されるその豪華かつ繊細な絵模様。

また、立体感を生むことに特化した絞りの技巧に、友禅技法が持つ自由な表現と複雑な絵柄表現をあわせた、良いとこ取りとも言える技法も辻が花の魅力と言えます。

辻が花はフォーマルな場に最適な訪問着や振袖によく使われます。そのため、式典や観劇、パーティーでお召しいただく着物としてもぴったりです。

辻が花の主な絞りの技法

辻が花の制作過程

辻が花は主に、縫い取り絞りや帽子絞り、桶絞りなどの絞り染めの技法を贅沢に施して製作されます。

さまざまな絞りの技法を駆使することで、色の違いや絵模様を生み出し、優雅でたおやかな世界を表現。

ここからは、辻が花の主な絞りの技法についてご説明します。

1. 縫い取り絞り
2. 帽子絞り
3. 桶絞り

1.縫い取り絞り

縫い取り絞り(ぬいとりしぼり)とは、模様の周辺を細かく縫い、絵画のように美しい模様をつくる絞り染めの技法です。

2.帽子絞り

帽子絞り(ぼうししぼり)ではまず、模様をつくる部分に、染色液が染み込まないように芯を入れます。そして、竹皮などで帽子のように覆って糸で巻き付けます。絵模様を描くとき使われる技法です。染色する際に、帽子を被せたような状態になることから、この名称が名づけられました。

3.桶絞り

桶絞り(おけしぼり)とは、その名の通り、桶を使って絞る技法のこと。染色したい部分を桶の外側にして、染色しない部分を桶の内側に入れます。そしてしっかりと蓋をしてから桶ごと染色するのです。大きな模様を入れたい時に、使用される染色技法です。

今の辻が花はどのようなものがあるのか

今の辻が花はどのようなものがあるのか

辻が花の昔と今の違い、そしてその歴史とはどのようなものなのでしょうか。

辻が花の全盛期であった桃山時代には、辻が花は男性の装いに華を添える染め物でした。その後辻が花は男女を問わない武家の衣服として確立しましたが、冒頭でご紹介した通り、桃山時代を過ぎると世間から突如姿を消します。

一度は途絶えた辻が花でしたが、戦後、染色工芸家の巨匠・久保田一竹氏により新しい技法が確立されたことで、再度「辻が花ブーム」が起こります。

新しい辻が花の染色技法は「一竹辻󠄀が花」と呼ばれるようになりました。

「一竹辻󠄀が花」は、縫う・絞る・染める・蒸す・水洗いする・絞りを解くという作業工程を何十回と繰り返して完成されるため、装飾や彩色の細やかさは他の着物の比ではありません。

そしてこの技法は、糊を置いて地色を染め、先に絵模様を描き染料を挿して立体感を表現するため、本来の辻が花とは技法が異なるのです。

この「一竹辻󠄀が花」以外にも小倉淳史氏や翠山工房が、辻が花の伝統を現代にも引き継いでいます。

※久保田一竹…染色家、一竹辻󠄀が花創始者。国内外で評価が高く、1990年にはフランス芸術文化勲章シェヴァリエ、1993年には文化庁長官賞を受賞

辻が花の着物

絞り染めの技法である辻が花について詳しくご説明しましたが、ここからは実際の着物をご紹介します。

ぜひお気に入りの辻が花の着物を見つけてみてはいかがでしょうか。

【初代 久保田一竹】傑作工藝辻ヶ花絞り染訪問着「夢幻」

辻が花の巨匠、初代・久保田一竹氏による逸品で、生前の作品です。

ボリュームある絞り染に、 丸みと奥行きあるカチン染にてあしらわれた見事な柄ゆき。別織りの金通し紋意匠地が用いられています。

時を経ても数多の人の心を惹きつける力のある一枚は、母娘代々受け継ぐ装う美術品として大切に受け継いでいける逸品です。

お色柄

さまざま変化する紫ベースのお色地が靄のようにゆらいで。そこに夢幻の花模様が凹凸のしっかりとした絞り染によってあらわされています。光の玉のような丸いお柄は、初代が耐えた長く厳しいシベリア抑留生活の中で希望を見出した星をあらわす『一竹星』と呼ばれる特徴的なもの。

【西洞院辻が花 大脇一心】絞り染訪問着「瑞祥辻ヶ花紋」

絞り染めの技法である辻が花について詳しくご説明しましたが、ここからは実際の着物をご紹介します。

ぜひお気に入りの辻が花の着物を見つけてみてはいかがでしょうか。

別名「西洞院(にしのとういん)辻が花」。辻が花絞り染めの大家「大脇一心氏」の作品です。

辻が花染めの研究と復元に力を注いだ、日本を代表する辻が花染め作家の大脇氏。東京歌舞伎座の大緞帳を手掛けたことでも知られています。

作品数も限られるため、なかなかお目にかかれないひと品です。

お色柄

落ち着きのある湊鼠色で、質感はシボ高の縮緬地。意匠にはカチン染めと絞りの風合い豊かな辻が花が表現されています。地色になじむ、落ち着いたトーンの色彩で浮かび上がる辻が花の味わい、そして絞りのやわらかなタッチにカチンの墨黒が美しい作品。

絞り訪問着 「つづら折辻が花」

蘇芳色の女性らしい色合いが魅力の訪問着。着物をメインにシンプルな帯をあわせると、上品な印象になります。フォーマルシーンの特別なおでかけや式典などにおすすめの一枚。

お色柄

華やいだお色をベースとして、流れるように施された絞り染めの辻が花。豊かな陰影変化を醸し出すちりめん地の上に、丁寧に描きあげられたお花の絵柄が魂を注ぎ込まれたかのように生き生きとしています。

創作小紋 「辻が花幕」

シックな雰囲気が魅力の辻が花の小紋です。
和を愛する心にそっと寄り添う雅やかな佇まい、しっとりと風雅なムード。明るい色の帯でアクセントにしても、濃い色の帯できりりと大人風にも、さまざまにお召しいただけます。

お色柄

陰影豊かな紋意匠地を用い、地色は灰茶色のぼかしが基調となっています。辻が花の柄ゆきは、幻想的なムードの優彩にて。たっぷりとした柄付けにもかかわらずシックな色彩のため落ち着いた雰囲気があり、控えめに装いたい際にもおすすめの着物です。

辻が花染めの着物を楽しもう

辻が花02

今回は、幻の染めと称される染め物「辻が花」についてご紹介しました。
幽玄な魅了のある辻が花染めの着物を実際にまとうことで、ぜひその歴史とともにお楽しみください。

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