着物・和・京都に関する情報ならきものと

『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』 国立新美術館 「きものでミュージアム」vol.26

『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』 国立新美術館 「きものでミュージアム」vol.26

記事を共有する

20世紀のファッション界を約半世紀に渡り席巻した”モードの帝王”大回顧展。ルック110体、アクセサリー、ドローイング、写真など262点が紹介されます。美しく豪華絢爛な世界をぜひ。恒例の無料観覧券プレゼントも!

2023.08.16

よみもの

開館10周年記念展 第2部 『歌麿と北斎 ―時代を作った浮世絵師―』 岡田美術館 「きものでミュージアム」vol.25

「モードの帝王」イヴ・サンローランの大回顧展

今回は、国立新美術館で開催中の『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

エントランス

20世紀のファッション界を席巻し”モードの帝王”と呼ばれたイヴ・サンローラン(1936-2008)。

17歳で国際羊毛事務局主催のコンクールで入賞し、翌年、クリスチャン・ディオールのアシスタントに。

1957年ディオールの急逝により、後継者となりました。その時21歳、世界最年少のクチュリエ(オートクチュールの主任デザイナー)の誕生です。

2023.01.31

よみもの

『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』 東京都現代美術館「きものでミュージアム」vol.19

最初のコレクション「トラペーズ・ライン」は大成功を収め、鮮烈なデビューを飾りつつ若くしてその才能を開花させました。

その後1961年、生涯の伴侶となるピエール・ベルジェの支援を受け、自らのメゾン『イヴ・サンローラン』を創設しました。

若き日のイヴ・サンローラン

若き日のイヴ・サンローラン、右:アンディ・ウォーホル《イヴ・サンローランの肖像》1974年

本展は2002年に引退するまで、イヴ・サンローランの40年以上に渡る足跡を、ルック110体のほかアクセサリー、ドローイング、写真など262点でたどる大回顧展です。

12章で構成される輝かしい才能と豪華絢爛な美の世界をぜひご堪能ください。

イヴ・サンローラン美術館パリ © Sophie Carre

イヴ・サンローラン美術館パリ © Sophie Carre

「ファッションは時代遅れになるが、スタイルは永遠である」

『イヴ・サンローラン』メゾン創設後最初のショーは、紺のピーコート、白のプリーツパンツにミュールというスタイルで幕を開けました。

今でこそごく普通のスタイルですが、当時は女性がパンツをはくことさえタブー視されていた時代ですから……なんというチャレンジ!

第1章は、その最初のショーのランウェイを再現するような展示です。まるで今にもマネキンが歩き出しそうな展示に胸が躍ります。

1962年 初となるオートクチュールコレクションの展示風景

「1962年 初となるオートクチュールコレクション」の展示風景

活動的な女性に向けてスカート・スーツも登場し、直線的でシンプル、洗練されたスタイルが話題に。イブニング・ガウンは、刺繍で独特の質感を表現するドレスなどでした。

ショーは大成功、プレスの間でも評判となったそう。

イヴ・サンローラン アイコニックな作品の展示風景

「イヴ・サンローランのスタイル アイコニックな作品」の展示風景

以降もサンローランは次々と新たなスタイルを発表していきます。

男性服から着想を得て、モダンでエレガントな女性服として発表。今ではサファリ・ルックやパンツスーツ、ピーコート、トレンチコートといったアイテムは女性服として定着していますが、サンローランが最初に取り入れたものだったのです。

豪華絢爛な世界

展示風景

「想像上の旅」展示風景

今回展示されているドレスはすべて「オートクチュール」の作品です。

そもそもオートクチュールとは……

「パリ・クチュール組合」に加盟し厳しい条件をクリアしたメゾンが作る最高級のオーダー服のこと。クチュリエの才能とオリジナリティ、そして高度な技術の結晶とも言えます。

「服飾の歴史」展示風景

「服飾の歴史」展示風景

サンローランは織物職人、染織職人、刺繍職人、金属職人といったプロフェッショナルと協働しスタイルを築いていきました。

豪華できらびやかなドレスが並ぶ展示室は、まさに夢のような空間です。

「服飾の歴史」展示風景

「服飾の歴史」展示風景

極めて精緻な技術で制作されたドレスの数々……思わず手に取ってじっくり眺めたくなります。

もちろん触れることはできませんが、ひとつひとつ時間をかけてじっくりと目で味わいましょう。

《エル・ロシオの聖母像の衣装》

《エル・ロシオの聖母像の衣装》1985年 パリ、ノートルダム・ド・コンパシオン教会寄託

サンローランはアクセサリーも重要視しました。

天然の宝石に固執することなくさまざまなマテリアル(金属、ラインストーン、木材、ビーズなど)を組み合わせて表現。それらはドレスを彩り、本物の宝石に劣ることなく身に着ける人を輝かせました。

「好奇心のキャビネット ジュエリー」展示風景

「好奇心のキャビネット ジュエリー」展示風景

舞台芸術のグラフィックとテキスタイル

「舞台芸術―グラフィックアート」展示風景

「舞台芸術―グラフィックアート」展示風景

あまり知られていないかもしれませんが、サンローランは演劇の衣装や舞台のセットのデザインも行っています。

衣装やセットのためのスケッチはそれ自体が芸術と言えるもので、思わず目が釘付けになりました。

「舞台芸術―テキスタイル」展示風景

「舞台芸術―テキスタイル」展示風景

舞台衣装は、オートクチュールのドレスとは違う華やかさがあり、それらもサンローランのあふれる才能を感じることができます。

アーティストへのオマージュ

ショートカクテルドレス – ピート・モンドリアンへのオマージュ

手前:カクテル・ドレス– ピート・モンドリアンへのオマージュ 1965年秋冬オートクチュールコレクション

サンローランは芸術や文学と自分の作品につながりを感じ、デザインの中で彼らへのオマージュを捧げました。

1965年の秋冬コレクションでピート・モンドリアンとデ・ステイルの作品からドレスを制作。

二次元の絵画が三次元のドレスとなり動き出したこれらは、若い顧客に熱狂的に受け入れられました。

カクテル・ドレス―セルジュ・ポリアコフへのオマージュ

手前:カクテル・ドレス―セルジュ・ポリアコフへのオマージュ 1965年秋冬オートクチュールコレクション

単に芸術作品のイメージを借用するのではなく、それらを解釈し自分自身のデザインに―

モンドリアンのほか、ピカソ、ブラック、ファン・ゴッホ、そしてフェルメール、ベラスケス、ドラクロワといった巨匠たちの作品も取り入れられました。

《アイリス》イヴニング・アンサンブルのジャケット

《アイリス》イヴニング・アンサンブルのジャケット―フィンセント・ファン・ゴッホへのオマージュ 1988年春夏オートクチュールコレクション

ゴッホが描いた《ひまわり》と《アイリス》の刺繍ジャケットは、1988年の春夏コレクションのために制作されました(今回は《アイリス》が展示されています)。

この2点は刺繍職人による600時間以上にわたる手仕事の末に生み出されたもので、当時、”史上最も高価なオートクチュール作品”として知られました。

ビーズ、スパンコール、リボン等を使用し立体的に仕上げられた作品群。ボタンもすばらしく、それだけで芸術と言えそうです。しばらく見惚れてその前を動けませんでした。

キャプションを読まずにドレスを観て、誰へのオマージュだろうと想像するのも楽しそうですね。 

イヴニング・アンサンブルのジャケット―ピエール・ボナールへのオマージュ)イヴニング・アンサンブルのジャケット―ピエール・ボナールへのオマージュ 1988年秋冬オートクチュールコレクション

イヴニング・アンサンブルのジャケット―ピエール・ボナールへのオマージュ 1988年秋冬オートクチュールコレクション

クライマックスはウエディング・ガウン

ウエディング・ガウン

中央:ウエディング・ガウン、 左右:ブライズメイドのドレス 3点とも1994年秋冬オートクチュールコレクション

オートクチュールのファッションショーにおいて、ウエディング・ガウンの登場はクライマックスです。サンローランは約40年の間に約80点をデザインしました。

ウエディング・ガウン

ウエディング・ガウン 1977年秋冬「中国人」オートクチュールコレクション

伝統的で歴史的なスタイルに解釈を加えたもの、幻想的でオリジナリティーにあふれるもの、自由な発想に思わず笑みがこぼれるものなどなど、テキスタイルやディテールに凝った作品ばかりです。

ウエディング・ガウン

ウエディング・ガウン 1999年春夏オートクチュールコレクション

「バブーシュカ」ウエディング・ガウン

「バブーシュカ」ウエディング・ガウン 1965年秋冬オートクチュールコレクション

最後に

アーティストへのオマージュ展示風景

「アーティストへのオマージュ」展示風景

たぐいまれな才能で20世紀後半のファッション界で40年以上活躍し続けたイヴ・サンローラン。展示室はまさに”モードの帝王”の名にふさわしい夢の世界でした!

今や世界中の女性がパンツスーツ、タキシード、ピーコート、トレンチコートを着ていることを誇りに思っている。私は現代の女性のワードローブを作り、時代を変化させる流れに貢献したのだと言い聞かせてきた。

イヴ・サンローラン、2002年引退会見のことば

私たちが現在、普通に身に着けているパンツやジャケットも、実は彼が女性のファッションとして取り入れてくれたおかげです。ドレスだけでなくスケッチやペーパードールなど、その源泉に触れることもでき興味深く鑑賞しました。

ミュージアムショップ

ミュージアムショップ

ミュージアムショップでは魅力的なグッズが展開されています。早くも売り切れ、入荷待ちになる商品も出ているようです。図録は装丁もスタイリッシュでお勧めです。

ぜひ時間に余裕をもってお出かけください。

この日の装い

この日の装い1

今回は、イヴ・サンローランのドレスと並んで違和感のないコーディネートにしました。

この日の装い お太鼓

白地に胡蝶蘭の単衣の訪問着に尾峨佐染繍の刺繍の帯、パールの帯留に三分紐は道明です。

この日の装い 帯回り
この日の装い 前柄

2023.09.19

まなぶ

有職組紐 道明(東京都台東区上野・組紐)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.6

2023.06.24

よみもの

道明が切り拓く日本の美の未来形 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.16

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

ポスター画像

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル

国立新美術館 企画展示室1E
https://ysl2023.jp/

日 時:2023年9月20日(水)~12月11日(月)
    10:00~18:00
    ※毎週金・土曜日は20:00まで
    ※入場は閉館の30分前まで

休館日:毎週火曜日休館

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

「キュビスム展—美の革命」メインビジュアル

パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ

国立西洋美術館
https://cubisme.exhn.jp

日 時:2023年10月3日(火)~2024年1月28日(日)
    9:30~17:30(毎週金・土曜日は20:00まで)※入室は閉館の30分前まで

休館日:月曜日(ただし、10月9日(月・祝)、1月8日(月・祝)は開館)、10月10日(火)、12月28日(木)~2024年1月1日(月・祝)、1月9日(火)

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

「超絶技巧、未来へ!」メインビジュアル

超絶技巧、未来へ!

三井記念美術館
https://www.mitsui-museum.jp/

日 時:2023/9/12(火)〜11/26(日)
    10:00〜17:00 ※入館は閉館時間の30分前まで

休館日:月曜日(10月9日は開館)、10月10日(火)

◇巡回
富山県水墨美術館 2023年12月8日(金)〜2024年2月4日(日)
山口県立美術館(予定) 2024年9月12日(木)~11月10日(日)
山梨県立美術館(予定) 2024年11月20日(水)~2025年1月30日(木)
※出品作品は会場により一部異なります。

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

「横尾忠則 寒山百得」展 メインビジュアル

「横尾忠則 寒山百得」展

東京国立博物館 表慶館(上野公園)
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kanzanhyakutoku

日 時:開催中~2023年12月3日(日)
    9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日、10月10日(火)
    ※ただし10月9日(月・祝)は開館

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

◆ 読者プレゼント ◆

ポスター画像

さて、恒例の招待券プレゼント!
今回は『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』国立新美術館の招待券を3組6名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆Facebook
https://www.facebook.com/kimonoichiba/
◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja
◆Twitter
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2023年10月15日(日)まで

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する