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暑がりさんと寒がりさん 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.61

暑がりさんと寒がりさん 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.61

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きものの世界では、9月は単衣、10月は袷、と一応言われています。でも、暑がりのわたしにとっては、それっていつの時代の、どこの場所での話?という感じです。

昨年10月1日のコラムはこちら!

2021.10.01

よみもの

ふわふわの結城紬 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.37

暑がりさんと寒がりさん2

10月1日は衣更え。
かつては白い夏の制服姿が、この日を境に一気に紺色の冬の制服になったのに、今はそうじゃないんですよ。「移行期間」というのが設けられて、ばらばらなんです。

娘が通っている中学校にも「移行期間」があって、9月は寒かったら冬服を、暑かったら夏服を着てもよく、10月からは基本冬服だけれど、暑ければブラウスやワイシャツになってもいいんですって。

女子は暑ければ靴下、寒ければタイツ。でも文化祭の日までにタイツにして揃えます、とのことでした。そうやってグラデーションで冬服に近づいていく感じです。

そうかと思えば、全館冷暖房完備の高校に通っている息子は、とうとう夏服を一度も着ないまま冬服シーズンに入ってしまいました。「だって学校の中、冷房で寒かったんだもの」とはいうものの、えー、洗い替えとして3枚も買ったのにビニールの袋に入ったままなんですよ。もったいないわぁ。

きものの世界では、9月は単衣、10月は袷、と一応言われています。

でも、暑がりのわたしにとっては、それっていつの時代の、どこの場所での話?という感じです。

ふだんファッションとして着るきものなら、雪でも降らない限り、袷を着る気になれません。もうしばらくの間、わたしは単衣です。

……といいつつ、冠婚葬祭とお茶席は決まり通りに着ることがカッコイイので、そこは袷にしています。その代わり、中に着ているのは麻襦袢だったりしますけどね。

世の中にわたしのような暑がりがいるのだから、当然寒がりの人もいるんです。先日お目にかかった方がそうでした。

「実はわたし寒がりで、9月には袷を着たくなっちゃうんです」

と言われてハッとしました。単衣の季節に袷を着ていると

「あら、あなた単衣をお持ちじゃないの?」

と言われてしまうんですって。わー、それわたしは11月に単衣を着ていたら、知らない方から「まぁ、単衣!袷を持っていないの?」って聞かれましたよ!暑がりには暑がりの、寒がりには寒がりの、それぞれの「快適」があるんですよね。

「夫が暑がりで、寝室の温度が低く、まるでツンドラかと思うほどです!命の危機を感じたので、別寝室になりました」と、この夏ラインで報告してくれた寒がりの友人もいます。快適さの共有って難しいんですよね。

それに、北海道と沖縄の気温差を考えたら、それを統一させようだなんて、無理があるんじゃないかしら。昔、東京に住んでいた頃、仲間同士で待ち合わせをしたとき、九州出身の人がダウンジャケットを着て、北海道出身の人が薄手の長袖だったことがあったんです。同じ気温でも、育った環境で気温の感じ方が全然ちがうんだなと知った瞬間でした。

それなのに、きものになった途端に「袷じゃない」だの「単衣はおかしい」だの言うの、本当にばかばかしくなります。

でもね、わたしがいくら暑がりでも、だいぶ秋も深まってきた頃に、透ける夏物を着ることはしないですね。だって見ている人が寒々しく感じてしまうじゃないですか。着て快適、見られて快適、って大事じゃないかなと思うんですよ。

単衣でも寒々しく見えないコーディネートにするには、積極的に秋色を用いること!
葡萄色、栗色、煉瓦色など、温かみのある色がおすすめです。

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記事に登場するアイテム

[単衣]お仕立て上がり 東レシルック色無地

ぜんまい紬着尺 「無地・藤色」

京染小紋地羽織 羽織紐付き

お仕立て上がりお洒落袋帯「よろけ市松紋」

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