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雨だけでなく、ポン酢もまた敵。 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.53

雨だけでなく、ポン酢もまた敵。 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.53

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きものはいつも自分で洗濯している小千谷縮を着ていたので、濡れてもそのうち乾くし大丈夫、と笑っていたのですが、わたしの後ろ姿を見た仲間が「いまさんのお太鼓!」と叫んだのです。

きものにカビがつかないようにするために 「きくちいまが、今考えるきもののこと」

しかし、なぜ同じ箪笥の同じ引き出しに入っていたのに、母のきものだけカビが?理由はたとう紙でした。わたしのたとう紙は和紙製ですが、母のたとう紙は洋紙。和紙は中のきものの水分を外に出そうとしてくれますが、洋紙はまわりの水分を吸収してしまうのだそうです。

雨だけでなく、ポン酢もまた敵2

夕立という風情ある言葉が消えつつあり、いつの間にやらゲリラ豪雨と呼ばれることが増えました。

とはいえ夕立というレベルを超えた降り方は、まるでスコールかと思うほどの強さです。温暖湿潤気候と習ったはずなのに、もしかして日本は亜熱帯気候に近づいているのでしょうか。

数年前の真夏のある日のことです。

会議を終え、次に行く場所へ移動しているときでした。
突然前触れもなく、大雨が降ってきたのです。大きな雷の音に、ひゃー!と叫びながら急いで避難したのですが、けっこう濡れてしまいました。

きものはいつも自分で洗濯している小千谷縮を着ていたので、濡れてもそのうち乾くし大丈夫、と笑っていたのですが、わたしの後ろ姿を見た仲間が「いまさんのお太鼓!」と叫んだのです。

なんと帯の幅が縮んで、見るも無残な姿になっていました(イラスト参照)。その夏帯は、アンティークの夏のきものをほどいて名古屋帯に仕立てたものだったのですが、雨に濡れて思いっきり縮んでしまったのです。手で伸ばしても元通りにはなりません。

しかしまさか帯が雨に打たれたせいでこんな風に形を変えてしまうなんて。衝撃でした。

ふと横を見ると、仲間のきもの姿はなんともないのです。聞けば「ガード加工しているので、雨なんてへっちゃら」なんですって。前にイベントで見た、ガード加工の会社の人が「大切なきものに醤油をかけても、ほーら!」と実演している姿を思い出しました。

そうか!あれか!あの日を境に、わたしはガード加工というものの効果を見直すことになったのです。

それから数年後、自慢の紗羽織をデビューさせる日は、わたしの出版記念パーティーの日でした。

本番が始まる前に何か軽く食べておこうと思いつき、春巻きをテイクアウト。小袋に入ったポン酢をかけようとしたそのとき!

ブシャー!!

小袋が上手に切れず、自慢の羽織にポン酢が飛び散る事態になってしまったのです。

「終わった……今日のコーデの主役は紗羽織だったのに……」

ところが、ポロ、ポロ……。ポン酢が玉になって滑り落ちたのです。ガード加工をしていたことをすっかり忘れておりました。ガード加工すごい!!結果、被害はゼロです。

幅が半分になってしまった哀れな夏帯を思い出して、そっと手を合わせる夏がすぐそこまでやって来ています。最近は突然の雨を教えてくれるアプリもありますが、敵は雨だけではありません(わたしの場合はポン酢でした)。

あの事件以来、わたしは自分で洗濯できない大事なきものや帯、羽織やコートには、ガード加工をするようになりました。仕立て代にガード加工をプラスするところで、つい「ガードはいいかな」となりがちなんですけどね。あの日のポン酢の玉を思い出して、そこはケチらないようにしています。

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