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和装振興協議会というのがありまして 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.77

和装振興協議会というのがありまして 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.77

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メンバーは、大学教授に染め織りの組合の代表、小売店や百貨店の代表などそうそうたる顔ぶれ。 そのなかに”消費者代表”というような形で、ピースの又吉さんと一緒に参加させてもらっています。

昨年11月1日のコラムはこちら!

2022.11.01

よみもの

防寒グッズはお早目に! 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.63

和装振興協議会というのがありまして2

「買ってはいけない着物と着物まわり」という本を出す前から、もう何年も、欲しくないきものや帯を無理やり売りつけて商売をする阿漕なお店のことを「あこぎや呉服店」と呼んで、近づかないように注意喚起していますし、コラボなどでものづくりをするときも、産地の人にきちんと対価が支払われるフェアトレードは当たり前のことと言ってきました。

きちんとしたお店や企業じゃなかったら、お付き合いはしません。

ところが世の中は広くて、「名古屋帯は絶滅した」と言って袋帯を売ったり、「お友達と映画を見に行ったり食事をしたりしたい」という人に対して訪問着フルセットを薦めたりするお店や、産地を軽んじて対等な取引をしようとしない企業もいまだにあるというのです。

経済産業省で行われる「和装振興協議会」というのが年に1~2回ありまして、わたしは和装振興協議会がスタートする前の、「和装振興研究会」からずっと委員をしています。

メンバーは、大学教授(和装文化がご専門の先生、きものの歴史の先生、きものの経済に詳しい先生など)、染の組合の代表、織の組合の代表、小売店の代表、百貨店の代表などそうそうたる顔ぶれ。

そのなかに消費者代表というような形で、ピースの又吉さんと一緒に参加させてもらっています。

発足した2015年からずっと参加していて思うことは、「じれったいな!」ということ。

やっと「きもの安全・安心宣言」というのができて、原産地の表示がされるようになったり、和装業界の商慣行についても、手形を廃止して現金化することや、産地にきちんと対価が支払われる仕組みが作られたりして(まぁこれもわたしに言わせれば、逆に今まで一体何をやってきたの、という感じなんですがね)、これで「きもの業界はなんだか怪しいから、子どもを就職させたくない」なんて言われなくなるぞ!と思ったのに、せっかく基盤が整っても、着る人そのものが増えなかったら意味がないんですよね。

こうしている間にも、職人さんは高齢化していくし、後継者問題も深刻で産地はどんどん疲弊していく。

東日本大震災で自粛ムードが広がっていたころ、被災者の方が、「経済は、回せる人から回しておいて。後から追いついて回しに行くから」と言っていたことが忘れられません。

いただきものあり、リサイクルのきものもあり、なんでもいいんです。とにかく分母を増やすことが大事!

以前会議の中で、そうそうたる顔ぶれのみなさんに、

「実はわたし、今日着ているこの羽織を新調しました。みなさん、この一年で、きものでも帯でも小物でも、何かを新調されましたか?

と質問したことがありました。

和装業界の重鎮はもちろん、携わる人たちがひとり一つでも何かを新調したら、それは大きな経済効果になるはず

きものに携わる仕事をしていながら、紐一本足袋一足買わない理由は何?

ある自治体では「きもの振興のために、きものを着て議会をしよう」という取り組みがあったという話を聞いてうれしくなりましたが、参加する議員のほとんどが組合からのレンタルだったそうでガッカリしたこともありました。

産地で暮らし、産業を守ると豪語している議員さんが、産地のきものを買わない理由は何?

ところで、会議がある日は、経産省の職員さんがきもの姿で仕事をしています

もちろん有志だけですが、それでも霞が関のあちこちできもの姿を目にするので、きもので仕事、できるんじゃないの!着たかったらいつでも着ていい!って上の人がもっと言ってよ!と思ってしまいます。

きものは特別なものではなく、ファッションのひとつ。

きもので出社したっていいし、学生さんがきもので授業を受けたっていいし、そもそも誰かの許可なんて必要ないはずなんですよね。

きものを着たいと思う人がたくさんいるのに、業界側が実際に着るところまで結び付けらずにいるのが現実です。きものに興味のあるたくさんの人たちと一緒に、その課題をひとつひとつ見つけ出して、解決させていきたいなと思っています。

さーて、今回は何を着て行こうかな。みなさんの着姿も楽しみです。

経済産業省 和装振興協議会についてはこちら

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