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単衣はいつから? 2024年版 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.82

単衣はいつから? 2024年版 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.82

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「あら、あなた、まだ袷の季節よ」なんて声をかけてくるような人は絶滅しました。もしも遭遇したら、それは昭和からやって来たタイムリーパーです。

昨年4月1日のコラムはこちら!

2023.04.01

よみもの

夏物はいつから?フライングは自由です! 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.70

単衣はいつから2024年版2

単衣を着るのは六月と九月だけ、なんていうのは昭和のお話です。

去年の四月、茶道専門誌の五月号を読んだのですが、そこには、

「時代は流れて変化していくものなのですから、昨今の五月の気温を鑑みますと、すでに単衣でよいのではないかと思うのです」

「単衣のきものは、これまでのように、六月と九月だけのものにするのは無理があります。ぜひこれからは、初夏である五、六月と、初秋の九月、中秋の十月にもお召しになっていただきたい」

とありました。これは素晴らしい追い風です。厳格なお稽古ごとの代表格である茶道の世界でさえ、暑い日には率先して単衣を、と言うようになったのです。

開いたページからぶわっと風が吹いてきたように感じられ、あぁ、今わたしは歴史的瞬間に立ち会えたんだ、という気持ちになりました。

とはいえ、そもそも日本は縦に長いのです。北海道と沖縄を同じくくりにして語るのには無理があるというもの。

それに暑がり寒がりという言葉があるように、人によって暑い寒いの感覚は異なります。一番大切なのは、着る人の感覚ではないでしょうか。その日過ごす場所の気温、出かける先の気温、体調などを総合判断すればいいのです。

本当ならば、誰が単衣だろうが、袷だろうが、そんなことは気にしなくてよい、という風潮になってくれたらいいのにな。

ちなみにわたしは、春彼岸が過ぎたら基本的に単衣を着ます

最初は少し地厚な結城紬。それから大島紬や米沢お召、というように、単衣の中でも生地感で変化していきます。

いつもならすっかり単衣を着ている季節なのですが、今年はなんだか彼岸を過ぎても雪マークがついたり消えたりの変な気候で、袷を出したりしまったりの繰り返しです。

そうしている間にも季節は過ぎて、今度は夏日に悩まされる春になっていくのでしょうね。そうなったら、淡い水色のワッフル地のお召や、淡い緑色の結城縮など、見た目が涼しく軽い単衣の出番です。

そのうちに透ける羽織やきものも出してきて、晩春と初夏を行ったり来たり。ああなんて麗しくも楽しい時間なんでしょう。

単衣のきもの、ぜひみなさんもご一緒に、長~く楽しみましょう!

「あら、あなた、まだ袷の季節よ」なんて声をかけてくるような人は絶滅しました。もしも遭遇したら、それは昭和からやって来たタイムリーパーです。

にっこり微笑んで「昭和からようこそ」と出迎えてあげるのがよさそうです。

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記事に登場するアイテム

【薩摩花織】 特選薩摩花織紬 「花織格子段暈し・薄紅色」

【本場牛首紬】 製織:白山工房 特選先染め手織り紬

【トリエ】 創作友禅小紋 「更紗・象牙色」

【JAPAN_MODE】お仕立て上がり小紋 リーフ/スプリンググリーン

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