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常着、仕事着としてのキモノにふれる『大河への道』 「きもの de シネマ」vol.14

常着、仕事着としてのキモノにふれる『大河への道』 「きもの de シネマ」vol.14

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。今回は、梅雨の気晴らしに最適な『大河への道』をご紹介!

©2022 映画「ホリック」製作委員会  ©CLAMP Shigatsu Tsuitachi CO.,LT./講談社

銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。GWの娯楽にオススメの『ホリック xxxHOLiC』について解体いたしましょう。

「歩き、測り、記す」――その果てに

ごきげんよう。

平年より早く沖縄が梅雨入りし、今年も長雨の季節がやってまいります。

「雨のことば事典」

わたくしの愛読書のひとつに「雨のことば事典」(講談社学術文庫)があるのですが、なんと雨を表す言葉、雨にまつわる言葉が1200語も!

四季のある自然豊かな日本ならではの表現がたくさん集録され、気象用語のコラムも充実しており、読み物としても面白い一冊でございます。梅雨籠りのお供にぜひどうぞ。

黴雨と書いて「ばいう」とも読むほど黴(かび)やすい時節。心持ちだけでもカラッと晴れやかに!ということであれば、最たる屋内娯楽場である劇場がよろしいかと。

ジメジメや鬱々のせいで活力が削がれるなぁといったときには、伊能忠敬の偉業を描いた『大河への道』をご覧になってはいかがでしょうか。

©2022「大河への道」フィルムパートナーズ
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ

伊能忠敬といえば、「初の日本地図」を作った人。

社会の教科書にはそう記されていたものです。「地球の大きさを知りたい」という夢と浪漫を胸に、55歳にして地図作りに着手し、73歳までかけて地球一周分を歩いて測量したというから驚きです。

「歩いては、測り」を繰り返し、根気と執念をもってして日本全国を行脚。尋常じゃありません。

©2022「大河への道」フィルムパートナーズ
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ

そんな伊能忠敬を「ちゅうけいさん」と呼び親しむ千葉県香取市で、彼を主人公にした大河ドラマを実現させようというプロジェクトが発足します。

その責任者となった総務課主任の池本保治(中井貴一)と部下の木下浩章(松山ケンイチ)は、県知事ご指名の脚本家・加藤と共にシナハン(シナリオハンティング)を行い、プロット(あらすじ)作りに漕ぎつけるのですが……。

伊能忠敬は「大日本沿海輿地全図」(伊能図)が完成する3年も前に亡くなっていた事実が発覚します。吃驚仰天。さて、ここから物語はどう転びますことやら。

©2022「大河への道」フィルムパートナーズ
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ

原作は、役者として出演もされている立川志の輔さんの新作落語「大河への道-伊能忠敬物語-」。その記録用映像をご覧になった中井貴一さんが惚れ込み、映画化が実現いたしました。

作中、伊能忠敬の凄さを教えるため「伊能忠敬記念館」を訪れるシーンがありますが、そこに展示されている1821年に完成した日本地図の大型パネルを見て彼らが受ける衝撃こそ、立川志の輔さんが実際に肌で感じたもの。落語を作るきっかけになったといいます。

衛星写真との誤差、わずか0.2%!

©2022「大河への道」フィルムパートナーズ
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ

映画の終盤、大広間に広げられた日本地図の正確さは鳥肌もの。

幕末、日本を測量しようと試みたイギリス軍がこの伊能図を見て、あまりの精度の高さに驚き、引き上げたという逸話が残っているほどです。

気が遠くなるような地道な測量と緻密な作業を重ねて出来上がった地図に詰まった、名もなき弟子たち「伊能隊」の想いが立ち昇ってくる印象深いシーンをぜひ大きなスクリーンでご覧ください。

帯結びの小粋さこそが、佇まいの要

さて、今回の作品はお写真を見れば判るように、令和と江戸を行ったり来たりいたします。

タイムスリップではなく、要は現代劇と時代劇が別パートになっている構成。つまり、それぞれの時代の登場人物たちは決して交わりません。そこで、主だった出演者全員が一人二役を演じることになったのです。

©2022「大河への道」フィルムパートナーズ
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ

大河ドラマ化に向けて奮闘する池本役の中井貴一さんは、伊能忠敬亡き後、地図の完成に向けて弟子たちと一緒に尽力する高橋景保。

松山ケンイチさんは、中井さんの部下・木下と腹心・又吉という共通点のある役どころ。市役所のメンバーは、伊能隊の面々として登場します。

©2022「大河への道」フィルムパートナーズ
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ

中には、こんなところまで二役?!と、見つけるとうれしいキャラクターも。

そして、最も魅力的な演じ分けが、北川景子さん扮する観光課長の小林永美と伊能忠敬の四番目の妻・エイ。以前ご紹介した『キネマの神様』(vol.4参照)でもしっとりした浴衣姿で観客を魅了していましたが、今回は現代パートでは色味の少ない堅いスーツ姿で、江戸パートではオシャレ番長です!

©2022「大河への道」フィルムパートナーズ
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ

初めて登場されたシーンからパキッとした縞柄のキモノをお召しになっていて、帯は粋な吉弥結び。別れたとはいえ熱い想いで地図作りを手伝うエイという女性の、凛々しさや大らかさにとてもよく似合っているのです。

対して、岸井ゆきのさんはもっと下町の娘らしいキモノ。
帯は矢の字結びで、カジュアルな雰囲気に。前掛けや襷や手拭いも、エイに比べると仕事着といった感じです。お二人が一緒に出られているシーンも多いので、ぜひ見比べてみてください。

©2022「大河への道」フィルムパートナーズ
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ

その後も二色の縦縞柄(写真)や格子柄など、北川景子さんの衣装はどれも芯の通った女性らしい装い。ラスト、これまでとは少し違った趣のお召し物になるのもお見逃しなく。

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