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木村拓哉演じる“新・信長”、降臨! 『レジェンド&バタフライ』 「きもの de シネマ」vol.24

木村拓哉演じる“新・信長”、降臨! 『レジェンド&バタフライ』 「きもの de シネマ」vol.24

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。今回の作品は、近年稀にみる超大作!東映創立70周年記念作品となる木村拓哉主演『レジェンド&バタフライ』です。

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2023.01.24

よみもの

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人間味際立つ、新たなる信長像

ごきげんよう、椿屋です。

そろそろ梅柄を身に着けたくなる季節になってまいりました。そんな少し浮かれた気持ちを後押ししてくれるような一本が、今回ご紹介する作品。

先週の新感覚時代劇から一変、大迫力の本格時代劇でございます。

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

史上最も有名な戦国武将・織田信長を斬新な解釈で描いた『レジェンド&バタフライ』は、東映創立70周年を記念して製作され、その総製作費はなんと!20億円。

最高峰のスタッフ・キャストはもちろん、完全再現されたオープンセットや贅沢なロケーションでの撮影など、圧倒的なスケールでつくり上げられています。

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

昨年9月に木村拓哉さんの主演が発表されて以降、“キムタク信長”が話題となり、3年ぶりに開催された「ぎふ信長まつり」に演者たちが参加することで一層の注目を集めたことは記憶に新しいでしょう。

その前評判に違わない本作で、抜群の安定感を誇る脚本家・古沢良太氏とタッグを組んだのは、NHK大河ドラマ『龍馬伝』や『るろうに剣心』シリーズで知られる大友啓史監督。

ふたりを支える座組には監督の気心知れた最高のスタッフが集まり、歴史ある東映京都撮影所の職人たちが加わって鮮烈な名作が誕生しました。

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

物語のはじまりは、1549年春。

“大うつけ”な16歳の信長(木村拓哉)と、“マムシの娘”15歳の濃姫(綾瀬はるか)は政略結婚の場で相まみえます。

そこから33年——

誰もが知る、あの、“本能寺の変”まで。

戦場(いくさば)のシーンを極力減らし、そこへ赴く前や戦いを終えた後の心の機微を丁寧に描くことで、生々しい命を身近に感じさせるこれまでにない戦国物語となっています。

古沢版信長は、これまで見たことのない”人間くささ”を湛えた男です。

なるほど、これもまた、ひとつの可能性。天下統一へと突き進む信長の新たな一面を、稀代の男前“キムタク”が全身全霊で演じ切っておられるのです。

やや不器用ですが直向きな青年が、なにゆえ残虐な〈魔王〉へと姿を変えたのか。最悪な出逢いから信長と濃姫の関係がどう揺らいでいくのか。群雄割拠の戦国時代を生きたふたりが、心の内に秘めていたものとは……

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

物語の見どころは、信長を描いた作品ではド定番ともいえる舞い「敦盛」のシーン。大友監督に大発明だと言わしめた、古沢氏が仕掛けた大胆な発想に震えます。

加えて、ロケーションの見どころとなっているのは、オープンセットとしてつくられた那古野城と岐阜城です。幼少期を過ごし、濃姫を迎え入れた那古野城から始まり、清州城、小牧山城、岐阜城、安土城と、信長は人生で5つの城に住んだ珍しい経歴の持ち主。

その城の変遷もまた、彼の人生を描く大切なファクター。とくに、大阪・島本町に建てられた岐阜城は、美術部渾身の作と言えるでしょう。

髪飾りに見る、濃姫の人となり

そして、「きものと」だからこそスポットを当てたい衣装の見どころは、勝ち気で凛々しい濃姫。の、髪結いです。

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

身にまとうキモノに合わせて、紐であったり布であったり。色や柄もさまざま。そのさりげないお洒落が、彼女の気高さや愛嬌をそこはかとなく感じさせる見逃せないポイントになっています。

普段着としては青系のコーディネートが多く、それもまた彼女らしさを存分にあらわしているだけでなく、年月を経て同じキモノを着て登場する点もリアリティがあって、世界観に奥行きをもたらしています。

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

キャラクターの見どころとしては、わたくしの嗜好に偏っておりますが……中谷美紀さん扮する各務野の静かなる存在感を強く推したい!

濃姫にお仕えする立場の彼女。大友監督からの「ある種、濃姫が憧れるような存在であってほしい。各務野と濃姫、二人が得られる幸せの違いを際立たせてほしい」というご依頼を受け、役作りされただけのことはあります。

控えめで言葉少なに、表情のみで多くのことを伝え、その場の空気すらも変えてしまう。感服いたしました。

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

『レジェバタ』最初の感涙どころは、そんな各務野が、自害しようとする濃姫に寄り添うシーンでした。あれは、中谷さんだからこそ泣けた美しい一幕です。

その他の泣きどころとしましては、忠誠心の強い寡黙な侍従・福富平太郎貞家(伊藤英明)が、濃姫のために信長へと意見するシーンも比肩します。どのように、何を申し上げたかは、ご自身の目でお確かめください。

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

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和議のため決して断れない婚姻、家を守るため女にこそ課せられた使命、当たり前の価値観としてあった一夫多妻制。戦国の世は、純粋な恋愛をするには難儀な時代でした。だからこそ、濃姫の自由意志が際立つのです。

彼女に関する資料が少ないことを逆手にとり、フィクションをあちこちにちりばめることで、物語を広げていく。濃姫の生き様こそ、この映画の肝。彼女が信長とどんな関係性を築いていくのか、劇場でとくとご覧あれ。

©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

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