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究極にポジティブ!新解釈で描く吉良家VS赤穂浪士 『身代わり忠臣蔵』 「きもの de シネマ」vol.44

究極にポジティブ!新解釈で描く吉良家VS赤穂浪士 『身代わり忠臣蔵』 「きもの de シネマ」vol.44

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。今回ご紹介する『身代わり忠臣蔵』は、これまでの歴史を覆す勢いで東映が45年振りに手掛けた新たな忠臣蔵。世紀の身代わりミッションの成果やいかに?!

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斬られた兄に成り代わって幕府を騙せ!

節分が過ぎ、芽吹きの気配が感じられる今日この頃。

ごきげんよう、椿屋です。

『超高速!参勤交代』(2014年/松竹)『引っ越し大名!』(2019年/松竹)の土橋章宏氏が原作・脚本を担う新たな時代劇エンターテインメントが誕生いたしました。その名も、『身代わり忠臣蔵』(2/9fri公開)。

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

そう、あの!忠臣蔵でございます。

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

吉例顔見世と同じくらい歳の瀬の風物詩となっている、忠臣蔵。

理不尽に辛抱たまらず、吉良上野介を斬りつけた主君・浅野内匠頭の無念を晴らすため、堪え忍ぶ一年間を過ごした家臣たちが見事仇討を成し遂げる、日本人が大好きな復讐劇です。

これまで幾度となく映像化されて尽くしてきた赤穂浪士たちの悲劇を、ムロツヨシさんの一人二役で喜劇にしてしまったから仰天!

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

上野介と瓜二つという吉良家の五男・孝証は、松の廊下で斬りつけられた兄に化けて、お家存続を死守するというミッションを課せられます。

しかも、本来敵(かたき)であるはずの大石内蔵助(永山瑛太)と秘密裡にバディを組んでしまうなど、ぶっ飛んだ発想からくるトンデモ設定にもかかわらず、時代劇ファンをも唸らせる力技が小気味よく決まりまくって、「そう来るか!」の連続。

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

余談ですが、ムロさんと永山さんは京都を拠点に活躍する劇団ヨーロッパ企画の舞台が原作となった『サマータイムマシン・ブルース』(2005年/東芝エンタテインメント)以来の共演。息の合ったおふたりの掛け合いを微笑ましく眺めてしまったのは、ご愛嬌ということで。

加えて、「あ~そりゃ斬りつけちゃうよなぁ」と納得させる、余裕のないちょっとコミュ下手な”尾上右近版”内匠頭もいじらしくて愛おしかったのでした。

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ムロさん特有のドタバタにピリッとしたシリアス成分がほどよく混ざり合って、一人二役だからこそ生まれる緩急による悲喜が、「もしかして……」と思わせる力を発揮しています

時代ならではの価値観や決まり事に振り回されながらも難局を乗り越えようとするポジティブな姿勢が、明日への希望を抱くようなハッピーさが、これまでの忠臣蔵にはなかった新たなメッセージなのかもしれません。

そして、物語の説得力はキャラクターだけに起因するのではなく、京都の熟練の職人さんが手掛けた豪華なセットをはじめ、京滋を中心とした時代劇の聖地ともいえる名ロケーションでの撮影があってこそ。

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

例えば、冒頭の祭風景。

撮影されたのは日吉大社で、境内の山間に流れている渓流がこのあとの展開に重要な役割を果たします。

ちなみにこのシーン、見物客が身に着ける朱や橙といった色の演出が面白いので、少しお気に留めておいてくださいませ。

命を賭して戦う男たちの陰に強き女あり

バレたら打ち首、良くて切腹という前代未聞の身代わりミッションに奔走する殿方たちを支え、癒し、慰めるのが女たちの存在なのも時代劇の魅力のひとつと言えます。

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

ひとりは、川口春奈さん演じる吉良家に仕える女中・桔梗

本作の、華やか&かいらしい部門の担当です。孝証が秘かに想いを寄せる健気で心優しいマドンナ役を、等身大のやわらかさで表現されています。

次いで、優柔不断な主人・内蔵助を優しく導く妻・りく

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

ときに励まし、ときに労わりながら、よき理解者として内蔵助に寄り添うのは、野波麻帆さんです。『愛を乞うひと』(1998年/東宝)以降、彼女は日本映画界になくてはならない名バイプレーヤーのひとりだと思います。

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

ちなみに、内蔵助が暮らす隠れ家は、岩倉具視幽棲旧宅で撮影されています。物語の世界観を担保する空間が身近に点在しているのも、京都の強み

改めて、映画のまちのポテンシャルの高さにしみじみいたします。

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

さらに、江戸随一の遊郭・吉原で男たちを虜にしている花魁・高尾太夫(橋本マナミ)と、彼女が一目置く遊女・春凪(加藤小夏)の妖艶な二人組。

孝証と内蔵助を繋ぐキーマンとして、ちょいクセの役どころを見事に演じておられます。それぞれのキャラクターに合った衣装もお見逃しなく。

そして本作で最も印象的だったのは、なんといってもクライマックスからエンドロールへの展開です。

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

©2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会

女中として吉良家で働いている間は動きやすい恰好をしていた桔梗ですが、このシーンではぐっと深めに衿を抜いて、しっとりとした雰囲気をまとっているのも素敵です。凛とした着姿が、画面をドラマチックにしているように感じました。

広く長い階段をふたりが並んで下りてゆく様子が、その先の未来を暗示しているようで、余韻あるラストシーンになっています。

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