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和と洋が織り成すフィルム・ノワール 『リボルバー・リリー』 「きもの de シネマ」vol.32

和と洋が織り成すフィルム・ノワール 『リボルバー・リリー』 「きもの de シネマ」vol.32

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。この夏の酷暑をも吹っ飛ばしてくれる、美しきダークヒロインの爽快ガンアクションをご覧ください。

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2023.06.28

よみもの

大一番の舞台に、師匠の帯で挑む 『絶唱浪曲ストーリー』 「きもの de シネマ」vol.31

和と洋が交ざり溶けあう魅惑の世界観

お暑うございますね。ごきげんよう、椿屋です。

ひと月にわたる祇園祭を終え、五山の送り火を間近に控えた京都では、おしょらいさん(お精霊さん)をお迎えする支度が行われつつあります。

今回は、お盆休みのスタートとなる「山の日」8月11日(金)に封切りされる”純愛ピストル・オペラ”(原作者である長浦京氏の言葉)、綾瀬はるかさん主演の『リボルバー・リリー』について紹介してまいりたいと存じます。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

舞台は、第一次世界大戦と関東大震災の爪痕がまだ癒えない1924(大正13)年の帝都・東京。

謎の男たちに屋敷を襲撃された細見慎太(羽村仁成)が、命からがら脱出し、父・欣也(豊川悦司)の言葉に従って、東京・玉の井を目指すところから物語は始まります。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

かの地にあるカフェー『ランブル』にいる小曾根百合(綾瀬はるか)を頼りとするため飛び乗った汽車で、彼はリボルバーを巧みに操る凄腕の女性に助けられ、彼女が小曾根百合だと知るのです。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

ときに感情的に、ときに冷静に。次々と繰り広げられるアクションや殺陣のシーンの数々。

狭い車内、桟橋、池の中、霧の中……と、さまざまな状況でドラマに寄り添ったアクションが創られました。中でも、最大の見どころは凄絶かつ華麗なガン・アクション。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

初のアクション大作に挑むにあたって、行定勲監督は「“アクションとはコミュニケーション”という意識で向き合った」といいます。

外連味を巧みに取り込んだVFXや、リアルとファンタジーを見事に混在させたセットなど、大正という時代を表現するにあたって造り込まれた世界観は、見事というほかありません。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

また、モダンな街並みには、ときとして台詞以上に説得力をもたらす美術の力が発揮されている点をお見逃しなきよう。

注目してほしいのは、戦闘服となる百合のドレスを仕立てる滝田洋裁店の天窓から届く光や、百合のサポート役である弁護士・岩見良明(長谷川博己)の半地下になっている事務所の窓から見える風景。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

さらには、実際の映像をベースに当時の風景や建物をCGやミニチュアを使って合成した画面効果も素晴らしく、没入感を高めてくれます。

和洋ミックスの世界観を徹底的に構築したプロフェッショナルの技を、とくとお愉しみください。

大正モダンあふれる衣装とヘアメイク

和洋ミックスで最も大切なのは、やはりコスチューム!

身につけるものが着物から洋服へと移行する大正時代ならではの絶妙なバランスにうっとりするキモノ好きも少なくないでしょう。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

戦いのシーンでは洋装の彼女。黒澤和子さん率いる衣装デザインチームは、何度も話し合いを重ね、現代のNO.1ホステスのような、玄人っぽい空気感をテーマに、当時、欧米で流行していたフラッパーの要素を取り入れ、黒・白・シルバー・シャンパンゴールドといったイメージカラーで大人の色気を加えています。

濃いブルーに染めた着物に手描きで百合柄を描いたり、ドレスに百合の刺繍を施したり。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

動きやすさを重視しつつも、レースやスパンコール生地を使ってエレガントなシルエットに。帽子やネックレスなどの小物は当時の時代感と小曾根百合というキャラクターを意識してコーディネートされています。

激しいアクションシーンでもどこか優雅さを感じるのは、彼女の服装ゆえ。衣装の力は偉大です。

また、彼女らしさを最も表しているのが、繊細なカールが美しいショートヘア。

撮影当初はウィッグを使おうとしていたものの、アクションシーンが多く、キープが難しいという話になった際、『切っちゃいましょう』と綾瀬さんがおっしゃったとか。それによって、激しいアクションで乱れるときもリアルな動きを出すことに成功しているのです。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

わたくしが、初めて予告動画を拝見したときに、一番目を奪われたのは、カフェ―「ランブル」の従業員・奈加を演じるシシド・カフカさんが、ライフルを自在に操るお姿でした。

しかも、着物で。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

別のシーンでは、中国の民族衣装っぽい服装で百合を援護。

隣では、同じく従業員の琴子(古川琴音)が、カラフルな戦闘スタイルで散弾銃を撃ちまくります。ふたりの凸凹感も必要不可欠で、物語に奥行きをもたらしていると言えるでしょう。

個性派の男性陣は背広に蝶ネクタイやパナマ帽、軍服といった格好が多く、それはそれで萌え要素なのですが、百合を狙う謎の男・南始(清水尋也)が縁日で見せる着姿も悪くありません。

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

© 2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

粘着質な男がとてもお似合いで、最近気になっている役者さんのひとりです。個人的嗜好にて、失礼いたしました。

夏休み、肉体的にも精神的にも酷暑から逃れるため、劇場にて本作をご覧くださいませ。

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