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草履の革命児 華麗なるカレンブロッソの秘密 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.19

草履の革命児 華麗なるカレンブロッソの秘密 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.19

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気づけば増えるカレンブロッソ、きものファンなら「分かる!」という方は多いはず。そのおひとりでもある古谷さん、人気の秘密を探るべく大阪・谷町の本店まで廣田裕宣社長を訪ねました。

2023.09.04

よみもの

ちょっと贅沢がお洒落なり。紋紗のコート 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.18

「カフェぞうり」とは! そうきたか、な商品力

20年ほど前、最初に「菱屋カレンブロッソ」なる草履を見たとき、カジュアルきもの派の下駄草履ね……と一瞥していた私。

ところが今、きものの日の足元は、ほぼほぼカレンブロッソという愛用ぶり

履きやすい、軽い、疲れない、少しくらいの雨もへっちゃら、割合とお手頃価格、と五拍子も揃ってしまう!

加えて「カフェぞうり」という秀逸なネーミングで新時代の草履文化を形成したとも言える、一度履いたらやめられないカレンブロッソくん。

開発秘話を伺いに、大阪・谷町の本店に廣田裕宣社長を訪ねました

廣田裕宣社長

株式会社菱屋 廣田裕宣社長

3代目 廣田社長の心意気

「菱屋」の前身は現社長の祖父が起こした「廣田一栄商店」で、草履の鼻緒のみを扱う店だったそう。

その後、奉公先だった菱屋からのれん分けされて菱屋の屋号を受け継いで、約100年。初代から一貫してオリジナルにこだわってきた歴史があります。

谷町の本店にて

3代目 裕宣氏は高額年収で知られるキーエンスに就職、編集プロダクションを経て30歳目前で家業に携わるようになったという経歴の持ち主。もともと展開していた和装品のシリーズ「花ごよみ」から「calender of blossom ⇒ カレンブロッソ」と、洒落たブランド名にしてしまう発想も(同業者だけに)納得です。

そんなイメージ優先商品の雰囲気がありますが、これだけ多くの人に愛用されるのには秘密があるはず……

古谷:私は3足持っていますが、初期のものからソールが変わりましたよね?

廣田:はい、はじめはクレープソールを使っていたのですが4、5年前からビブラムソールにしました

シマウマ柄のビブラムソール横

古谷:ビブラムソール!男性誌編集者時代にさんざん原稿を書きました。

イタリアの世界的なアウトソールのメーカーで、登山家が開発したラバーソールですよね。いまやファッションシューズからスポーツシューズまでビブラム率高しです。

廣田:ビブラムソールに変えて、3割ほど軽くなりましたね。わかります?シマウマ柄。うちのブランドアイコンであるシマウマをこんな素敵な模様にしてくれたんです!

シマウマ柄のビブラムソール裏

シマウマ柄のビブラムソール

古谷:ほんとだー。しかもかかとがカットされているんですね。

廣田:ここをカットすることで跳ね上げ防止になっているんです。

古谷:わー、そこまでは見ていなかったです!カレンブロッソはある意味、草履の概念を脱ぎ捨てたことで成功したと思うのですが、よく思い切りましたね。

廣田:2001年くらいに和がベースの洋装バッグを先に作って、当時東京のファッション基地と言われた自由ヶ丘で販売していました。

外国人の方も多いのでサンダルのような草履も作ったら「これ、きものに履いてもいいの?」と言われたのがきっかけです。欲しい人がいるなら作ってみようと……(笑)。

現在展開中の草履サンダル

現在も展開する草履サンダルは、左右鼻緒の位置を変えてあり海外向けにも

カレンブロッソの草履は、従来の草履と素材も仕組みも新しい発想のもとに作られています

普通の草履は、コルクの台に革素材、鼻緒の紐を底まで通してすげる、のが主流。

対して、コルクよりも弾力性に優れるEVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー スポーツシューズに使われるもの)を台に使用、天で鼻緒を止めるため、一部の商品を除いて、すげ替えやすげの調整ができませんが、そこを思い切って諦めたところが画期的と言えます。

素材開発が好きという廣田裕宣氏

素材開発が好きという廣田裕宣氏。次々とアイデアが

廣田:東北の方から「冬に鼻緒が凍らなくていい」と言われました。雨草履として作っているわけではないですが、底がゴム素材で穴が空いてないので、雪の降る地域に喜ばれましたね。

それと、天の素材を探していたときにファニチャー素材に出会ったのが大きかったですね。伸びる、滑らない、色が落ちない、微妙なカラーバリエーションが揃う……カレンブロッソのファッション性に一役かってくれていると思います。

古谷:そうなんですよね、カレンブロッソの魅力はきものの足元のお洒落の解放というか、自由度があるんですよね。色も素材もいろいろで、見ているだけで楽しいです。

素材サンプル
シマウマ柄の印伝

廣田素材の開発が好きなんですよ。秋にはシマウマ柄の印伝が登場します。

この琳派のシルバーシリーズ、秀逸でしょう?琳派の屏風の箔の雰囲気がすごくよく出せたと思って、とても気に入っています。

草履とバッグ

本店は工房も兼ねていて、敷地内で職人さんが各パーツを製作しています。ちょっとだけ見学させていただきました。

昔ながらの金型。

ファニチャー素材から天を切り出す、昔ながらの金型

どの作業も手作業が多く、天の微妙なカーブの作り方など職人さんの手の感覚が生かされていることがわかります。

ミシンと手縫いで鼻緒に。

細く切られた布をミシンと手縫いで鼻緒に

革素材を織り込んだ鼻緒は機で手織り。

革素材を織り込んだ鼻緒は機で手織り

手元

若い女性の職人さんが多くてなんだかうれしくなります

天の貼り付けも手作業

天の貼り付けも手作業でひとつずつ行っています

鼻緒を天にすげる

鼻緒を天にすげるところが画期的

デザインの自由度が一番の魅力!

人気商品だけに、”みんなが持っている感”のあるカレンブロッソ。

じつは私の3足のうち2足は六本木一丁目の某店で開催されたオーダー会で作ったもの。

そう、オリジナルです(自慢)! 

カレンブロッソ

台を選び、天と鼻緒・前つぼをチョイス。選んでいる時間が楽しくて仕方ありません。

このオーダーは大阪・谷町のカレンブロッソ本店以外は顧客管理が煩雑なのであまり実施されていない、つまりお客さんに向き合ってくれるお店でしか開催されません。また実施される店舗によって選べる鼻緒のバリエーションが違います。

私の4足目は、10月6日から開催される京都きもの市場 横浜店のカレンブロッソオーダー会で!と目論見みは尽きません。

廣田社長と

大阪・谷町の町並みに「うだつが上がらない」のうだつをみつけて。廣田社長、お忙しいなかありがとうございました!

撮影/スタジオヒサフジ ※扉写真のぞく

Instagram取材、リアルなオーダー草履拝見!

今回はせっかくなので、Instagramのストーリーズにてカレンブロッソについてのアンケートを実施。実際にオーダーを楽しんだ方々の声をちょっとだけお届けします。

Yさま

提供/Yさま

提供/Yさま

はじめてのカレンブロッソだったのでベーシックなものを選びました。

台が汚れるのが嫌で、少し濃い色のベージュ、天はベーシックで使いやすいグレー、鼻緒もグレー系にあわせました。

とても贅沢をしましたが結果的に一番使う履物になりました。”The ベーシック”にすると人とかぶることも多いので、オーダーをおすすめしたいです。

TMCYLWさま

提供/TMCYLWさま

提供/TMCYLWさま

着物の残り生地を使って鼻緒をオーダーしました。

前つぼは似たような色を好みで選び、台座の色味も秋に似合う色に。おしゃれは足元から。着物の余り布の活用、おすすめです!

HOMIさま

提供/HOMIさま

提供/HOMIさま

提供/HOMIさま

提供/HOMIさま

すでに4足持っているので、今回のオーダーは「黒台」に天は「黒のスターダストウォール」鼻緒は「博多織 × ラメ」裏地と前つぼは「白」という攻めた感じに。

ほかのものとも被らず、セミフォーマル用でも対応できる一足に仕上がる予定。履きやすさがお気に入りです。

まりきちさま

提供/まりきちさま

提供/まりきちさま

憧れのカレンブロッソ、前々から素敵だなぁと思っていたので、せっかく購入するならとっておきを!とオーダーしました。

日頃シックな着物が多いので、差し色に赤い草履が欲しい!けど、甘すぎないようにと黒の鼻緒&台に。 オーダーならではの色のチョイスが出来るのが魅力的です。

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