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スタイリングでより着物を愉しむ 「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –

スタイリングでより着物を愉しむ 「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –

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着物はほぼ直線長方形の長着に帯。洋服のように肌の出る面積やシルエットが変わるということはなく、着ただけで個性が際立つものではありません。それでも、選ぶ着物と帯の好みや傾向であったり、半衿の出し方、衣紋の抜き加減ひとつでも、その人なりの着こなしとなり個性があらわれます。

今年も残すところあと2ヶ月。
世界中が新型ウィルスに翻弄されるままに1年が過ぎようとしています。
台湾もようやく気温が下がり、いよいよ南国にも冬(秋)の気配を感じるようになりました。

着物の格と文化

海外など、着物に詳しい人がいない(少ない)中で着物を着る場合、2つの道があります。
ひとつは常識、ルール、慣習、文化としての側面などを一切無視して、とにかく自由に着る着かた。
もうひとつは、年齢や立場、TPOに合わせて、季節や格を意識した着かたです。

どちらが良い悪いということではなく、事実として存在しています。
民族衣装としての側面から考えたら、世界的にも珍しいことですね…

インドのサリーも洋服におされ日常から離れていますが、日常に着る人ももちろんいらっしゃいますし、「式典には着る」という形は日本の着物と同じ状況です。
ですが、インドのサリーを外国人が他の国で愛用し、日常的に着ているのは見たことがありません。

実は私もインド人の友人から美しいサリーをプレゼントしていただいたことがあるのですが、着方がわからないのと、いつ着たらよいものか…
着る方法、着る場所、決まりごとが分からないのは、民族衣装の特徴なのかもしれません。
そう考えると着物は、極東の小さな島国の民族衣装でありながら、ひとつのファッションアイテムとして世界に広がっているのはすごいことだとあらためて感じます。

何をどう纏うかはその人の範疇で自由なのは大前提ですが、いち民族衣装であるため、知らずに纏うことでタブーや失礼があってはいけないと考えるのはごく普通の感覚だと思います。

反面、異国の布や装飾の美しさを身につける高揚感もあります。
着物が世界的に広がっているのは、文化的な側面からの決まりごとや正統さにおける美意識もその理由のひとつであると私は思っています。

決まりごとの中でも、日本人にとっても難しい印象があるのは「格」です。

Twitterで、ある方が「格」とは「用途」のことだと呟いていらっしゃいましたが、とてもわかりやすい例えだと思いました。
いつ、どんな場面で着るものか。
結婚式用、お葬式用、お出かけ用、普段着用…洋服と同じですね。

「格」とはフォーマル度の指針になるもので、正装の場合は紋が付きます(振袖はのぞく)。
そして、紋の数によってフォーマル度は上がります(今はなかなか正装する場面も少ないですね…大抵のお祝いごとは準礼装・略礼装で間に合うことが多いです)。

次に「柄付け」。
大雑把に言えば、柄がどう配置されているか、またおめでたい柄か否かなど。
そして合わせる帯の長さ、その素材や柄、トータルで「格」が決まります。

高価な着物だから、格が高い着物というわけではないのです。
また、正絹か洗える素材かだけでの判断もできません。
正絹の小紋とポリエステルの訪問着では、ポリエステルの訪問着の方が「格」は上になります。

海外でしたら、何を着ていても何がその場にふさわしいのか分かる方も少ないですが…知っていて損することはありません。
普段、好きなものを好きなように着ていても、着物という日本の伝統衣装にはシーンに合わせた着こなしがあり、文化としての側面もあります。
着物は季節を楽しむ(楽しませる)ものであり、身分・立場・敬意・謝意・弔意を表せる衣服なのです。

テーマを決めたコーディネート(過日のハロウィンの様子)

台湾でのハロウィンの様子
台湾人・心琁さん提供

台湾では、ハロウィンは本来通り、子供のためのイベント日です。
自宅の近所では、可愛らしく仮装した子供達が、塾などの会場を回り、お菓子をGETしていました。

塾側も本気で盛り上げているのが伝わります。

塾側もハロウィンの為に本気で盛り上げてくれていました
筆者撮影・学習塾
16名で着物でハロウィンを開催!

大人が仮装する風習のない台湾で、ようやく着付けが1人でできるようになった生徒さん方と私の着物仲間あわせて16名で、”着物でハロウィン”と題した食事会を開催。
日本人・台湾人それぞれが、ハロウィンカラーや小物をどこかにとり入れたコーディネートで集まりました。

やはり、これだけ着物姿が集まると華やかですね!
コスプレイベント感も否めませんが(笑)
何か目的やテーマを決めて着物を着るのも、楽しいものです。

これから、クリスマス・忘年会そしてお正月と、1年の大きな終わりと始まりに向けてイベントが待っています。
コロナ禍中、十分に注意しながら小人数でも、オンラインでも、着物を着る機会として集ってみませんか?

私のコーディネートの組み立て方

さて、私はイベント以外でも、着物や帯の合わせ方だけでなく、髪型やメイク、足袋や草履など足元までのトータルでバランスを考えてコーディネートを組み立てています。
常に1番頭を悩ませるのが…髪型です。

まず大きな面積となる着物(長着)から決めますが、行く場所と目的、ご一緒する人の有無、季節天候気温などから何を着るかを考えます。
次に帯と半衿です。
帯が先か半衿が先かは気分ですが、着物と帯と半衿を決める時に髪型まで考えてトータルのイメージを作ります。

はんなりで上品系なのか、モダンかつシック系にするのか、ポップにするか、モードっぽく個性系にするのか、またはアンティーク、コテコテ系なのか…
あくまでも自分自身の中にあるイメージで、一般的に分けられるカテゴリとは異なるかもしれません。その点はざっくり、暖かい広い心で受け流して下さいませ(苦笑)
そして、この「○○系」の決め手となるのが、髪型とメイクだと思います。

「はんなり」の時には和髪アレンジが多く、「モダン」な印象を作るには直線的なラインを意識します。

はんなり時の時の和髪アレンジ
モード系にしたい時にはウイッグを使ったりします

「モード系」にしたい時にはウィッグを使ったり強めメイクにするなど、「はんなり」の時とはあきらかに異なるスタイリングにします。

アンティーク着物を着た時には髪型もフィンガーウェーブにするなど、クラシカルなスタイルに近づけるよう頑張っています。
これが難しく、毎回納得がいく仕上がりにはなりません。

着物はほぼ直線長方形の長着に帯。
洋服のように肌の出る面積が変わる、シルエットが変わるということはなく、着ただけでその方の個性が際立つものではありません。

それでも「着物を着た人」同士の中では、誰もがその人なりの着こなしで個性があらわれます。それは、選ぶ着物と帯の好みや傾向であったり、半衿の出し方、衣紋の抜き加減ひとつでも違ってきます。
単に「着物を着た人」なだけではなく、髪型も含めてトータルでその人が「着物を○○のように着こなしている人」になったりするのです。

私はこの部分が楽しくて楽しくて。
それが着物の持つ魅力であり、私が着物にハマった理由のうちのひとつとなっています。
もちろん日々「着るもの」なので、いちいち考えたり変えたりしないのよ、という定番のスタイルをお持ちの方もいらっしゃると思います。
そういう方を見るたびに、力が抜けていて、自然体でステキだなぁとも感じています。

茶道の時に華美になるのを避けるのもひとつのスタイル

そうそう、ご存知かとは思いますが「茶道」の時には華美になるのは避け、またお道具を傷つけたりもしないよう、指輪や時計・かんざしなどはしません。
お気に入りのパールのイヤリングもこの時ばかりは外します。
半衿や足袋も白。
それもひとつのスタイルとして楽しんでいます。

先日は「炉開き」でした。
茶道の世界では、炉を開けて初夏に摘んで寝かしておいた新茶をいただくなど、新年にあたる節目の行事です。
社中にもよりますが、この時ばかりはお祝いムードとなり、紋付の色無地や訪問着に華やかな袋帯などをお召しになる方が多いです。

私は控えめに一つ紋の色無地に菊の刺繍が華やかな袋帯を選びました。
菊は「健康・長寿・厄払い」の意味を持つとされていますので、新たな年に願いを込めて。

現在そして未来、私も年齢や経験によって、好きなものやスタイリングは変わっていくと思います。

それぞれ自分のライフスタイルに合った楽しみ方ができるのが「着物」なのです。

控えめに一つ紋の色無地に菊の刺繍が華やかな袋帯

『KIMONOanne.vol.2』に掲載されます

個人的趣味で、髪型からこだわる着物コーディネートを備忘録としてInstagramに記録しています(https://instagram.com/hirokimonon)。
ありがたいことに、私のコーディネートを好んで下さる方も多く、また企業様からのお仕事のお話もいただけたりしています。

そのうちのひとつで、11月16日に発売される『KIMONOanne.』という雑誌に私の写真が載ることになりました。

着物ヘアスタイル特集のページだそうです。
自分自身のこだわりどころでしたので、プロの方のお目にとまったことは光栄でうれしいお話でした。
みなさまにもぜひご覧になっていただけたら幸いです。

☆コラム最後に、読者プレゼントのお知らせがございます!

台湾の古きを活かすリノベーション術

秋が深まり、台湾は1年で1番快適なシーズンを迎えました。これから3月までは「冬」ですが、気温も20度前後と心地よく、10度以下になることは稀です。
待ちに待った、袷着物が十分に楽しめる季節です。

台湾には日本統治時代の古い建物をリノベーションして、古さをお洒落な雰囲気に上手に変換させた場所がたくさんあります。
そしてそれらの建物は、文化施設やアート展示場、若者に人気のカフェやレストランとして生まれ変わり、しっかり活用されています。

古い重厚なもの、斬新で新しいデザイン、どちらの背景にもステキに決まるのが着物姿だと思います。

36年間も閉ざされていた新竹州図書館

過日、台北市から新幹線で1時間ほど離れた新竹市に行ってまいりました。

新竹市は台湾北部の都市で、首都台北市の南西に位置します。
豪華絢爛な『新竹城隍廟』と、その周囲に立ち並ぶ食べ物の屋台で有名です。
近くには、19世紀に作られ、街への入口として使われた『竹塹城迎曦門』があります(Googleより引用)。

ちょうど、36年間も閉ざされていた新竹州図書館が期間限定で参観できました。
図書館と言っても日本統治時代に作られた建物で、建物自体にも大正の美が感じられました。
現在は図書館としての利用はされておらず、古いものの展示と、最新のVRが導入されていて当時の様子を見ることができました。

外壁やガラス窓、照明器具など…
本当に時代が止まったかのようなのに、最新機器が導入されていたりと、台湾の古いものを活かしてリノベーションする技術や、歴史への敬意をあらためて実感しました。

日本統治時代の建物は、台湾のあらゆる地域に残っています。
今回は新竹でしたが、台北の街にもたくさんの見どころがあり、台北市はこじんまりしていますので、30分も移動すれば目的地から次の目的地に到着できます。

また観光に来られるようになりましたら、日本統治時代の美しい建築物を着物で巡る計画を立てられてはいかがでしょうか。

日本統治時代の美しい建築物を着物で巡るのはいかがでしょうか

読者プレゼント

『KIMONOanne.』編集部より『きものと』読者のみなさまへ、プレゼントのお知らせです!
本コラムの公開日である11/16に発売となりました『KIMONOanne.vol.2』を5名様へ。
下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ!

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※応募期間:公開日~2020年11月30日(火)

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