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投扇興(とうせんきょう)を楽しむ! 【扇子のギモンを解決! vol.5】「きくちいまがプロに聞くシリーズ」

投扇興(とうせんきょう)を楽しむ! 【扇子のギモンを解決! vol.5】「きくちいまがプロに聞くシリーズ」

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きくちいまさんがプロに聞くシリーズ「扇子編」も、いよいよ今回が最終回。最後は、みなさま一度は聞いたことがあるのでは…?という「投扇興(とうせんきょう)」にいまさんがチャレンジ!ゆらり?こつん?!さぁ、ぜひ一緒にお楽しみくださいませ!

扇子の動きが物事を表情豊かに伝える

きくちいまさんが「プロに聞く」シリーズ、扇子編。vol.1~3で基本をおさえたところで、いよいよ応用編へとまいります!扇子はもともとメモ?動きで思いを伝える?お宮参り用の扇子の正しい作法、そして江戸時代のアイドル”地紙売り”とは!?元気いっぱい大西常商店の四代若女将・大西里枝さんが、今回も楽しくお話しくださいます!

プロに聞くシリーズ、扇子編最終回!

きくちいまがプロに聞くシリーズ・扇子の疑問を解決!

vol.1(扇子の種類)
vol.2(扇子のルール)
vol.3(扇子の”ちょい技”)
vol.4(扇子のマニアックなお話し)
と、「きくちいまがプロに聞くシリーズ」扇子編、お楽しみいただけましたでしょうか。

今回でいよいよ最終回。最後はお楽しみの回です!

「投扇興(とうせんきょう)」の名前は知っているものの…どういう遊びなの?!という方、ぜひご覧くださいませ。

投扇興のひと揃い
こちらが「投扇興」のひと揃い。扇子もお箱も美しい

投扇興はフレミングの法則!?

大西常商店:大西里枝(以下、大西)
―――ほな、ここらで投扇興してみましょうか。

  きくちいま(以下、いま)―――
  扇子を投げて遊ぶんですよね。実際に見るのは初めてです。

投扇興を習ういまさん

大西―――
今日は見るだけやないですよ。実際にやってみな面白さはわかりません。
まず畳の上に緋毛氈を敷いて、真ん中に台を置き、その上に蝶と呼ばれている的(まと)を設置します。緋毛氈のはじっこに座って、開いた扇子を投げて点数を競うゲームです。
扇子の持ち方は、右手で作るフレミングの法則、みたいな感じ。

扇子の持ち方は、右手で作るフレミングの法則
扇子の持ち方は、右手で作るフレミングの法則

  いま―――
  懐かしい~。フレミングは左手でしたよね。電気、磁力、発熱みたいな。

  編集―――
  そんな感じでしたよね。(ググりました)…いまさん、全然違いました!中指が電流、人差し指が磁界、親指が力だそうです。しかも右手の法則もあるとか。

  いま―――
  あら、理科の先生に申し訳ないけど習った記憶がないわ~(笑)とりあえず形だけは覚えておりましたので今日のところはセーフってことで。

大西―――
この手の形に、広げた扇子を置く感じです。扇子のおしりは親指で触れるようにおさえて。はい、そのまま前に肘を伸ばすようにして飛ばす!

  いま―――
  先生、飛びません!

大西―――
練習あるのみです。

投扇興を楽しむお二人

  いま―――
  えいっ!

  編集―――
  あっ、飛びましたよ。でも的に当たっただけか~。

大西―――
「ゆらり」ですね、2点です。編集さんもやってみてください

投扇興

  編集―――
  えいっ!あっ、やった~!台に当たりましたよ!

大西―――
「こつん」ですね、マイナス2点です。

  編集―――
  ええっ、マイナスとかあるんですか!点数表、見せてください。

投扇興の点数表
こちらが投扇興の点数表

  いま―――
  明石、夕霧、浮舟、末摘花、花散里……
  扇子と蝶(的)の落ちた形が源氏五十四帖になっているんですね。どの形がなんて名前か、その点数も、これを見たらわかるわけか。

大西―――
たいていみなさん、「こつん」か「ゆらり」ですよ(笑)

  いま―――
  そういわれると…

  編集―――
  がんばりたくなっちゃいますね!

  いま―――
  あっでも、台も蝶もどちらも倒したら「野分」でマイナス30点とは…!勢いまかせでもダメっていうことですね。

こんなの無理!高得点は笑うしかない難易度!

編集―――
  高得点を狙いましょう。最高得点はどんなものですか?

大西―――
「夢浮橋」ですね。100点です。でもわたしも一度も見たことがないです。

投扇興の得点表

  いま―――
  「夢浮橋」、ちょっと作ってみましょう。
  えーと、台から蝶が落ちた状態で、蝶が倒れずにきちんと立っていて、台と蝶の間に扇子が橋のように浮いて……こんなの無理です!

  編集―――
  じゃあ、次に高得点の「胡蝶」はどうでしょう。85点ですよ。
  えーと台の上に扇子が落ちずに乗っていて、その上に蝶が乗る……???どういうことですか、こんなの無理です!

投扇興「胡蝶」

  いま―――
  (点数表をじっと眺めて)源氏物語ではお笑い要素の「末摘花」が5点なのに、心優しき「花散里」が3点っていうのが納得いかない。

  編集―――
  そんなこと言ったら「明石」が20点なのに「若紫」は15点です。

  いま―――
  紫の上、正室格なのに……

大西―――
お座敷遊びのものですからね~(笑)

一家に一台投扇興!

  いま―――
  なるほど。エンターテイメント要素でつけられた点数表なら納得です。ところで、大西さんは投扇興のプロですよね。さぞや素晴らしい投げっぷりなのでは!?

  編集―――
  ぜひお手本をお願いします!

大西―――
しょうがないなぁ。では。

(…と言って、なんと、おしりを浮かせて前のめりになり、かなり的の近くから扇子を投げる)

近くから扇子を投げる大西さん
大西さんはなんと、おしりを浮かせてかなり近づいて扇子を投げます

  編集・いま―――
  えー!!!ずるい!!

大西―――
おふたりともきちんと座ってはるなーと思てました(笑)

  いま―――
  言ってくださいよ~!(笑)

投扇興・夕霧

  編集―――
  倒れた蝶の上に扇子が覆いかぶさっている……ということは、「夕霧」5点ですね。

  いま―――
  ……これは面白い。一家に一台必要なのでは?トランプ感覚でできますよね。

  編集―――
  お正月のかるたの代わりに投扇興っていうのも楽しそう。

大西―――
たまに一式買って帰られる方もいらっしゃいますよ。

  編集―――
  ちなみに一式おいくらなんですか?

大西―――
箱の細工によっても金額が変わるんです。金蒔絵になると高くなりますね。いいものですと4万円くらいします。

投扇興のセット

  いま―――
  でもこれ、きもの屋さんのイベントにあったら面白いかも。わたしは絶対にやる。

  編集―――
  いまさん、家で自主練しそうな勢いですね(笑)

扇子アンバサダーに就任!

  いま―――
  それにしても、扇子一本でいろんな話が出てきましたね。

  編集―――
  わたしは扇子を挟む場所が左側ならどこでもいいとわかったのが収穫でした!(→vol.1参照

大西―――
それでも、普段づかいのときは斜め、礼装用の末広はまっすぐに挿すのがきれいみたいですよ。

扇子の長さについて

  いま―――
  でも、帯の前幅は4寸なのに、末広は6寸でその差は2寸!?……8㎝近くも出てしまうのはおかしくないかな。
  ……あっそうか!帯は鯨尺(くじらじゃく)ですが、扇子は曲尺(かねじゃく)でしたもんね。

大西―――
帯幅4寸は鯨尺で15.15㎝、末広6寸は曲尺で18.2㎝。その差は3.05㎝ですね。

  編集―――
  それなら納得です。まっすぐ挿しても下から出ることはないですもんね。

  いま―――
  ふだん使う扇子の6寸がもっと世に出てほしいです。それにはきもの人口をもっと増やさないと。扇子アンバサダーとしてがんばります!

  編集―――
  いまさん、扇子アンバサダーだったんですか?

  いま―――
  はい、勝手に名乗ることにしました。でもこうやって、扇子を取り巻く文化があって、扇子を作る職人さんたちがいて、お店がある。もっとみんなに知ってほしいし、使ってほしいと思います。
このたびは本当にいい機会をいただきました。ありがとうございました!

大西常商店のたくさんの扇子の前で

シリーズ第二弾もお楽しみに!

大西常商店の前で談笑するお二人

以上で、きくちいまがプロに聞くシリーズ「扇子の疑問を解決!」を終了します。
さてお次はどんなプロに聞こうかな~。

次のシリーズをどうぞお楽しみに!

「きものと」に連載中のイラストエッセイもどうぞご覧ください。

雛祭りコーデで春を謳歌する!

きくちいまさんのレギュラー連載はこちら!
「きくちいまが、今考えるきもののこと」

(リリース情報は各種SNSよりどうぞ。)

撮影/スタジオヒサフジ

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