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”神無月(かんなづき)”と”神在月(かみありづき)” 「3兄弟母、時々きもの」vol.12

”神無月(かんなづき)”と”神在月(かみありづき)” 「3兄弟母、時々きもの」vol.12

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8月は葉月、9月は長月…このあたりは実際の季節のイメージにぴったり。 でも10月の「神無月」は、なんでこのような呼び方をするのか不思議に思ったことはないでしょうか?

2022.08.26

まなぶ

テーマは菊!9月のお節句って? 「3兄弟母、時々きもの」vol.11

きものとをご覧のみなさまこんにちは。tomekkoです。

なんだか今年は夏が短かったような…?ここ数年は猛暑が9月、10月まで続き、その後突然寒くなるという印象でしたが、今年は少し秋めいた風を、9月に入るころから少しずつ感じられたような。

わが家のある場所は山なので、夜になると鈴虫の大合唱が…情緒というにはちょっとアレなレベルです(笑)

さて今回は幼少期の思い出から、10月のお話しをしたいと思います。

日本のカレンダーの読み方ってステキですよねぇ…和風月名(わふうげつめい)というんですって。

8月は葉月(はづき)、9月は長月(ながつき)…このあたりは実際の季節のイメージにぴったり。

でも10月の「神無月(かんなづき)」は、なぜこのような呼び方をするのか不思議に思ったことはないでしょうか?

実は私、幼少期の思い出で忘れられない独特な行事があるんです。

わが家は神道で、商売もしていたので祖母の部屋には商売繁盛の神様、恵比寿天・大黒天が祀られていました。

信心深い祖母は、毎朝神棚とは別に恵比寿天・大黒天のお水やお供えも替えて欠かさずお詣りもしていたのを覚えています。

恵比寿天・大黒天が祀られる

いつもは、メインの神棚とは違う水回りの隅っこに祀られている恵比寿天・大黒天。でも10月のある日だけは、祖母の部屋のテーブルに飾られ、尾頭付きの鯛の塩焼きや御神酒に各種ご馳走が並ぶんです。

とても不思議な光景で、幼稚園か小学生だったか曖昧ですが、その頃に「神無月」は出雲でのみ「神在月(かみありづき)」と呼ばれていることを知りました。

出雲地方では、旧暦10月10日から17日までの間は、全国から出雲大社に神々が集合するためお迎えする行事やお祭りなどをするそうなのです。

だいたい”神様たちが集まる”って、なんだかジブリ映画を彷彿とさせてファンタジックですよね。

人間臭い神様

そして何よりおもしろいのは、神様にも”集まりに呼ばれる神様”と”呼ばれない神様”がいるっていう発想。

一神教では”神は万物を司り全知全能”なので、こんなことはあり得ません。

日本はじめ多神教の考え方って人間の実社会ともリンクしていて、とても人間臭くて個人的に好きなんです。

そういえば大学時代、服飾史研究の中でちょっと民族学的な部分に首をつっこみまして、“境界の神様“である「道祖神(さえのかみ)」を知りました。

昔からあるような分かれ道などの角に、石碑や小さなお社を見かけたことはないでしょうか?

道や物事の境界や村・集落などの入り口(中と外との境界)、さらには性差のようなジェンダー的境界を守る神様でもあります(後に転じて性愛の神として認知されるようになりました)。

“境界の神様“である道祖神

この道祖神もまた、神無月には出雲にお呼ばれしないようなのです。

私の理解では、神様たちにも序列があり、身分の低い神様は呼んでもらえないんだと思っていました。

でも今回あらためて調べてみたところ、どうやら出雲大社に呼ばれるのは「国津神(くにつかみ)」と言われる”山河など国土を守る土着神”なのだそうです。

もともと高天原におわした「天津神(あまつかみ)」のほか、かまどの神や恵比寿・大黒天のような商売の神…つまり人々の生活を守るような神様は出向かないんですって。

※高天原(たかまがはら、たかあまはら、たかあまのはら、たかのあまはら、たかまのはら):『古事記』冒頭「天地(あめつち)のはじめ」に登場する神々の生まれる場所

身分や序列、という捉え方もあるけれど、実際にはその神々が離れてしまうとその期間生活が成り立たないような神様は出張はできない、ということなのかもしれませんね。

昔の人々の生活にとっていかに神々が身近な存在だったのかよくわかりますね。

夢広がる秋の夜長の神々

私はまだ出雲大社へお詣りに行ったことがないのですが、せっかくなら国中の国津神のいらっしゃる10月に行ってみたいなぁ!!

『古事記』で読んで以来ずっと好きな木之花佐久夜比売(コノハナサクヤヒメ)と石長比売(イワナガヒメ)姉妹や、剛毅な須佐男命(スサノオノミコト)と櫛名田比売(クシナダヒメ)夫妻などなど…

夢広がる秋の夜長の神々のお遊び。

なかなか出雲大社までは行けなくても、こんな夜は古事記を開いて、身近でありながら浪漫いっぱいの日本の神々に会いに行ってみるのも良いかもしれませんね。

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