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披露宴に花を添える装い『ウェディング・ハイ』「きもの de シネマ」 vol.10

披露宴に花を添える装い『ウェディング・ハイ』「きもの de シネマ」 vol.10

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。今回は、とある披露宴会場を舞台としたドタバタコメディ『ウェディング・ハイ』にスポットを当てましょう。

人生の門出を寿ぐ、ハレの衣装

ごきげんよう。

まん延防止等重点措置の延長が再び。卒業式の季節でございます。
コロナ禍にての不自由はあるものの、成人式に続き、節目となる行事をつつがなく迎えられるのは、有り難いことだとしみじみいたします。

人生における通過儀礼といえば、婚礼も欠かせません。

昨今は、結婚式を挙げずホテルでの仰々しい披露宴は行わないという方も少なくありませんが、古式ゆかしいお披露目での様式美はさまざまなことを教えてくれるもの。そして、慶びを分かち合う場には、それに相応しい装いというものがございます。

個性的な絞りの絹華友禅

結婚式にお呼ばれすることが多かった20代半ば、わたくしが思い切って人生初のローンを組んで購入したのが、個性的な絞りの絹華友禅でございました。

まさしく、清水の舞台から飛び降りた一張羅。お祝いの席に華を添えられるキモノであり、派手すぎない意匠に一目惚れしたのです。

あれから20年。大切なひとたちの人生の門出を祝う機会に、幾度となく寄り添ってくれました。そういった意味でも、よきキモノは本当に重宝いたします。

そんな「結婚式」を舞台にした『ウェディング・ハイ』は、笑いの鬼才として知られるバカリズムさんが仕掛ける、爆笑必至のウェディング・エンターテインメント。

古今東西、結婚式を描いた演劇や映像作品は数多ありますが、ここまでカラリとした笑いを巻き起こすチャーミングなコメディに仕上がっているのは、さすがです。

©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会
©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

完全オリジナルのお祭り映画を!という情熱からスタートした映画づくり。

最大の魅力は、高橋克実さん演じるスピーチに命を懸ける上司や、中尾明慶さん扮する自己陶酔の激しい紹介VTRをつくってしまう後輩クリエイター、「彼女を幸せにできるのは俺しかいない!」と披露宴会場に忍び込む新婦の元カレ役の岩田剛典さん(元カレが岩ちゃんで結婚相手が中村倫也氏とは、新婦のモテ女スキル恐るべし……)など、妙にリアルで可笑しい出席者面子。

様々な想いが交錯する場だからこそ生まれる面白いシチュエーションを映像化するにあたり、制作陣が自らの“結婚式あるある”を持ち寄り、ネタになりそうなエピソードを集めただけのことはあります。

なかでも、正体不明な謎の男として登場する向井理さんの動向にご注目あれ。

©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会
©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

新郎新婦にとって人生最大のイベントといっても過言ではない結婚式は、家族や友人、仕事仲間など多くの人々に幸せをもたらす儀式でもあります。

招かれた者たちの並々ならぬ想いが暴走し、“絶対にNOと言わない”敏腕プランナーは次々と押し寄せる難題に立ち向かわざるを得ず、クセ者ぞろいの参列者を巻き込みながら無理ゲーのクリアに挑んでいくのです。

©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会
©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

幸せな未来を願う、華やかな文様

濃いぃキャラクターの魅力はもちろんのこと…やはり、結婚式に欠かせないのがスピーチ!

とくに印象的な役割を担うのが、これ以上ないというほど披露宴に似つかわしい衣装をお召しになった新婦の高校時代の恩師(片桐はいり)です。

©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会
©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

ダンス部の顧問である樋口良子先生(字は違えど同じ「りょうこ」!親近感が湧きます)にスピーチをお願いしようかな?と部活仲間たちに相談するシーンでは、その理由として「キモノ着てきてくれるかなって」と新婦。それに友人たちも大いに同意します。
これぞ、キモノの力!

淡いやわらかな色合いのキモノに合わせた赤×金の袋帯は、七宝と亀甲という縁起のよい文様のコラボ。華やかな帯まわりが、おめでたさを演出しています。

そして、彼女から贈られる言葉の美しいこと。

一気に場の空気が締まり、ほんわかと幸せの余韻が漂う心に残るシーンとなっています。
結婚式に恩師を招待できる、教え子の結婚式でスピーチができる。そんな尊い関係性があってこその名場面です。

その他、マグロの解体ショーでの古典的な衣装や、温泉でのモダンな浴衣コーデ(デニム+簡単便利な紐付き角帯、のオシャレ仕様!)も目に楽しい本作。

結婚礼賛ではなく、「面白いことが正義」を目指したという大九明子監督(『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』)の手腕を存分に味わっていただけると思います。

©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会
©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

私事で恐縮ながら、これまで招待された披露宴にて新婦のご両親やご親戚の方々から、「(キモノ姿で)場に花を添えてくれてありがとう」とお礼の言葉を頂戴したことが何度もあります。

TPOに沿った装いが自分の愉しみや悦びのためだけでなく、祝福を届けたい相手へ礼を尽くすことになると身をもって感じた瞬間でした。

やはり、キモノは日本人の心。格式ある装いも構えず着こなせるようになりたいものです。

欲を言わせてもらえるなら……お色直しで、和装の花嫁が見たかった!!

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