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「若柳流日本舞踊披露・体験」 東京KITTE展示会2020イベントレポート vol.3

7月に東京丸の内KITTEにおいて開催された「京都きもの市場 日本最大級きもの展示会」。今回は“お楽しみイベント”として企画された13もの催しのなかから、日本舞踊鑑賞・体験イベントについてレポートいたします。

京都きもの市場による「日本最大級きもの展示会」が7月23日から28日まで、東京丸の内のKITTEで開催されました。
毎年たくさんのすばらしい着物や帯が一堂に会し、私たちきものファンを魅了しています。また、着こなしやコーディネートの講座、悉皆相談、着姿撮影会などイベントも多彩で、参加してみたいものがいっぱい!楽しみが尽きません。

そんななか、今年はまたひときわ楽しいイベントが開催されました。
それは、日本舞踊の鑑賞と体験ができるもの。
日頃から「興味はあるのだけれど…」という方も多いのではないでしょうか。
レポーターとして参加しての感想や内容についてお伝えいたします。

レポーター美玲

レポーター 美鈴

母の着物を受け継いでから「自分で着物を着たい!」と着付け教室へ。
美術鑑賞や音楽鑑賞に着物を着てでかける。
京都きもの市場ウェブサイトで商品の説明を読むのが大好き。

講師は、宗家若柳流師範・若柳絵莉香さん。
時節柄マスク姿で登場され、終始、コロナ対策を意識して進めてくださいました。
マスクをしていても優しい笑顔があふれています。

始終にこやかな若柳絵莉香さん
宗家若柳流師範 若柳絵莉香

宗家若柳流師範
若柳絵莉香さん プロフィール

1972年 東京に生まれる。1975年 宗家若柳流師範であり母である若柳吉寿海に師事、 同年に長唄「菊づくし」(於:朝日生命ホール)にて初舞台。1988年 名取りを許される。 1996年 若柳流師範免状取得 以降、若柳吉寿海の助手を務めつつ、 独自の若年層向の教室「莉利の会」を主催。

日本舞踊披露

踊りの披露

まずはじめに、踊りを披露してくださいました。

演目は「大和楽」から「舟」。
渡し船に乗った客と船頭さんとのほんの一瞬の恋のお話を表している踊りです。客の女性のときめき、一緒に酒を酌み交わす様子を心に思い描く場面を表現しているそうです。


舟は水棹よ 船頭さんの
竿の差しよで 濡れもする
嬉しがらせた 山鳥に
一つ進んじょう それ舟歌を
舟の中ほど ほど良き酔いは
地酒ほんのり 染まるころ
舟は早瀬に 身をもみながら
竿の差しよで みぎひだり
泣いて笑ろうて 叫んでみても
ほんにあれあれ もう船着き場

踊りの披露

音楽にあわせて、手指の先まで神経の行き届いた軽やかな踊りに、しばし日常から離れ日本舞踊の世界へ誘われました。踊りに疎い私ですら、絵莉香さんのしなやかで美しい動きから、その情景を想像することができました。

日本舞踊体験 所作編

所作の体験

踊りの後は所作の体験です。
日常、私たちがしている動作とどう違うのか、「しっかり学びたい」と思い目を見開き、聴き入りました。

アシスタントの棟方浩子さんが見本を示してくださいました。

まずは「座り方」です。
座る時は、写真のように手を太ももの上に置き、

①右足を一歩(5㎝)ひく    
②右ひざからつく
③左ひざをつく
④足の裏を伸ばして座る

「お腹とお尻に力を入れ、背中は真っすぐにをのばします。」

「日頃、多くの方が着物の前のひざ下部分を手で押さえて座ります。そうすると、おしりが出てしまうのでよくありません。着物の前が皺になったりして気になるかもしれませんが、さわらないでおきましょう。」

座り方、立ち方所作
絵莉香さんに習い練習する風景

みなさん、筋が良いのか背筋が伸びて美しい座り方です。
私は少し前かがみになってしまいました。

次に「立ち方」です。
立つ時は、これまでの動きを逆に行っていきます。

「お腹とお尻に力を入れる…」

簡単なように思いますが、コロナ自粛であまり身体を動かしていなかった私は、一瞬ふらっ!いけない!と。基本の基本こそが、意外と難しいものですね。
これらの動きは洋服の場合でも活きてきます。周囲に好感を与えるとともに、姿勢がよくなり、健康にもよさそうです。

次に、「お辞儀の仕方」をレクチャーいただきました。

①手は指が離れないように揃える。
「小指が離れてしまいやすいので気をつけましょう。」

指をしっかり揃える
身体の前に手をつく

②指先だけ身体の前に手をつき、胸を起こして相手を見る。
「頭を下げる前に相手をしっかりと見ます。」

「相手を見る…」
していたようでそうでなかったかも!

③背中を伸ばして真っすぐ倒す。
「背中が丸まらないようにします。この時に頭を下げると背中が曲がり、美しいおじぎになりません。背中を真っすぐにして腰から体を倒します。」

ここがポイント!

「頭を下げすぎると、土下座のようになるので気をつけましょう。」
「床からおでこまで、扇子一本分の距離(20cmくらい)を保ちましょう。」

私たちは、普段、深く曲げすぎているようです。

④身体を起こす時も、相手を見てからゆっくりと起こす。
みなさん美しい!

「座る、お辞儀をする、立つ」と一連の基本所作を学んだ後は、みなさんの姿勢がぐんとよくなっていました!
まさに「居ずまいを正す」ことができました。

すり足の練習の様子

次は、「歩き方」です。

「すり足という歩き方をします。すり足とは、”足の内側”を合わせて足袋が触れ合うように歩くことをいいます。そうすることでまっすぐに進みます。”足の裏”をすることではありません。」

そうなのですね!私は間違えていました。
  

「腰を落とし、お腹とお尻に力を入れて締め、胸(着物の合わせ目あたり)を張ります。」
「膝はのびきらない。膝の内側に紙を挟んでいるつもりで。」

そして早速実地トレーニングです。

「それでは歩いてみましょう。みなさますり足で歩いて、扇子を取りに来てください。」

「腰をぎゅっ」
「足の内側をすりながら」
「順にひと回り」  
「腰を落として重心を安定」

しずしずとすり足で、次の踊り体験に使う扇を取りに行きます。

すり足をして移動する様子
扇子の持ち方について

踊りの体験に入る前に、扇子の持ち方のレクチャーもいただきました!

「さて、みなさんは扇子を使って扇ぐとき、どのようになさっていますか?実は男性と女性では持ち方、扇ぎ方が違います。女性の場合は”扇の要を親指でおさえて”優雅に扇ぎます。”扇子の要を握って持つ”のは男性の持ち方です。」 

あー!やっていました。男性の持ち方、扇ぎ方。

「扇子を持った手の袖のたもとを反対の手で持ち、親指と人差し指でつまみます。この時、左手の位置は年齢によって変えます。若いほど高くします。」
   
帯結びと同じですね!

「ワイングラスをくゆらせるようにふわっと扇子を回します。自分の方に風が来るように、なめらかに…でもくにゃくにゃしないように。要はしっかりとおさえ、要が自分の中心線にあるようにしましょう。」

日本舞踊体験 踊り編

桜を仰ぎ見る仕草

「では最後に『さくらさくら』を踊ってみましょう。」

一度振りを教わったのちに音楽にあわせて、全員で踊りました。

♫さくらさくら やよいのそらは~

左手にある桜を見る場面です。桜を仰ぎ見る仕草が優雅ですね。手拍子は扇子で左手の甲を軽く打ちます。

扇子をかざす姿が揃っていてステキ!絵莉香さんの動きを見ながら、みなさま真剣な表情で体験されていらっしゃいます。

花吹雪を表現する動き

こちらは腰を落として、すり足で。
花吹雪を表現している場面です。
扇子の持ち方、たもとの持ち方、学んだことがしっかりと活かされています。

「みなさん、身体がポカポカしてきませんか?重心をしっかりとって姿勢をよくしようとすると、体の芯を意識するので体が中から温まってきます。短時間でここまでできてすごいです!すばらしい!」

お褒めいただきました。

「最後は挨拶ですね。日本舞踊らしく、正しいお辞儀をして終わりたいと思います。
踊りの世界では、正式に挨拶をする時には一線を引いて挨拶をします。」

扇子を閉じて正座をした正面に置き、扇子と膝との間に手をついてご挨拶。

「ありがとうございました!」

一扇の扱い方

40分という短い時間でしたのに、もろもろの所作から『さくらさくら』一曲の踊りまでができるとは!

ポイントをおさえて分かりやすく、優しくご指導くださった若柳絵莉香さんと棟方浩子さん。私たちを日本舞踊の世界に誘ってくださいました。
そして、踊りに限らず、立ち居振る舞い方を美しくすることは、日常の生活にも通ずるものであることを教えてくださいました。
私もすっかり日本舞踊を習ってみたくなりました。参加されたみなさんも、きっと同じ気持ちだったことと思います。

コロナ禍の中、気持ちが沈む日々が続いていましたが、今日はとても楽しく、有意義な一日を過ごすことができうれしい限りです。

「日本舞踊」という日本独自のすばらしい舞を鑑賞し、文化に根差した周囲への配慮を大切にし、相手に真摯に向き合う所作を学ぶ…それは、日本人の心を学んでいるのだなと感じました。

若柳絵莉香さん、棟方浩子さん、ありがとうございました。
そして、一緒に鑑賞と体験をしてくださったみなさま、ありがとうございました。
美しい所作のあふれた時間と空間は、とても気持ちのよいものでした。先生とみなさまとのコラボレーションで、「日本舞踊」というすばらしい舞の世界を垣間見ることができた貴重な時間でした。