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「三代目 柳亭小痴楽」落語公演&トークショー 日本最大級きもの展示会2021@東京丸の内KITTE イベントレポート vol.2

「三代目 柳亭小痴楽」落語公演&トークショー 日本最大級きもの展示会2021@東京丸の内KITTE イベントレポート vol.2

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5月に東京・丸の内KITTEにおいて開催された「2021 日本最大級 きもの展示会」。毎日日替わりで着物にまつわるイベントが開催された中でも、「きものと」インタビュー記事が大好評を博した三代目・柳亭小痴楽さんの落語公演はまさに必見!というべきもの。東京駅をバックにした開放的なスペースにて、迫力の高座が繰り広げられました!

東京丸の内KITTEで開催された、京都きもの市場による日本最大級の着物展示会。
数多くの着物・帯・和装小物だけでなく、着物姿をプロカメラマンに撮影してもらえる撮影会や、数々の着物・和文化に関するイベントが毎日目白押しです。

三代目・柳亭小痴楽さんによる落語公演の模様

2日目となった5月27日のイベントゲストは、若手落語家の中でも人気の高い、三代目・柳亭小痴楽さん。
小痴楽さん自身も大のお着物好きで、「きものと」掲載のインタビュー3編でも、着物にまつわるエピソードやこだわりを存分に語っていただきました。

初めての着物はやかんの熱で溶けた。 落語家 三代目 柳亭小痴楽さん (前編)

近年の落語ブームを牽引する二ツ目として活躍し、昨年9月に真打昇進した三代目柳亭小痴楽さん。落語家の父を持ち、幼いころから着物姿をみていた影響か、若手真打の中でも名の知れた着物好き。年収の三分の一を着物に使うとの噂も。落語家の着物の流儀、男着物の選び方、粋な着こなしについてうかがいました。

小痴楽さんの着物トーク、そして落語を生で体感できる機会とあり、あいにくの雨が降る中ではありましたが、みなさま思い思いの着物姿にて参加されていました!

出囃子とともに、ご登場!

おなじみの出囃子『将門』が鳴り、小痴楽さんが袖から登場。待ってました!とばかり拍手が鳴ります。

「呉服屋さんでの高座って緊張しちゃうんですよ。みなさん着物に関して目が肥えてるから、落語より「まずどんな着物着てんの?」って見られてんじゃないかって怖くて」

なんて枕でスタートした本日の噺は『のめる』。

『のめる』の枕をお話される三代目・柳亭小痴楽さん

「一杯呑める」が口癖の八さん。
「つまらない」が口癖の半さん。
お互いの口癖を直すため、口癖を言ってしまうたびに相手に1円支払う賭けをします。
何としても半さんに「つまらない」と言わせたい八さんと、アドバイスをするご隠居、八さんに仕掛けられる半さんとのトボけたやりとりが、たたみかけるように続きます。

『のめる』噺中の三代目・柳亭小痴楽さん①

半さんを出し抜こうとするがなかなか上手くいかない間抜けな八さんではありますが、小痴楽さんが演じると、その間抜けさにどこか愛らしさが漂うのは演技の妙。

『のめる』噺中の三代目・柳亭小痴楽さん②

サゲまでがあっという間に感じられるほど、楽しくて小気味良く、ご参加のみなさまからも、ドーン!と笑いが巻き起こっていました。

今回のイベントは状況を鑑みてかなり少人数な定員にて開催されていましたので…
この高座をこれほど近く、独り占めするような感覚で拝見できるのは「なんとも贅沢!」なひとときでした。

『のめる』噺中の三代目・柳亭小痴楽さん③

本日のお召しもの解説

そして後半は、落語会きっての着物好きとしても知られる小痴楽さんへの質問コーナー。

お召し物について語る三代目・柳亭小痴楽さん①

まずは本日のお召しものについて。

「今日着ているのは実は夏物(※)。着物は麻だし、羽織は紗の紬だから真夏向け。僕、着物の季節ルールが嫌いなんですよ。昔とは気候も違うし、いついつだから袷を着なきゃなんて細かいことを言う人がいるから着物着る人が少なくなっちゃう。着たいときに着たいように着ればいいと、僕は思います」

(※)イベントは2021年5月27日開催

実はこの公演日の前日、東京は25℃を超える真夏日。
ルールブック通りなら袷の季節ですが、気温に合わせて単衣のお着物で来場されるお客様も多数いらっしゃいました。

ただし本日は打って変わって雨降る若干肌寒い気候ですが…とお話を伺うと、

「実は昨日の衣裳が入ったままの風呂敷、朝急いで持って来ちゃったら、今日こんな寒いんですね。失敗しちゃったなあ」

客席までつられて笑ってしまいました。

お召し物について語る三代目・柳亭小痴楽さん②

舞台の上はスポットライトが暑く、また最近のスタジオは空調もしっかりしているので、単衣の着物を着用されることが多いのだとか。
ただし季節が想起される噺のときは、お客様のことを考えその季節にそった着物に変えられるそうです。

お召し物について語る三代目・柳亭小痴楽さん③

帯は、インタビューにも登場した『帯源』の「鬼献上」。

インタビューでは、呉服屋に殴り込みへ行くエピソードや初めての着物での失敗談、噺家の粋な着物のお話など披露して下さった三代目柳亭小痴楽さん。今回は、小痴楽さんの愛用品や、思い入れのある品々をご紹介いただきます。

“粋”な手ぬぐいの流儀とは。 落語家 三代目柳亭小痴楽さんの愛用品

グレーの羽織紐はなんと女性ものの帯締めを作り変えたもの。羽織紐にしては細身のものですが、

「これは(桂)歌丸師匠を参考にしたんです。小柄で細いから普通の羽織紐だとバランスが悪いと以前聞いて、僕も似たような体格なので真似してみようと思って」

シルエットが決まっている着物。そのなかで「色合わせや素材の組み合わせでどこまでお洒落にできるか、それが着物の醍醐味」と語っておられた小痴楽さんのこだわりが垣間見えました。

噺家の必需品・手ぬぐいと扇子のこだわり

また高座に持って上がる手ぬぐいや扇子も話題に。
昇進や年賀の挨拶などの時に自身の名前を入れて作る手ぬぐい。噺家としては名刺代わりになるもの。
ただ高座では自分の名入れのものは基本的に使わず、他の落語家の方からいただいたものを使うのが粋だそうです。

お持ち込み品について語る三代目・柳亭小痴楽さん①

当日お見せいただいたのは、春風亭昇咲さんからいただいたという鶯色の桜柄の手ぬぐい。

「他の噺家さんが使いやすいようなデザインにしたりもするんですよ。僕もそうです。他の方の舞台で自分の手ぬぐいが使われているのを見ると、うれしくなりますね」

扇子は、同期の桂宮治さんのものを。

実は以前、小痴楽さんが細部までこだわり抜いて作った扇子に倣って、全く同じ紙や竹を用いて作られたものだそうです。
元々ご自身の扇子を使われていたようですが、質も良く使いやすいため折角ならと、宮治さんのものを使われているとのこと。

お持ち込み品について語る三代目・柳亭小痴楽さん②

小痴楽さんの着物の流儀

当日は着物の端切れもお持ちいただいておりました。
お話しは、過去に誂えた着物のことや、着物の失敗エピソードなどへ。

着物についてのエピソードを語る三代目・柳亭小痴楽さん①

初めて誂えた化繊の着物を”やかんで溶かす”という大失敗をしてしまった小痴楽さんですが(『初めての着物はやかんの熱で溶けた。 落語家 三代目 柳亭小痴楽さん (前編)』)、現在でも、埃っぽい外でのお仕事やメイクをするテレビのお仕事など、時には化繊の着物も着用されるそうです。

また以前、春風亭小朝師匠が弟子の方に「今はデジタルだから分からないけど、昔のアナログ放送のときは、正絹のいい着物を着ちゃうと、光を反射しすぎて白くボケてしまう。だからテレビは化繊のほうが映りがいいし迷惑をかけない」というのを耳にし、今でも意識されているとのこと。

着物についてのエピソードを語る三代目・柳亭小痴楽さん②

またご自身で誂える着物は端切れもきちんと残し、できる限り縫い込みも残しているそうです。
それは、ご自身から他の方の手に渡ったときもサイズを直して着れるようにとの配慮。

「いい着物を買ってる自負があるから。自分の手を離れたとしても、折角だから他の人にきちんと着てもらいたいと思うんです」

手間と時間をかけて作られた着物を、自分だけで終わらせない、無駄にはしないーー着物に対する小痴楽さんの姿勢が見て取れました。

着物についてのエピソードを語る三代目・柳亭小痴楽さん③

「こっちも!」の声がかかる撮影タイム♪

ポージングをしてくださる三代目・柳亭小痴楽さん

最後は、高座の小痴楽さんの撮影タイム!
時節柄おひとりずつとの記念撮影は難しかったものの、みなさまに向けてのおもしろポージングに、「こっち向いて!」「こっちも!」「こう(ポージング)してほしい!」と楽しいお声が飛び交っていましたよ。

笑いと着物話の尽きない、あっという間の40分でした。
柳亭小痴楽さん、ありがとうございました!

ライター写真・世古

聞き手・取材 / 世古友紀奈

京都きもの市場 社員。
2012年新卒入社後、総務を中心に一貫して社内後方業務に携わる。
趣味は食べることとボードゲーム。
目下の目標は、社販でつい買ってしまったかわいい帯留を生かすコーディネートをつくること。

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