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山崎陽子さんトークショー「きものを着たらどこへでも」 日本最大級きもの展示会2021@東京丸の内KITTE イベントレポート vol.5

山崎陽子さんトークショー「きものを着たらどこへでも」 日本最大級きもの展示会2021@東京丸の内KITTE イベントレポート vol.5

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5月に東京・丸の内KITTEにおいて開催された「2021 日本最大級 きもの展示会」。“お楽しみイベント”として企画された13もの催しのなかから、山崎陽子さんトークショー「きものを着たら どこへでも」をレポートいたします。

イベント

イベントレポート

新刊でも注目の集まる山崎陽子さん

毎年5月、東京・丸の内KITTEにおいて開催される京都きもの市場の「日本最大級 きもの展示会」。

今回は、2021年の回にて“お楽しみイベント”として企画された催しのなかから、山崎陽子さんのトークショー「きものを着たらどこへでも」をレポートいたします!

2023年4月15日に、新刊『おとなの浴衣、はじめます』を上梓された山崎陽子さん。

今年のKITTEにも1年ぶりに登場されるそうですから、見逃せないですね!

レポーター/池田千恵里

趣味は書くこと!という着物愛好家。国内外において着物PRの経験を持つ。英国駐在時には着物でのお出掛けを常とし、自身の着姿をSNSやYouTube 等でも発信。また、ロンドンで着物ファッションショーを開催するなど、和装のPRに務めている。

レポーター/池田千恵

山崎陽子さんを迎えて

「きものと」で、13回にわたり連載された「つむぎみち」。

よみもの

つむぎみち

穏やかな日常にある大人の着物の愉しみを、織りの着物が紡ぎ出す豊かなストーリとして語られたこちらのコラムは、私も楽しみに読ませていただいていました。

今回はその『つむぎみち』を綴った山崎陽子さんをゲストに迎えてのトークショー。ご本人に会えるとあって、ワクワクしながら参加いたしました!

トークショー会場

着物は心の栄養!

お話がスタート

まずは、「これからの時代の着物との付き合い方」と題したお話からスタート。

年間およそ200日ほどを着物で過ごすという山崎さんから、みなさまへ質問が投げかけられました。

「みなさん、お着物は月に何回くらいお召しになりますか?」

結果は……

「月に5回」という方がちらほら、「2~3回」という方が若干多く、「月に1回」という方が大多数のようす。

皆さんお着物は月に何回くらいお召しになりますか?

コロナ禍中、人数を大幅に制限して開催されたリアルイベント

「今はおでかけの機会も減っていますし(開催はコロナ禍中の2021年)、月に1回でも着られれば……という方も多いと思います。近所の目が気になって着物が着られないという人もいるでしょう。

ですがこの状況だからこそ、一回一回のおでかけがとても大切。着物は心の栄養です!ぜひとも着ようではありませんか!」

と山崎さん。

出先にて山崎さんの和姿をご覧になられた方から「心が慰められる」と声を掛けていただいご経験など、着物でのおでかけエピソードも語って下さいました。

日常の中に着る機会を

なるべく日常のなかに着る機会を作って過ごしているという山崎さん。その理由について……

日常の中に着る機会を作って過ごしているという山崎さん

「実感として、月に1~2回だと着物が遠ざかった感じがしますし、着るのが億劫になってしまうんですね。着ようと思ったものがどこにいったかなと探さなければならなかったりですとか。これは3回以上は着ないとだめだと思い、家でも着るようにしたんです。

暑くなる季節に向けて着付けの実験なんかをしてみたり。紐を一本減らすとどうなるか、伊達締めをしないとどうなるか……といった感じで。

お風呂上がりに綿紅梅の浴衣を伊達締め一本で着て、旅館ごっこを楽しむといったように、気楽に着るようにしています」

暦よりも、リアルな体感や自然を基準に

「従来の着物の決まりごとには縛られていません」、と山崎さん。

本題の「これからの時代の着物との付き合い方」について……

従来の着物の決まり事には縛られていません」と山崎さん。

「5月までは袷とされていますが、私は去年くらいから暦をないものとしているんです。それよりも、気温や自然の変化、折々の花々など、その時のリアルな体感を基準にしています。

今日は暑いので(5月末開催)、京都きもの市場さんのネットショップで買った、夏用の東レシルック『爽竹』という洗える長襦袢を着ています」

私たちがルールを作る

「樹木希林さんの着こなしを拝見していたら、帯揚げを使っていらっしゃらないんですよね。私たちもいろいろと、自由を試してみたらいいと思うんです。

若い人のアバンギャルドな着こなしは私の歳では悪目立ちするのでできませんが、できそうなことはちょこちょこと取り入れて楽しみたいと思っています」

より自由に着物を楽しめるよう背中を押して下さいました

「江戸時代は歌舞伎役者や花魁といったお洒落リーダーたちにならっていた面もあるファッション。

お上ではなく私たちがルールを作っていけばいいのでは、と思います。みなさん、一緒にがんばりましょう!」

と、より自由に着物を楽しめるよう背中を押して下さいました。

Q1 長襦袢を自分で洗う時のコツは?

皆さまからの質問タイム

続いてみなさまからの質問タイムが設けられました。

Q1 長襦袢を自分で洗う時のコツなど、ありましたら教えて下さい。

「洗えない長襦袢は最初はクリーニングにだしますが、2回目からは汚れたところだけ手洗いをして、ネットに入れて洗濯機で洗っています。

ポイントは、洗う前の着丈と裄を測っておくこと。

洗ってちぢんでいたら濡れている状態で手でのばして、半乾きの時にアイロンでさらに伸ばすと元に戻ります。

一番大事なのは、脱水をほとんどしないこと。しても15秒くらいにすると、すごく縮んでしまうということはありません」

Q2 コーディネートのこだわりは?

Q2 コーディネートのこだわりは?

「古い着物を着たら、新しい帯を合わせる。柄と柄を合わせるなら、色はコントラストを付けない。ワントーンで地味かなというときには、何かポイントを持ってくる。

”攻める場所”と”守る場所”のバランスを考えるようにしています」

Q3 買い物は出逢い派?それとも計画派?

わくわくとトキメクものに目が行くようになりました

Q3 買い物は出逢い派でしょうか?それとも計画派?

「買い物は沼ですよね!

今まではわりと計画的に、個性的なものというよりは何にでもなじむ私らしい寒色系を選んできました。

ですがここ最近はそれがつまらないと感じるようになり、わくわくとトキメクものに目が行くようになりましたね。

ある程度種類が揃ってきたので、今はちょうど次の段階の着物選びに入るところです。

先輩方から買い急いじゃダメ!出逢いを待ちなさい!とよく言われていたんですが、ピンときていなくて。ですがトキメク江戸小紋と出逢ったことで、その意味がようやくわかりました!

狐柄のブルーグレーの江戸小紋がそれ。基本的に織りが好きなので江戸小紋は持っていなかったのですが、とうとう出逢ってしまいました……小宮康正先生の作品です」

スッキリと整えられた着物収納

続いて、着物はどのくらい持っていますか?収納はどうしていますか?という質問に、ご自宅の写真を交えて答えて下さいました。

写真を拝見し、私を含め皆さま感心しきり!

写真を拝見して、私を含めみなさま感心しきり!

スッキリと整えられた”仕事部屋”兼”着物部屋”は、考え抜かれた無駄のない空間で、それはそれは”気持ちがいい”といった感じ。

六畳一間の和室に、知人のお母様が戦前から使っていたものを譲り受けたという着物箪笥と、ネットで購入したという12段の帯箪笥、そして仕事用デスクが気持ち良く収められていました。

いつでも着られるように

イベントレポ

その和室は、夜にはお布団が敷かれて寝室としても使っているのだそう。大いに活用されて、お部屋もさぞ喜んでいるでしょうね!

そのほか押し入れには季節外のものやコート類などが収められているとのこと。いつでも着られるようにと、長襦袢は出しっ放しなんだとか。

循環を自然に生み出す

「袷のやわらかもの7枚ぐらい、紬10枚。単衣が12~3枚。夏物が12~3枚。そろそろ箪笥も一杯!私の着物の半分以上がいただきものなので、やがて私のものも誰かのところに行くのかなと思っています。物に愛着はありますが、執着はしませんので」

と山崎さん。

譲り受けた箪笥や着物を大切に活かして、また誰かに譲って……

循環を自然に生み出す姿もまた魅力だなぁと感じました。

物に愛着はありますが執着はしませんので

「譲り受けた着物は、たいてい私の体型や趣味をご存知の方からなのでそのまま着ていますが、サイズが違ったりシミがあったりしたら悉皆屋さんに出しますし、好みでないなら、箪笥が一杯なので、と断ります」

自分に合った好みの着物を着る!楽しい着物ライフを送る基本ですね!

山崎陽子さんの装い

そしてこの日のコーディネートについてのお話し。

お着物は結城縮(ゆうきちぢみ)の単衣をお召しでいらっしゃいました。

お着物は結城縮

「昨年の秋に同じ色柄の結城紬(ゆうきつむぎ)を展示会で見たんですね。

結城はそれなりのお値段がしまし……「縮がいいのであきらめます!」とお断りしたんです。そうしたら、織ります!と言われてしまって」

と購買時のエピソードを明かして下さいました。

明る過ぎるオレンジ色になりはしないか、オーダー通り気に入った柿色になるのか……と、それはそれはドキドキしたそう。せっかくのオーダーなのだからと産地へも出向き、糸の染め上がりを確認、織る工程も見学したのだとか。

「色柄も冒険でしたし、お値段も分不相応なところがあったのですが、貴重な経験ができて良いお買い物でした」

と、お誂えの醍醐味も語って下さいました。

帯は洛風林さんの八寸名古屋帯

帯は、洛風林さんの八寸名古屋帯。

「私は帯を求めたらすぐに締めるタイプなんですが、この初夏のイベントにぴったりだと思い、今日まで締めないで我慢したんですよ!」

初おろしに立ち会えて、なんだかうれしくなりました。

この日のコーディネート

帯締めは道明さんの『平家納経』とのこと。

汎用性が高いところがお好きで、記念日などにご褒美として自分にプレゼントしているのだそう。

私物の着物や帯を拝見

そして最後に、私物の着物や帯を拝見したいというリクエストに答え、実際に持ってきて下さったというお品を拝見させていただきました。

小千谷ちぢみ(左)と色無地(右)

小千谷ちぢみ(左)と色無地(右)

著書でも紹介しているという、ギンガムチェックの小千谷ちぢみと色無地を会場にお持ちくださっていました。

「小千谷ちぢみは夏物と解釈されていますが、私のこれですと、実は夏にはちょっと暑いんですね。触ってみて自分で着る時期を決めるのがよいのではと思っています」

ご著書の表紙で着てらしたギンガムチェックのお着物は、小千谷ちぢみなんですね!

著書「きものを着たらどこへでも」

2020.08.20

よみもの

洋服感覚で着る”小千谷ちぢみ”の新しい楽しみ 「つむぎみち」 vol.8

繍い紋を隠してお洒落着に

アイデアを披露して下さる山崎さん

「こちらの色無地には白い繍い紋が入っているんですが、小さな帯留めで隠しているんですよ。繍い紋でも白糸で晴れがましい感じがしてしまいまして。

お洒落着として着られるよう、家紋部分に帯留めを縫い付けて隠しているんです!」

白い縫紋を帯留めで隠して

なんてステキなアイデア!

セレクトされている小ぶりの帯留めも、着物の雰囲気にぴったりです!

和装に合うエコバッグ

会の最後には、山崎さんがユニットで展開されているファッションブランド『yunahica』オリジナルのエコバッグもご紹介いただきました。

和装の時に合うエコバッグがなかなかないので作ることにされたのだそう。

見た目は上質なちりめんですが、素材はポリエステルで雨にも強いのはうれしいですね!スーパーの袋のように、お弁当などもすっぽりと入る実用性のあるタイプです。

着物が日常に溶け込んでいる山崎さんならではのものづくり。会場にお持ち込みになられた分は、あっという間に完売していましたよ!

きものを着てどこへでも

拍手をする会場の皆さま

着物ライフをより楽しむヒントがたくさん!詰まった今回のトークショーは、40分という時間があっという間に過ぎてゆきました。

会場のみなさまの拍手とともに、冒頭でおっしゃっていた“着物は心の栄養”という言葉が再び私の心に!!

きものが着たくなったら着て、きものを着たらどこへでもいこう!

私の背中がポンと押され、前向きな気持ちへと引っ張ってもらうことができました。

山崎陽子さん、学びの時をありがとうございました!

山崎陽子さん、ありがとうございました2

ご著書 『きものが着たくなったら』

サインを頂いている方も

今春に出された『おとなの浴衣、はじめます』も大変な人気ですが、この日は、前著『きものが着たくなったら』(技術評論社)の出版直後というタイミング(2021年春)。

持参されてサインをいただく方も多くいらっしゃいましたし、当日多くの方が会場にてお求めになられていましたよ!

今年のイベントも残席わずかとのことですから…

どうぞみなさま、お早めにご予約をされてくださいね!

撮影/五十川満

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