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段上育子さんを訪ねて 「琉球染織ツアー2023」レポート(後編)

着物への愛で繋がる ~段上育子さんを訪ねて~ 「琉球染織ツアー2023」レポート(後編)

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4年ぶりに開催された京都きもの市場主催の「琉球染織ツアー2023」。後編では首里織作家・段上育子さんの工房見学と作り手の方を囲んだ晩餐会の模様をお届けします。

2023.09.17

イベントレポート

作り手の思いに触れる ~和宇慶むつみさん、玉那覇有勝さんを訪ねて~ 「琉球染織ツアー2023」レポート(前編)

首里織作家・段上育子さんの好奇心に触れる工房見学

「琉球染織ツアー2023」の宣伝画像

「琉球染織ツアー2023」案内状より

2023年はじめ、コロナ禍を経て4年ぶりに開催された京都きもの市場主催の「琉球染織ツアー2023」。

同じ日本の中でも、独自の文化を切り開いてきた沖縄の伝統工芸品の魅力をあらためて実感することとなった2泊3日の旅、後編をレポートします。

着物ファンなら誰もが憧れる3人の作り手に会いに行く工房見学。

和宇慶むつみさんの工房、玉那覇有勝さんの工房に続きまして……最後に訪れるのは、首里織作家・段上育子さんの工房です。

首里織作家・段上育子さん

首里織作家・段上育子さん

段上さんは、最初に訪問した和宇慶(わうけ)むつみさんと同様に首里織の中でも花織の作家として活動されているお一人

日本工芸会準会員として沖縄伝統工芸の発展と技術の保存を担っていらっしゃいます

製作中の作品

製作中の作品

現在はご自宅兼工房で制作活動を行っており、ご自身で糸染めから織りまで手掛けている段上さん。

段上さんが手がける花織はよろけの筬(おさ)を使った捩り織(もじりおり)が特徴で、捩りを使うことによって波打つような線が生まれ柔らかな印象になります。

段上さんが手がけた作品の見本切れ

段上さんが手がけた作品の見本裂

グラデーションが美しい優しい配色と、濡れているかと思うようなしっとりとした質感、肌触りが多くの女性から支持されているのです。

一反を制作するのに約半年ほどかかるため、生産数もかなり少なく、流通に出ることはほとんどありません。そんな段上さんの作品の見本裂を拝見しながらご本人のお話を聞く……なんとも贅沢な時間を過ごしました。

段上さんのお話を伺っている参加者の皆さん

段上さん(左)を囲んで

また、段上さんはとても好奇心旺盛。

花織ともじり織を組み合わせて生地を織ってみたりと、誰もやったことがないことをやってみようというパイオニア精神で制作に励んでいらっしゃるそう。

とっても優しい段上さん。参加者の皆さんに飲み物やお菓子を振舞ってくれました

とっても優しい段上さん。ご参加のみなさまに飲み物やお菓子を振舞ってくださいました

目を輝かせながら作品について語る段上さんの姿に、ご参加のみなさまも心を奪われっぱなし。段上さんが日頃から楽しんでお仕事をされていることがひしひしと伝わってきた工房見学となりました!

ご自宅兼工房ですので、段上さんの工房には参加者が2組に分かれ、1組ずつ見学に行く形となりました。一方の組が見学に訪れている間、もう一方の組は観光へ。

2019年に火災に見舞われながらも、着実に復興へ向かっている首里城を訪問しました!

復興が進む首里城の守礼門にて

復興が進む首里城の守礼門にて

皆さま、この日のために素敵な琉球紅型の帯を着用

着物好きで美味しい食事を囲む晩餐会

晩餐会の模様

そして、2日目の夜は参加者同士、また作り手さんとも交流を深めるお食事会を敢行。

目の前の鉄板で沖縄県産和牛や久米島でとれた車えびなどを焼いてくれる『鉄板焼きレストレラン碧』さんに伺いました!

参加者同士で記念撮影!

参加者同士で記念撮影!

2日目は一日中作家さんたちの工房を巡り、みなさまは身も心も満たされた状態。お腹ぺこぺこの状態で美味しい料理とお酒に舌鼓を打ちました。

皆さんで美味しい鉄板焼きをいただきました

銀座店スタッフの齋藤も交えて

ワインで乾杯!

ワインで乾杯!

「あの着物よかったよね!」
「私もああいうの着てみたいな」

……と、お隣に座った方とその日1日を振り返るみなさま。こうして着物好きならではの会話を楽しめるのもこの旅の醍醐味です。

お一人で参加される方もいらっしゃいましたが、やはり着物が好きという前提があるのでみなさま自然と仲良くなられていました。中には連絡先を交換され、普段は異なる地域に住む着物友達ができた方も!着物を通じて輪が広がっていく瞬間を多々目撃しました。

お食事中も様々なお話をしてくださった和宇慶さんと記念撮影

お食事会には和宇慶さん(左)も

そして、なんと工房見学でお話を伺った和宇慶さんもお食事会にご参加くださり、その場はさらに大盛り上がり。誰もが和宇慶さんにもっとお話が聞きたい!と代わる代わるお隣に座り、たくさん質問されていました。

奥にいらっしゃるダンディな方が琉球紅型作家の藤崎眞さん

琉球紅型作家の藤崎眞さん(右)も

さらに、残念ながら今回はお時間の関係で直接工房には伺えませんでしたが、琉球紅型作家の藤崎眞さんも名護市から晩餐会に駆けつけてくださいました

鮮やかな色使いで、遊び心のある柄があしらわれた作品を作っていらっしゃる藤崎さん

ものづくりへの情熱があり、その思いを隣で聞いていたお客様が翌日の販売会で藤崎さんが染められた琉球紅型の帯二本をご購入されるなど、さまざまなきっかけが生まれる濃厚な時間となりました。

ツアーの思い出をお手元に

販売会の模様

楽しい旅は1日目、2日目とあっという間に時間が過ぎ去り、ついに最終日へ。

ラストは沖縄の伝統工芸に関する情報の発信地である『おきなわ工芸の杜』で、旅の思い出を探されるみなさま。

今回のツアーをきっかけに着物を仕立てたお二人

1日目に日本最古の絣織物とされる久米島紬が生まれた島を訪れ、2日目は首里織作家の和宇慶さんと段上さん、琉球紅型作家の玉那覇さんと藤崎さんに、それぞれ作品に込めた思いを直接伺うことができた今回の旅。

雑誌のインタビューなどでは見えてこない作り手のお人柄に触れ、より一枚一枚の着物や帯に重みを感じられるようになったのではないでしょうか。

和宇慶さんの花織

和宇慶さんの花織

今回のように作り手の思いを受けて購入を決意したり、美味しいご飯やお酒とともに着物について語り合ったりと……人と人とが着物への愛で繋がる時間は何ものにも代えがたいもの。

2泊3日をともに過ごした方と最後に記念撮影

今後も楽しいツアーを企画いたしますので、ぜひみなさまふるってご参加くださいませ!

構成・文/苫とり子
撮影/田里弐裸衣 @niraiphotostudio

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