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風光る向春 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」vol.12

風光る向春 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」vol.12

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すがすがしく広がるパステルブルーの空、まばゆく光るパステルイエローの太陽。目に映る景色はきらきらと、大気はほのあたたかく、淡く明るい春の訪れを迎えつつあります。甘やかな花の香りに誘われ、どちらにお出かけしましょう。ご自身が思い描くストーリーを意識して、柄on柄コーディネートで再現してみましょう。

少しずつ春へ向かう

ほのあたたかな大気の中、明るくやわらかな日の光をうけ、出かける機会が少しづつ増えてきました。あいかわらず仕事も買い物もオンラインが主となっており、ただ街に出るだけでも心踊ります。

直接購入することは、ネットショッピングと比較すると時間的には非効率かもしれません。
しかしいろいろと見て触れてみる、モノによってはお店の方の話を伺ってみることは、ただ購入するということ以上の価値を感じるものです。

目的のあるなしに関わらず、その時の出会いでピンときて何かを購入することは、直接見て触れてこそのもの。またお店の方から教えてもらったり勧めてもらったり、より良いモノを選択できた時も同様です。非効率の方が、結果的に有効なこともあります。直接のやりとりだからこそ、偶発的な出会いが巡ってきます。

そのような出会いを密かに期待しつつ、ネットに依存せずありたいなと思っています。
みなさまはいかがでしょう。

着物を纏うには、心地よくちょうど良い季節になってまいりました。
おうち着物も良いですが、やはり外に出て、街を出歩くのは気分が高揚します。
あれやこれとコーディネートを考える時間も、ああだこうだと着付けをしている時間も、この上なく楽しいひとときです。

いつ、どこで、どなたとご一緒いたしましょう。

あなたが思い描くストーリーをコーディネートに託し、柄on柄コーディネートで再現してみましょう。

柄を取り入れるコーディネートのコツ Part.3

初回・Part.1(『豊潤のススメ』参照)のコーディネートのなかで、「柄と柄を合わせること」が一番難しくそして一番楽しく、着物の醍醐味のひとつだとお伝えし、以下をおすすめしました。
合わせる柄の大きさのメリハリで、奥行きや立体感が生まれます。

大きな柄の着物 に 小さな柄の帯
小さな柄の着物 に 大きな柄の帯

前回・Part.2(『流れにのって』参照)のコーディネートのなかで、「着物と帯の柄ゆきから流れを意識すること」をお伝えし、以下をおすすめしました。
着物の柄と帯の柄で躍動感ある縦ラインが強調され、スタイルアップがかないます。

流れや動きを感じる柄の着物 に 流れや動きを感じる柄の帯

今回はご自身が思い描く”ストーリー”と柄をつなげ、纏いたい空気感も意識してコーディネートします。前2回は着物と帯に限っていますが、今回は着物と帯の外も含め、全体を見渡し俯瞰するイメージです。

ストーリーを柄に反映させて、柄からストーリーを膨らませて

”ストーリー”と聞いてピンとこない方もいらっしゃるかと思います。
”ストーリー”とは、ご自身が主人公の物語です。
いつ、どこで、どなたと、どのようなシチュエーションで、何をする、と想像を巡らしてみるのもひとつ、また実際の今後の予定を想定してみるのもひとつです。

お気づきの方もいらっしゃることでしょう。
こちらは”調和美”の感性であり、その概念とまさしく同様です(『うららかな春の装い』参照)。
冠婚葬祭などご自身が主役でない時もありますが、今回はご自身が主役のストーリーと捉え、周囲の要素も想像しながら柄のコーディネートを行ってみましょう。

ご自身のストーリーから、柄に季節や想いを込める。
柄から、ご自身のストーリーを展開する。
どちらでも構いません。ぜひ前2回のおすすめも活かしてみてください。

つやめくでは、びびしさ漂う着姿で
なまめくでは、みずみずしさ漂う着姿で
きらめくでは、きらきらしさ漂う着姿で

みなさま自由に想像して、楽しく考えてみてください。
着物3枚に帯3本で3パターンご紹介します。お好みに近い感じはありますでしょうか。

着物コーディネート つやめく

つやめく前後横

・桜柄の訪問着
・波柄の型染の袋帯
・地紋入りのピンク系の帯揚げ
・貝の口の白に銀糸の帯締め

びびしさ漂わせて

着物コーディネート なまめく

なまめく前後横

・本藍染の絣文様の花織小紋
・有機曲線の袋帯
・紺色の縮緬の帯揚げ
・真田紐の三分紐
・波の陶器の帯留め

みずみずしさ漂わせて

着物コーディネート きらめく

きらめく前後横

・瓦柄の型染めの小紋
・紗綾型の袋帯
・地紋入りグレージュ色の帯揚げ
・芥子色の三分紐
・市松柄の木の帯留め

きらきらしさ漂わせて

究極の”アンチトータル”

柄on柄はアンチトータル

以前(『甘美な誘い』参照)、ファッションの旬のキーワードである以下3つが、着物にとって極めて自然に感じられるとご紹介しました。

・サステナブル
・アンチトータル
・インクルーシブ

「柄on柄コーディネートのコツ」を3回にわたりお伝えしていますが、まさしく”アンチトータル”であり、だからこそ無限の着物コーディネートができると実感しています。

ファッション業界においてとりわけラグジュアリーブランドは、トータルルックを完成させるにあたり、全身同じブランドで揃えることを良しとしています。
確かにパターンやテイスト、色味を考えるとそうだと。
しかしあえてそうではなく、自由に自分の好きなものをミックスして着こなしを楽しむことがアンチトータルとして提唱されはじめています。

稀に着物や帯が他の方と一緒になることはあっても、着物コーディネートが全て重なることはまずないでしょう。纏う方それぞれのストーリーでお召しになっている結果であり、少量生産であることの希少性もあいまって、やはり無限の可能性を感じます。

着物と帯を同一の染め元さん・織り元さんで揃えるより別々の場合も多く、また購入したものと譲り受けたものを、時代を越えて合わせることもあります。
洋服と異なり、着物や帯の形状に流行り廃りはなく、ほぼ一定である恩恵でしょう。

気分によって、季節によって、場所によって、時間帯によって、ご一緒する方によって、コーディネートは変化します。

時は流れ、自身も年輪を重ね、様々な変化の中においても、変わらず自分の好きなように自由にコーディネートをし、”自分らしい”美しい装いでありたいと望んでいます。

みなさまもご一緒しましょう。

センスを磨くには Part.19

センスを磨くには

以前(『口説かれ着物の纏い方』参照)、「センスを磨くには」の初回において、コツはないけれど、3つおすすめをしました。

1.想像力を養うこと
2.一般的な概念や型に囚われないこと
3.自分を知ること

センスを考えるにあたり、ふと、20世紀伝説のファッションエディターと言われているDIANA VREELAND(ダイアナ・ヴリーランド)がありがたいコメントをしていたのでご紹介します。この方は日本贔屓でも知られているようです。

“ God was fair to the Japanese.
He gave them no oil, no coal, no diamonds, no gold….
Nothing comes from the island that you can sustain civilization on.
What God gave the Japanese was a sense of style. ”

神は日本人に対してフェアでした。
文明を支えるものはこの島国から何ひとつ産出されません。
石油、石炭、ダイヤモンド、金….
でもその代わりに、神はセンスあるスタイルを与えたのです。

日本は確かに資源国家ではありません。
しかし景気低迷が続くなか今だ世界第3位の経済大国(GDP)です。それを大きく支えているは日本人のセンスなのかもしれません。

少し話が飛躍しましたが、海外の方と比較しても日本人はとても謙虚で、いつも謙遜しがちです。奥ゆかしくて温厚な気質である所以と言えますが、もう少し自然に自信を持てればいいのになとも思います。

センスに自信がない、センスがないとご相談をうけることがあります。
そもそもセンスは数値化できず、優劣もありません。結局好きか嫌いかです。

ぜひご自身の好きを大切に(『空清らかな盛冬』参照)。
「自分自身がどうありたいか」の気持ちをいろいろな形で転化または表現していくことが、センスを磨くことに繋がります。

ご自身のセンスにすべて委ねて、”自分らしい”美しい装いを

結局は好きか嫌いか
自分自身の気持ちを表現して転化する
自分らしい美しい装いを

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