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陽満ちる向暑 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」 vol.4

陽満ちる向暑 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」 vol.4

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窓から射し込む朝日がまぶしく、雲の間にきらきらとした日射しが覗くと、梅雨の陰に隠れられない夏の気配を感じます。夏至の時期は、太陽のエネルギーが一年の中で最も強くなるようです。今回は夏至の陽の光になぞらえて、きらきらしさを着姿に反映してみましょう。

木洩れ陽

この時期の雨はとても表情豊かで、天気予報もあてにならないほど気まぐれで、外出する際に日傘にしようか雨傘にしようかとても迷います。雨上がりの空気に混じって緑や土の匂いをかぐとほっと癒され、いよいよ夏が来ているのだと感じます。夕方でもまだ明るく、夜風も生暖かく、1日が長く感じられなんだかうきうきします。

先日の夏至は1年のうちで太陽から最も近くで愛され、最も昼の時間が長くなる日です。今年の夏至は新月や日食とも重なり、とても特別な日だったようです。夏至などの暦があると、普段関心なくとも自然や季節に気をかけれるのは、四季を持つ日本人ならではないでしょうか。

今回「調和美」の中で、季節を愛でることに焦点をあててみます。
夏至に降り注ぐ太陽のエネルギーにあやかり、自然の恩恵に感謝すると共に今の季節ならではのコーディネートを行ってみましょう。陽の光を全身に浴び、その光を反射して自分自身もきらきらと輝くイメージです。

陽の光と調和する自身を3つの漢字(凛、愉、雅)を元にコーディネートしてみました。

きらきらしさを表すコーディネートのコツ

夏至の明るい太陽のエネルギーを全身にたっぷり浴びれば、きっと私たちは暑さなんて超越して心地良くなるでしょう。その陽の光と共にきらきらと明るくまばゆいあなたを想像してみましょう。「調和美」(『うららかな春の装い』参照)において、一番大切なことは纏う自分がドキドキわくわく楽しくあることです。

よって湿度も気温も高い季節の中においても、着物を、おしゃれを、自分が自分であることを、それらを一層楽しんでいる。そのようなイメージを持ってコーディネートしてみましょう。単衣でも構いませんし、季節先取りで薄物でも構いません。

黄色の陽の光に包まれながら、静かに芯あるコーディネートにしました。

凛では、すっきりクールエレガント
愉では、さわやかクラシカルモダン
雅では、しっとりハンサムドレッシー

皆さん自由に想像して、楽しく考えてみてください。
着物3枚に帯3本で3パターンご紹介します。お好みに近い感じはありますでしょうか。

着物コーディネート 凛

凛コーデ前後横

・東レシルックのグレーのグラデーションの絽の小紋
・水玉文様の透け感のある夏用の袋帯
・青緑の絽の帯揚げ
・白に銀糸の三分紐
・グレーパールの波型の帯留め

すっきりクールエレガント

着物コーディネート 愉

・松柄の絽の小紋
・幾何学と花柄の透け感のある夏用の名古屋帯
・紺の麻の帯揚げ
・透け感ある紺とグレーの帯締め

さわやかクラシカルモダン

着物コーディネート 雅

雅コーデ前後横

・茶系に花柄の夏用単衣の訪問着
・菱形柄の透け感のある夏用の袋帯
・黒の絽の帯揚げ
・黒の三分紐
・ゴールドのスタッズ帯留め

しっとりハンサムドレッシー

センスを磨くには Part.3

センスを磨くには

前回(『湿感と戯れる』参照)センスを磨くにあたり、着物や帯を購入する際の具体的な事例を3つ挙げさせていただきました。

1. たくさん見る触れる
2. 自分しか似合わないような幻想を抱く
3. 着装シーンや他アイテムとのコーデを考える

今回は更に異なる視点をお伝えいたします。
” 無難か無難でないか” を冷静に見てみることです。

着付けの恩師から、着付けがようやく人並み位になった頃に教えてもらった視点です。今でもふと頭をよぎる言葉です。これは自分自身にとっての視点で、同じアイテムを見ていても他の方では異なることもあります。

日常的に頻繁に着物をお召しになる方と、私のように洋服が普段着で着物はおしゃれ着の方では異なると思います。またその時々によって変わってくると思います。
みなさんは着物や帯を欲しいと思う際、無難と無難でないもの、どちらに心奪われることが多いですか?

私は無難でないものに多く心惹かれます。しかし色々とコーディネートは難しいだろうとか、ちょっと派手かなとか、まだ早いかなどと購入を考えてしまいます。
そんな時に恩師から当時、無難なものは要らないとアドバイスをもらいました。

無難なものを否定しているわけではなく、自分自身がドキドキわくわくするものを優先するようにとのことでした。確かに周りとの調和や着回しなどの考えが優位にあると、自分自身の直感がブレてしまいます。

センスを磨くという点では、無難であっても無難でなくても、自分らしい美しい装いとコーディネートが再現できればいいのであって、良い悪いはなくどちらでも良いです。

後日この恩師の言葉をあるビジネス研修講師からも伺うことになり、大変驚きました。
多少意味合いは飛躍しますが、改めて自分自身がどうありたいかまで考えさせられることとなりました。

無難とはWIDE&SHALLOWのLIKEであり、広く浅く好まれる。
有難とはNARROW&DEEPのLOVEであり、狭く深く愛される。

あなたの着物選びはいかがですか。

無難でない着物とは

無難と無難でない、一概に定義することはとても難しいです。なぜなら先述したとおり、個々の状況や視点によって全く異なるからです。

無難でない=普通でない、奇抜だと解釈する方もいらっしゃるかと思います。確かにそうとも言えますが、着物や帯においては少し異なると考えています。
無難でない=有難、有難い、つまり貴重である、つまり特別感があると解釈しています。漢字にそのまま表されています。

もし無難でない着物や帯をチャレンジしてみたいと思ったら、自分自身にとって特別な感じがする、ドキドキわくわくするものをぜひ手にとってみてください。奇抜である必要はありません。

今でも大切にしていたり、長く愛用しているものなどは、何か意味や思い出があったり特別感があるものではないでしょうか。着物や帯も同様です。そういう気持ちで出会った着物や帯は、自分自身にとってとても価値があり、自然と長く愛用することになるでしょう。

みなさんにとって特別な出会いがありますように。

=自分自身にとって価値あるものを
貴重である、つまり特別感があるものを
ドキドキわくわくするものを

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