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モノクロームな大寒 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」vol.11

モノクロームな大寒 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」vol.11

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しんしんとした寒さの中、だんだんと日は長くなり、こくこくと立春が近づいています。 真っ青の空の下、陽光に照らされ、きらきらと舞う雪に見惚れながら、あたたかさがもう恋しくなっています。寒さの中の温かみや暗さの中の明るみのようで両極のありがたみを感じられるこの季節、モノトーンの世界で”自分らしい”美しい装いを再現してみましょう。

大寒の空

新しい年にいろいろと思いを馳せていたところ、また自粛の波が押し寄せてきました。
耐性ができ驚きはしませんが、なんとも残念な気持ちになります。
そのような中で、(地域によっては)例年通り成人式が開催され、大学入学共通テストが実施され、受験シーズンが開始され、若い方々から勇気をもらっているように感じます。

世界で日本で社会で何が起きようが、時は待ってくれません。時は過ぎ去っていきます。

暗くネガティブになり、そのまま閉じて留まるか。
明るくポジティブになり、そこから開けて動いてみるか。
日々の気持ちも言動も自分次第です。

年始に某企業のCEOがおっしゃっられた言葉がとても印象に残っています。
ビジョンや方向性だけでなく、ご自身がどうありたいかに関して言及されていたからです。

「ポジティブで優しくありましょう」と。

極めて当たり前のことですが、とても心に響きました。
現在、残念ながら世界で日本で社会でネガティブな状況が多く、周囲に優しくするのが難しいこともあるかと思います。そのような中で小難しいことではなく、当たり前のことをあらためて意識することは大切だと気づかされました。

以前(『江戸の粋・不自由の中の粋』参照)、江戸時代の奢侈禁止令の中で発展した「江戸の粋」にならい、3つの色味(茶・鼠・藍)で「令和の粋」コーディネートを再現しまし。
今回はさらに色味を無彩色(白・灰・黒)のモノトーンに絞り、世の中がどのようであれ、ポジティブで優しくあれるよう、そのような心を着姿に反映させるコーディネートを行ってみましょう。

またこの時期ならではの、”寒さの中の温かみ”や”暗さの中の明るみ”など、両極あってこそのありがたみも感じながら、有限の無彩色の中で、纏う雰囲気、空気感で無限の彩りを添えてみましょう。

モノトーンコーディネートのコツ

洋服でモノトーンコーディネートがお好きだったり、すでに着物においても、モノトーンコーディネートを楽しんでる方も多くいらっしゃるかと思います。

季節感を彷彿させる一面がありますが、どの季節にも寄り添ってくれるようにも感じます。コーディネート次第で雰囲気や印象をいろいろと変えられるのが、とても面白いです。

以前の「令和の粋」の時より、さらに着用する色味を絞ってみましょう。
「白」「黒」その間の「グレー」で考えてみてください。
なお「グレー」は白と黒の間なので、いろいろな「グレー」で構いません。お持ちでない場合はご自身のお持ちの中で、なるべくお召しになる色味を絞ってみてください。

そしてその限られた色味の中で、どのような雰囲気を纏いたいか想像してみましょう。
紬・たれもの・お召しと、着物の違いでも、織り・染めと帯の違いでも、印象を変化させられます。今回はモノトーン特有の色のメリハリやグラデーションを味方につけて、”自分らしい”美しい装いに新たな彩りを加えてみましょう。

”ふわっと優美” では やわらかなしろくろで
”かくっと端正”では かくかくな白黒で
”きりっと小粋”では シャープなモノクロで

みなさま自由に想像して、楽しく考えてみてください。
着物3枚に帯3本で3パターンご紹介します。お好みに近い感じはありますでしょうか。

着物コーディネート ふわっと優美

ふわっと前後横

・紬に相良刺繍の付け下げ
・花柄の箔の袋帯・ベージュと白のグラデーションの瓦柄の帯揚げ
・鳩羽鼠色の縮緬の帯揚げ
・白地にグレーの貝の口の帯締め

やわらかなしろくろ

着物コーディネート かくっと端正

かくっと前後横

・白黒格子柄の小紋
・博多織の名古屋帯
・黒の地紋入りの帯揚げ
・黒の三分紐
・スクエアのシルバーの帯留

かくかくな白黒

着物コーディネート きりっと小粋

きりっと前後横)

・ランダムな線模様が入っている小紋
・植物柄の紹巴織の袋帯
・月白色の地紋入りの帯揚げ
・紺鼠色の冠組の帯締め

シャープなモノクロ

モノクロームの世界

モノクロームな着物コーディネート

モノクロームと聞くと、海外の名画や昭和の時代劇が連想されます。
白と黒が構成するメリハリやグラデーションは、映像としても、登場人物を引き立てる背景としても、カラフル以上に魅力的なのではと感じることがあります。

昨今のファッション雑誌では必ずと言っていいほど、白黒だけで構成されたページや、季節に関係なくモノトーンコーディネートが掲載されています。2月号のVOGUEにも”THE WOMEN LOVES CONTRAST”(P.155~)としてモノトーンの魅力が存分に紹介されています。
以前(『漂う色香』参照)、黒に関して、「その人自身が持つ色香が引き立つ不思議な魅力を持っているように感じる」と、黒が持つ魅力をいろいろとご紹介しました。

一方で白は、黒のセクシーな印象と異なり、純粋や無垢を彷彿させます。
その人自身の生来の良さを引き立たせるように感じますし、結婚式の白無垢や純白のウェディンスドレスや白装束は、象徴的な衣装と言えます。儀礼の際には、必ず白黒が使われています。

光に照らされた時、風に吹かれた時、
黒はつややかにセンシュアルな陰影を纏い、白はなめらかに軽やかな透け感を纏う。

これほど印象が違いますが、白黒は女性が持つ二面性やしなやかさをあらわしているようで、また無彩色だからこそ、彩りとしてその人自身の個性をくっきりと引き立ててくれるように感じます。

白があってこそ黒も、黒があってこそ白も、そして白黒あってこそ無数のグレーが存在します。

白黒の有限な中の無限の魅力を感じて、自分らしい”美しい装い”に彩りを添えましょう。

センスを磨くには Part.17

センスを磨くには

以前(『口説かれ着物の纏い方』参照)センスを磨くにはの初回において、コツはないけれど、3つおすすめをしました。

1.想像力を養うこと
2.一般的な概念や型に囚われないこと
3.自分を知ること

最近よく耳にする”風の時代”のフレーズ、みなさまもどちらかでお聞きになられているかもしれません。
2.3. はまさしく”風の時代”を象徴するように感じています。
以前は”地の時代”であり、昨年の12月22日から徐々に、2月3日の節分を境に”風の時代”に移行していくらしいです。ご興味ある方は、ぜひいろいろと検索してみてください。

新しい風にしなやかに乗る、心地よい追い風を感じる、そのような想像をしてみましょう。

そうは言っても、世の中は不確かで複雑で曖昧で予測のたたぬ時代(VUCA)です。
昨今の検索サイトやSNSの急成長、急拡大により、いつでもどこでもなんでもすぐに調べられるようになった反面、情報の巨大化により真実が見えにくくなっているのも事実です。

そのような環境下、常に自分自身の判断、選択が求められているように感じています。
一見大変なようですが、私が私であることを、より実践しやすくなっているのではないでしょうか。センスを磨くにあたって、一番大切なことは自分軸であることです(『空清らかな盛冬』参照)。

習慣を変えるのが難しいのと同様に、これがなかなか難しいという方もいらっしゃるかと思います。そのような際は、以下3つを頭の片隅においていただくことをおすすめします。

権威に惑わされない
数に惑わされない
効率に惑わされない

ありとあらゆる場面において(日常・仕事・プライベート)、目上の方、著名有名な方などの言動や大手メディアの報道などに過剰に反応したり鵜呑みにすることもあるかと思います。傾聴すること感化されることはすばらしいですが、自分がどう思っているか感じているか、を静かに認識してみましょう。

大人気だから、ランキング上位だから、高評価だから、みんなが持っているからと、何かを決める際に、分かりやすい目安にとらわれることもあるかと思います。
選択・判断のひとつの指標にはなりますが、自分がそれらに当てはまらないこともあることを意識しておきましょう。

簡単、直ぐに、スピーディーという宣伝文句が世の中に溢れています。
効率が良いことは確かに魅力的ではあるかもしれませんが、はたしてその物品やサービスに本質的にそれが必要なのかどうかをふと考えてみましょう。

”風の時代”も味方にして、”自分らしく”ふわっとさらっとあがっていきましょう。

モノトーンに自分らしさが生きる着物コーディネート
センスを磨いて
風の時代をしなやかに装う着物

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