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豊潤のススメ 「自分らしさを解き放つ、シーン別着物コーディネート」vol.8

豊潤のススメ 「自分らしさを解き放つ、シーン別着物コーディネート」vol.8

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寒さ深まる夜長な秋に忍び寄る冬の気配を感じながら、昼間の澄み切った空と清々しい大気にまだあたたかな秋を満喫しています。少しずつ人の気配も感じられ、徐々におでかけする機会も増え、あらためて装うことに楽しみを見出しています。この時期に着映えし豊かな感じを着姿に反映するとしたら、柄に注目して再現してみましょう。

豊潤な空

銀杏や街路樹の葉が歩道を埋めつくし、いつもの道が黄色や赤のふかふかの絨毯のようで、肌寒い中あたたかな自然の色合いの重なりに豊かな秋を感じます。ようやく行楽地だけでなくビジネス街や商業地も人の賑わいが戻ってきており、人がいることに安心感を抱きながら穏やかな気持ちになります。

新しい働き方としてリモートワークは促進され(職種にもよりますが)、日常生活におけるオンライン購入などが極めて当たり前となり、効率や便利さに快適性を感じます。一方で「直接見て触れて感じる」という経験が貴重になっており、ただの外出ですらありがたく感じます。
外出が通常に戻りつつあるなか、着物も洋服も自己表現のひとつとしてのファッションなので(『甘美な誘い』参照)、街に出て人目に触れてこそより楽しめると実感しています。みなさまはいかがでしょうか?

おでかけの際により装いを楽しむとしたら、”自分らしい美しい装い”はもちろんのこと、季節や街に溶け込み、映える着姿で、ただ「着物」としての認識ではなく、ファッションとして見られるようコーディネートをしてみましょう。

あらためて「ファッション」というと斬新な感じや着方を想定する方もいらっしゃるかと思いますが、いつも通りの”いい加減”が良いです。(『みずみずしい新緑と調和する花々』参照)
着物や帯が備え持っている古典の良さを生かしつつ、現代の私たちが感じるモダンな要素を取り入れてみましょう。
今回は特に柄に注目して、「柄on柄」の豊かな組み合わせにチャレンジしてみましょう。

柄を取り入れるコーディネートのコツ

着物や帯の色柄はまさしく百花繚乱で、纏わなくてもとても興味深く拝見しています。纏う季節や時間帯・場所によって、またお召しになる方の雰囲気そしてコーディネートによって、それぞれ見え方が異なるのでおもしろく感じています。

コーディネートのなかで「柄と柄を合わせること」が一番難しくそして一番楽しく、これが着物の醍醐味のひとつだと思っています。
着物や帯どちらかが無地や無地感があれば、そこに柄を取り入れるのは比較的容易にできます。しかしどちらも柄となると少し工夫が必要です。素材感や柄の印象(モダンか古典か)にもよりますが、まずは以下ふたつをぜひ試してみてください。

大きな柄の着物 に 小さな柄の帯
小さな柄の着物 に 大きな柄の帯

大きな柄の方を「主役」と捉え、その主役を引き立てる小さな柄は?と考えると想像しやすいかもしれません。柄に大小のメリハリがあると、コーディネートに奥行きが増して、一層ステキに仕上がります。

苦手意識が高い方は、江戸小紋に大きな柄の帯が取り入れやすいかもしれません。ちなみに私のおすすめは、大きな柄の小紋に小さな柄の帯です。大きな柄の小紋は、変身度やおしゃれ自由度も高く、時に訪問着や付下げより印象的で、現代空間にとても映えます。

今回「柄on柄」を意識して、「柄の占有率」順にコーディネートしてみました。
お手持ちの着物と帯で、試したことのない「柄on柄」を行ってみましょう。

充では、柄on柄 50%
満では、柄on柄 80%
豊では、柄on柄 120%

みなさま自由に想像して、楽しく表現してみてください。
着物3枚に帯3本で3パターンご紹介します。お好みに近い感じはありますでしょうか。

着物コーディネート  充 

充前後横

・刺し子刺繍の訪問着
・花柄の染の袋帯
・胡桃色の縮緬の帯揚げ
・芥子色の三分紐
・サーモンベージュの石の帯留め

着物コーディネート  満

満前後横

・瓦柄の小紋
・円形に螺鈿が入って袋帯
・亜麻色の地紋入りの帯揚げ
・金糸にグレーが入っている帯締め

着物コーディネート  豊

・植物柄の小紋
・七宝柄の袋帯
・錆利久色の縮緬の帯揚げ
・濃い緑色の三分紐
・ベッコウ風の葉っぱの帯留め

華麗な加齢!?

華麗な加齢!?

前回(『彩られ色づく秋日』参照)、紅葉したあとの朽ちていく葉の色味をコーディネートに取り入れました。その際、葉が色づいて、落葉として朽ちていくまでの過程に古来の美しい色の表現が存在していることに感激し、同時に、人として朽ちるまで美しくありたいなと感慨深くなりました。

世界から先駆けて超高齢化社会に突入している日本では、平均寿命はさらに長くなっており、定年が引き延ばされ、人生100年時代などとも言われています。いかに健康寿命をのばすかと、健康食品やいつまでも若々しくとアンチエイジングの美容系商品も多く目にします。

そんななか、華麗に歳を重ねるとしたら…
そして着物好きなみなさまなら、歳を重ねても美しく着物を纏いたいと思っていらっしゃるかと。
「品」や「生き様」はその方が年齢分培ってきた上で纏う雰囲気なので、どんなに外見を変えても変えられません。意識で変えられるものとしたら、三つあると考えています。

清潔感、肌、歯

私自身が人とお会いする際に、無意識的に見ている順番です。健康か健康じゃないかがわかる順番でもあるので、もしかしたら動物的な見方かもしれません。
あたりまえだと思われる方も多くいらっしゃると思います。それらの「あたりまえ」が華麗に加齢するにあたっては基本になると感じています。若い時には感じられませんが、年齢を重ねるごとに差が出てしまう部分でもあります。

年齢を重ねても美しく着物を纏われている恩師や先輩方は、纏う雰囲気にも憧れますが特に肌が美しいです。年齢なりのシミやシワがあっても、全く乾いておらず、艶やしっとり感があります。若さのみずみずしさとは異なる、”豊かな潤い”とでもいう感じでしょうか。
そのような肌であればあるほど、いくつになっても纏いたい着物を自由に纏えるのかもしれません。年齢の数字に囚われるのは、ナンセンスです。

残念ながら今年日焼けできなかった私は、これを機にと豊潤な肌を目指し日々お手入れをしています。
なぜならいつまでもいくつになっても、美しい着物を美しく身に纏いたいから。

センスを磨くには Part.12

センスを磨くには

以前(『口説かれ着物の纏い方』参照)センスを磨くにはの初回において、コツはないけれど、3つおすすめをしました。

1.想像力を養うこと
2.一般的な概念や型に囚われないこと
3.自分を知ること

今回はその中で、2の延長として「期待値」に関してお伝えします。
”調和美”に関して繰り返しお伝えしておりますが(『うららかな春の装い』参照)、”調和美”を「期待値」として捉えるとセンスを磨きやすくなると感じています。

いつどこでどなたと…の着装シーンまでを想像しながら何を纏おうかと考える際、やはりご一緒する方を一番に考えるかと思います(『口説かれ着物の纏い方』『甘美な誘い』参照)。
ある程度相手の期待通りであれば、調和美として全く申し分はありません。それが一般的な概念や型であるとも言えます。しかしさらに良い印象や、センスが良いと思われたい場合、相手の期待値の1%以上を上回る装いが求められます。

日頃私たちは人の言動や表現に対して、センスあるな、センス良いなと感じることあるかと思います。そのような際その対象は一般的や平均的でなかったり、また自分ではできないからそう思うのではないでしょうか。
自分が思う期待値の1%以上を相手が上回ると、人は感動したり称賛したりします。お金を払って物品やサービスを購入する際も同様で、費用対効果で値段以上の満足度が高い時と同じです。
自分らしい”いい加減”のコーディネートを行う上で、相手の期待値を想像することを頭に入れておくのもいいかもしれません。

調和美は大前提、一般的な概念はあたりまえ、その一歩先へ―

ご自身なりの纏う雰囲気やコーディネートで、ぜひ磨いていきましょう。
美しい装いは一日してならず。

美しい装いは一日にしてならず
ご自身なりの纏う雰囲気やコーディネートで

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