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風薫る初夏 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」 vol.3

風薫る初夏 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」 vol.3

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太陽がきらきらとまぶしく、日に日に気温も上がり、暑さを感じるようになってきました。 日陰に入ると、緑や草木を渡ってすがすがしい風が吹いてきて、肌に触れてもあたたかく心地よさを感じます。この時期の風は薫風と言われるそうです。今回は薫風になぞらえて、さわやかさを着姿に反映してみましょう。

木々を吹き抜ける薫風

初夏の風は薫風と言われ、冬の木枯しとは違って、やわらくあたたかい南風です。そしてあたたかさの中に緑の匂いを感じます。太陽の光は日増しに明るくきらきらとまぶしさを感じます。

心地の良い気候で日も長くなり、そろそろお出かけしたいところを自粛してる方も多くいらっしゃるかと思います。そのような中でもおうち着物を楽しんでいる方、着物・帯などを整理している方、次の外出のコーディネートを考えている方など多くいらっしゃるようで、着物ってあらためていいなと実感しております。

見て触れて纏って良し、そして脳内で想像しても良し、それらは着物が元来持っている魅力のひとつかもしれません。

前回センスを磨くことの一つとして想像力を養うことをご紹介しました。(口説かれ着物の纏い方参照)
この時期に着物や帯を整理しながら、次のコーデを想像したり、その想像を元に試しに着装するのもいいかもしれません。

今回「調和美」の中で、季節を愛でることに焦点をあててみます。薫風をイメージし、自身も周りの方にもさわやかさを感じてもらえるコーディネートにしてみましょう。
さわやかさを表現する3つの漢字「清」「爽」「涼」を元にイメージしてみました。

さわやかさを表現するコーディネートのコツ

今回から単衣の着物に衣替えします。単衣、薄物の時期となると、お手持ちの数が少ない、着装する機会が少ないという方もいらっしゃるかと思います。私自身が実際そうです。単衣と薄物の時期はコーディネートを毎回どう工夫しようかとより考えます。

さわやかさを演出するとしたら、軽やかな素材感、明るい色、涼しい色を取り入れてみましょう。お手持ちが少なくても、小物やメイクなどの細部に取り入れるだけで雰囲気を変えられます。

袷ではなく単衣なので軽やかな素材感は既にどちらにもあり、それらに追加する形で考えてみましょう。

「清」では、上品で正統派な感じに帯揚げでさわやかさを
「爽」では、紬のほっこり系とギャップを感じる帯でさわやかさを
「涼」では、ロイヤルブルーの小紋で全体的にさわやかさを

みなさん自由に想像して、楽しく考えてみてください。
着物3枚に帯3本で3パターンご紹介します。お好みに近い感じはありますでしょうか。

着物コーディネート「清」

着物コーディネート「清」

・利久茶色の単衣の色無地
・千鳥と青海波の染めの袋帯
・黄水仙色の絽の帯揚げ
・白銀色の冠組の帯締め

正統派で品よくはつらつ

着物コーディネート「爽」

着物コーディネート「爽」

・真綿紬の鳥獣戯画柄の単衣の小紋
・博多織の唐草文様の名古屋帯
・緑色の絽の帯揚げ
・黒の三分紐
・艶ありメタルの帯留め

カジュアルでキリリすっきり

着物コーディネート「涼」

着物コーディネート「涼」

・東レシルックのロイヤルブルー色の小紋
・本藍染の水玉柄の透け感のある袋帯
・白の絽の帯揚げ
・白に銀入りの三分紐
・トンボ玉の帯留め

モダンで凛としてシャープ

”美は細部に宿る”とは

着物においても”美は細部に宿る

今回、「手持ちの数が少ないなか工夫するとしたら小物やメイク」とお伝えしました。
そしてふと”美は細部に宿る”と言う言葉が頭に浮かんできました。メイクやお手入れなど美容雑誌などでよく見かける言葉でもあります。

着物における、”美は細部に宿る”は何だろうと想像してみたいと思います。
”美は細部に宿る”は、元は”神は細部に宿る”と言う言葉からきているようです。

こちらの言葉の出典は諸説あり美術や建築関係からのようです。
解釈としては以下のようです。

大きな成功やゴールをおさめる為には、細部もおそろかにしてはいけない
物事を大きく全体で見ながら、小さなこともこだわる

おそらく着物だったら、全体は着物コーディネートそして細部は着付けと解釈しました。当初細部は着物コーディネートにおける小物類であろうと単純に考えていたのですが、元の意味を読み解くと当初の印象とは全く異なりました。

着付けは肌の上に順番に下着、肌襦袢、長襦袢、着物、帯と次々纏っていくので、丁寧に着付けをしないと次に影響してしまうので、これこそ細部ではないかと。
一方着物コーディネートは全体を左右する印象になります。

前回(口説かれ着物の纏い方参照)、着付けと着物コーディネートは性質の異なる密な関係とご紹介しました。

今回は、”着物の神は細部に宿る”、”着物美は細部に宿る”と言い換えまして、美しい着姿を完成させるには、着物コーディネートはもちろんのこと、丁寧な着付けがあってこそと改めて気づかせてもらいました。

着付けと着物コーディネートのこだわり!?

着付けと着物コーディネートのこだわり

着付けや着物コーディネートのこだわりに関して聞かれることがあります。
みなさんはありますか?

その質問をいただくと「着付けは丁寧に、着物コーディネートは調和美という感性を大切にしています」とお答えしています。当時着付けの先生方から何度も繰り返し教わり、体感として得たことが正しくそうであり、今でもとても大切にしています。あたりまえだと思われる方もいらっしゃると思うくらい、とてもシンプルです。

着物コーディネートにおける調和美は以前の記事に具体的に書いていますので、ご参照いただければと思います(うららかな春参照)。

今回は着付けに関して、具体的にお伝えします。

着付けを簡単にすばやくできることも素晴らしいことですが、そこにこだわりはありません。実際時間に追われることもたくさんありますが、自分自身が結果納得し心地良い着付けでありたいので、なるべく丁寧に着付けをするよう心がけています。

もちろん試験や仕事などで〜分以内にということもありますが、まずは丁寧に結果短時間の仕上がりであればベストと考えています。

着付けにおける丁寧は具体的にというと、全てになってしまうのですが、
特に見映えという点で5点挙げさせてもらいます。
この5点さえ丁寧にすれば、着姿がより良く見えると考えています。

着姿が良く見えるとは、着物が身体の曲線に無理なく自然と寄り添っているイメージです。
行く場所や目的、見せたい印象によっても多少異なると思いますので、あくまでご参考程度にしてください。

 1.衣紋
  最低こぶしひとつ分位抜く

 2.裾
  裾線は身丈すれすれくらい、裾すぼまりでくびれをもたす

 3.背中心
  後姿で着物の背中心が背中の真ん中で、シワも左右に整えられている

 4.おはしょり
  身体に吸いつくように一直線で整え、衽線を揃える

 5.帯・帯締め
  お太鼓は身長や体型に応じたちょうどいい大きさ、横から見た時に少し前下がり
  結んだ帯締めは衿合わせと一直線で揃え、帯幅の中央付近、結び目だけほんの少し下げる

着付け方法や手順は色々ありますし、学校や先生によって少し違うこともあります。
どちらも美しい着姿を目指す点は変わりありません。よってご自身が好ましい着付けで自分らしい美しい装いを見つけてみてください。

お太鼓は身長や体型に応じたちょうどいい大きさ
おはしょりは身体に吸いつくように一直線で
着物が身体の曲線に無理なく自然と寄り添っている

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