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空清らかな盛冬 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」vol.10

空清らかな盛冬 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」vol.10

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清らかな空気の冷たさの中夜空を見上げると、ふわりと柔らかな墨色の中キリリと青白く冴え渡る月。師走ももう終わりを告げます。年の終わりと年の始まりの間は、自然と一年を振り返ってみたり、次の年に想いをはせたりする時期です。そのような特別な季節、どのような”自分らしい”美しい装いをいたしましょう。

松な空

今年ももう終わりを迎えようとしています。
いつもの一ヶ月でありながら、いつもと違う気分に自然とさせられる師走。クリスマスイルミネーションやデコレーションが、瞬く間に門松やしめ縄に切り替わるといよいよ年の暮れを感じさせられます。

2020年、みなさまはどのような一年でしたでしょうか。

目に見えない思いがけずの出来事からの影響は大きく、色々な変化を急速に促されたように感じています。今だに渦中にはおりますが、この変化の大きな波にあらがうことなくやわらかに受け入れて乗っていきたいと、前向きに捉えています。そして膨大な情報に押しつぶされることなく、正しい情報を判断した上で、心穏やかでありたいと願っています。

この、人類、世界共通のチャレンジ。
プラスに転じられるほど余裕もなく、甘くない現実を大小関わらず目の当たりにされている方も多くいらっしゃるのも事実です。しかしピンチをピンチのまま捉えるのか、ピンチをチャンスとして捉えるのか、見方を変えて心持ちを変えるだけでも今後は変わると信じています。

空気が冷たく冴えわたるなか、一年を振り返りながら、次の一年に想いをはせる年の瀬。心清らかに整えられるようありたいです。

今回「調和美」の中で、季節を愛でることに焦点をあててみます。
今年一年の様々なことに大きな感謝を込めて、来年一年の様々なことに大きな期待を寄せて、そのような心を着姿に反映させるコーディネートを行ってみましょう。

昔から愛されている吉祥文様を着姿に取り入れて縁起をかつぎ、コーディネートで、古典とモダンのバランスを再現してみましょう。

古典とモダンのバランスコーディネートのコツ

年の瀬、年の暮れと、今年もいよいよ終わりを迎えます。
今年一年への感謝と来年への期待に心ふくらませ、それにふさわしく古典(過去)とモダン(現在)のバランスに心留め、縁起良い文様も取り入れて、自分らしい美しい装いを再現してみましょう。

「古典とモダンのバランス」とは一体何かというと、言葉の通り、古典とモダンがどのようなバランス、印象でコーディネートの中で存在しているかというあくまで主観です。

バランスは個々の好みのためどのバランスであってもよく、時によっても異なるのでおもしろいです。私自身は、もともと好きな古典にモダンなエッセンスやスパイスを加えて、”古典なモダン”ではなく”モダンな古典”のようなイメージでコーディネートをするのが好きです。

古典とモダンの大きな共通点は美であり、美に関しての憧れや追求は昔も今もそして今後も変わらない価値観です。着物や帯・小物類の単品の印象はいろいろあります。それらの美をコーディネートでどのように融合させよう、競演させよう、化学変化させようと捉えてみて、自分らしい美しい装いを再現してみてください。
結果、古典とモダンのバランスがどのように見えるかをぜひ楽しんでみましょう。

”凛”  柄で魅せる モダンさが引き立つ古典柄の松と古典柄の流水
”雅” 技で魅せる 青海波に青海波を重ね浮き出す松柄とダイヤモンドラピス引箔
”冴” 色で魅せる キリリと主張ある色味とシュッとした竹柄

みなさま自由に想像して、楽しく考えてみてください。
着物3枚に帯3本で3パターンご紹介します。お好みに近い感じはありますでしょうか。

着物コーディネート 凛

凛前後横

・松柄の小紋
・流水柄の染めの袋帯
・抹茶色の縮緬の帯揚げ
・白地に赤茶の貝の口の帯締め

幽玄の美を想像して

着物コーディネート 雅

雅前後横

・青海波の松の訪問着
・ダイアモンドラピス引箔の袋帯
・水色の縮緬の帯揚げ
・水色とサーモンピンクの貝の口の帯締

枯淡の美を想像して

着物コーディネート 冴

冴前後横

・雪輪柄の地紋の色無地
・竹柄の袋帯
・グレーの縮緬の帯揚げの
・グレー地に金糸の貝の口の帯締め

深遠の美を想像して

”自分らしい”美しい装い

自分らしい美しい装い

私たち日本人は、残念ながら”自分らしい”美しい装いは苦手だと思っています。
なぜなら私たち多くの世代が過去受けてきた教育において、みなと同質であり、みなと協調し、みなに好かれていることが良いと、少なからず刷り込まれてきたからです。

よって「自分自身がどうありたいか」の前に「自分自身がどう見られたいか」が先にあり、自分が心から思う意見より、人が求めている模範回答を言える、優等生気質になりがちです。もちろん、これ自体が悪いわけではありません。

周囲が求める期待を想像し慮る(おもんぱかる)感性は、私たち日本人が備え持つ”調和美”の感性であり、概念において、また”おもてなし”精神においても非常に大切な要素です。

しかし”自分らしい”を実現するためには、優等生気質から脱皮して、もう少し自分の軸で我がままに、自分原点であることをおすすめしたいと思っています。

多くの方に良いと認識されたい、承認されたい欲求は誰しもがあると思いますが、多くの方に良いと思われること自体が目的になってしまうと、やはり真の”自分らしい”は難しいでしょう。

以前(『空澄んで秋めいて』参照)ラルフ・ワルド・エマーソンの一説をご紹介したように、

 周囲と調和しながら
 みなと一緒でもなく
 自己満足でもなく

”自分らしい”美しい装い”を絶妙に再現できると信じています。
まずは自分自身がどうありたいか、そして迷った時には自身がドキドキワクワクする方で。
”自分らしい”美しい装いは、あなたらしさです。

センスを磨くには Part.15

センスを磨くには

以前(『口説かれ着物の纏い方』参照)「センスを磨くには」の初回において、コツはないけれど、3つおすすめをしました。

1.想像力を養うこと
2.一般的な概念や型に囚われないこと
3.自分を知ること

センスを磨こうと色々と見て、触れて、聞いたりと積極的にインプットしているのに、なぜかなかなかアウトプットに繋がらないということもあるかと思われます。
そのような際に以下の流れを心に留めておくことをお勧めします。

観察して、関連づけて、再現する

最初は意識して、そのうち無意識に自然と行えたら、いろいろな方・コト・モノからの吸収力、そして再現力は上がっているでしょう。

流れのなかで特に重要なのは、関連づける、ところです。
こちらが弱いと、せっかくいろいろと見聞し経験してもそのままで終わってしまいます。
関連づけるとは、自分に繋げる、自分の身に寄せると捉えると分かりやすいかもしれません。見聞きした情報でも、アートでも、どなたかの洋服や着物コーディネート、何でも構いませんが、それらはそのまま自分に応用することはできません。
なぜならセンスは、自分らしさがあってこそ存在するからです。

情報からの発想のヒント、アートからの色合わせの参考、どなたかのコーディネートのイメージ…などとありますが、刺さる部分のエッセンスを抽出して、自分用にカスタマイズして取り入れることをおすすめします。

細かい部分まで網羅的に観察できることはすばらしいですが、他の誰かになりたいのではなく”自分らしい”美しい装いを再現するにあたっては、自分に刺さるエッセンスを都度取り入れた方が、日々のインプットを容易に活かすことができると考えています。

”自分らしさ”が、センスの原点です。

自分らしい美しい装いを。

自分らしさが原点
自分らしく美しく
軽やかに、光に満ちて

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