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漂う色香 「自分らしさを解き放つ、シーン別着物コーディネート」vol.4

漂う色香 「自分らしさを解き放つ、シーン別着物コーディネート」vol.4

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肌に触れる光や風が熱気をおびてくると、ようやく待ちに待った暑い夏の訪れです。何気なく目にする風景が太陽の明るいベールに包まれて、いつにも増してくっきりと色鮮やかに感じます。色彩豊かな夏に表情豊かに色香を纏うとしたら、あえての黒で再現してみましょう。

7月に入り梅雨の晴れ間の清々しい空と燦々とした太陽を眺めていると、すっかり身も心も真夏モードに切り替わります。特に梅雨明け後の真っ青な広く晴れ渡った空を見ると、開放的になり、色々お出かけしたくなります。

先日の七夕は正式には牽牛星(けんぎゅうせい)と織女星(しょくじょせい)を祭る行事だそうです。七夕は棚機とも書くようで、古来の機織りの「たなばたつめ」の伝説もあるようです。(出典:大辞林の七夕より抜粋)
「たなばたつめ」において着物や織物との接点を知り、とても感慨深くなりました。

彦星と織姫が年に1度出逢えるロマンチックなストーリーは大人になった今でも魅力的にうつります。どんな暑い夏の最中でも、愛おしい彦星に会いに行く日は心をときめかせながら織姫は身支度をしていることでしょう。

今回、そんな織姫様からいつもと違う雰囲気で彦星様をハッとさせたいとコーディネートの相談を承りました。ここ数年淡い色や薄い色の着物が続いており、コーディネートもマンネリ化してしまって、彦星様の反応もいまいちのようです。

詳しくお聞きしてみると、着飾らずシンプルで品よく、自然体なんだけど大人っぽく装いたいとのこと、年齢を重ねられた今でも清楚や可憐なイメージで見られることが多く、少し違うご自身も発見されたいとのことでした。

真夏の明るい太陽のもと、清楚や可憐ではなく、品よく大人エレガントな雰囲気を纏うとしたら、あえての無彩色の黒で提案してみましょう。表情豊かな黒をコーディネートで3つ再現してみました。どうやら織姫様はお気に召されたようで、楽しく迷われています。

色香漂うコーディネートのコツ

夏の暑い時期の黒は、見た目からして暑苦しいように感じられる方もいらっしゃるかと思います。しかし夏だからこそ、黒が苦手な方もチャレンジしてもらいたい色です。

なぜなら薄物の時期の黒は、袷と単衣の時期と全く異なるからです。
重たく地味な印象は、生地に透け感が加えられ、とても軽やかで涼やかになっています。
また太陽の光に照らされると、シャープでかっこいい印象が一転、生地の透け感が強調されとても女性ぽくエレガントに香ります。

他の色でも透け感は強調されますが、ギャップがあるのは黒ならではでないでしょうか。
室内での黒、屋外で太陽に照らされる黒、ギャップとは表情豊かとも言い換えることもできます。

黒の色香を纏って、新たな自分を発見してみましょう。
品よくエレガントをベースに、大人の夏の黒をコーディネートしてみました。

エレガントに カジュアルを添えて
エレガントに シックを添えて
エレガントに モードを添えて

皆さん自由に想像して、楽しく考えてみてください。
着物3枚に帯3本で3パターンご紹介します。お好みに近い感じはありますでしょうか。

着物コーディネート  エレガント・カジュアル

・蚊絣柄の夏大島
・麻の名古屋帯
・紺色の麻の帯揚げ
・グラデーションカラーの三分紐
・水色に紫がかったガラスの帯留め

着物コーディネート  エレガント・シック

エレシックコーデ前後横

・格子柄の薄物の小紋
・自然布の名古屋帯
・青緑色の絽の帯揚げ
・納戸色の銀源氏レース組の帯締め

着物コーディネート  エレガント・モード

・ストライプ柄の明石縮
・紗の袋帯
・透け網織の帯揚げ
・黒の三分紐
・白地に金彩を施した陶器の帯留め

THE 黒

エレモードコーデ横

黒というと、皆さんどのような印象がありますか。
見た目ですと暗い、重たい、強いなどのイメージがあります。

着物となると留袖や喪服が目に浮かぶ方もいらっしゃるかと思います。
慶びの日も、弔いの日も黒の着物を纏います。両極端の状況ではありますが、とても感情がたかぶる際に寄り添える色として、黒は特別な存在なのかもしれません。

黒にはその人自身の本質や、ありのままの感情を浮き彫りにする不思議な魅力を持っているように感じます。黒の無彩色だからこそ、その人自身が持つ色香が引き立つと。
留袖や喪服をお召しになっている女性が、ご本人は喜びや悲しみの中にいるのにも関わらず、その想いとは別に目を惹くのはそういうことではないでしょうか。

喜びと悲しみ、強さと弱さ、気品と官能
黒が持つ相反するイメージは、まるで女性の性質すら表しているように思えます。
想像以上に周りを不思議と吸引する魅力があると感じます。

美しい装いにより自分らしさを加えたいと思った時、黒はきっといい味方になってくれ、
よりあなたを引き立ててくれるでしょう。

あなたならどんな黒を身に纏いますか。

センスを磨くには Vol.4

エレカジコーデ横

前回(『陽満ちる向暑』参照)無難と有難の話をさせていただきました。

黒に関しては、不思議と人によって無難と思う方、難しいと思う方が両極端に分かれます。
どちらも正解で、どちらもありうると思っています。
一見すると暗く重いため、ただ纏うだけでは地味で単調になりがちです。

しかし纏いたいイメージや雰囲気が想像出来れば、黒はどの季節においてもどのようなシーンにおいてもコーディネートの中で楽しむことのできる色です。
無難にとどめてしまうともったいない色かもしれません。

着物、帯、帯揚げ、帯締めの中で、どのアイテムに黒を取り入れるかによっても印象は大きく変わります。黒を取り入れようと思った際に小物から選ばれる方がいらっしゃるのですが、あえて逆をお勧めします。

面積が小さくなればなるほど、黒だけが強く目立ってしまい、せっかくのコーディネートの調和が取れなくなることもあります。

あまり黒が得意でないという方は、着物から取り入れることをお勧めします。

今の時期でしたら透け感のある黒、そして単衣、袷の時期なら黒地の小紋をお勧めします。
黒をもっと身近に、ご自身との調和を楽しんでみてください。

織姫様のように普段淡い色や薄い色をお召しになることが多い方でしたら、
自分が思う以上に周りがハッとしているかもしれません。

それがあなたから漂う色香です。 

さて織姫様はどちら選ばれたでしょうか。

エレカジシックモードコーデ後

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