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小満:新緑や五月雨をテーマに! 「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

小満:新緑や五月雨をテーマに! 「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

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毎年5月21日頃に訪れる「小満」を過ぎると「五月雨(さみだれ)」の季節。藤に青い細縞が描かれたアンティークの単衣は、里山に咲く山藤を濡らす雨を見事に表現しています。杜若を染めて花びらに刺繍をほどこした袋帯をあわせ、杜若を思わせる帯結び、音符文様の帯留をあしらって、雨音を楽しむ気持ちをあわらします。

(1) 二十四節気とは

「二十四節気」とは、旧暦(太陰太陽暦)における太陽暦であり、2月4日の「立春」を起点に1年を24等分し約15日ごとの季節に分けたもので、いわゆる「暦の上では…」のもとになっているものです。

どこかで見聞きしているものの、いまひとつなじみがない
というあなたにこそ知ってほしい「二十四節気」。

いにしえの知恵「二十四節気」に親しむことで、

□ 季節を感じる感覚が豊かになる
□ 着物コーディネートが上手になる
□ 着物を着る機会が増える

こんな素敵な毎日がはじまりますよ。

月2回アップするこちらの連載で「旧暦着物美人」をめざしてみませんか。

(2)「小満(しょうまん)」とは

さて、明日訪れる八番目の節気は、

小満(しょうまん)

「万物次第に長じて天地に満ちはじめる」
という意味で、草木が成長して生い茂る時期です。

着物のコーディネートにも、新緑を感じさせる色やモチーフを取り入れると自然と調和した装いとなります。

(3)「小満」のアンティーク着物コーディネート

「五月雨」をテーマにしたアンティーク着物コーデ

毎年5月21日頃に訪れる「小満」を過ぎると「五月雨(さみだれ)」の季節。

今回ご紹介するトルソーコーディネートは、そんな「五月雨」をテーマにしたアンティークのひとそろえです。

◎ 着物…一越(ひとこし)縮緬地「藤に雨文様」単衣
◎ 帯…塩瀬地「杜若文様」染め袋帯
◎ 帯留…ハートの音符図 
◎ 半襟…楊柳地「藤に流水」刺繍半襟
◎ 履物…白木 絽縮緬鼻緒
◎ 小物…和傘

骨董市で出会ったこの単衣は、藤に青い細縞が描かれ、やわらかななかに爽やかさが漂う風情。
青い縦縞はまさしく「五月雨」。
里山に咲く山藤を濡らす雨を見事に表現しています。

(4) 季節に学ぶ多様な「絹の織り」

アンティークの着物の意匠(デザイン)は、普段見逃してしまうような季節感をさりげなく
教えてくれるだけでなく、今ではすっかり目にすることのなくなった多様な「絹の織り」があったことを教えてくれる大切な資料でもあります。

ことに半襟は、季節を反映する刺繍の文様(柄)はもちろんのこと、かつてはその生地で季節感をあらわしていました。

今では、夏以外は塩瀬、夏に絽や紗、こだわりがある方は冬に縮緬と半襟をかえて襟元を楽しみますが、アンティークには単衣の着物には「楊柳縮緬(ようりゅうちりめん)」の半襟が数多くみられます。

縦の凹凸が出るようにシボを織り出した楊柳縮緬は、塩瀬縮緬に比べ、わずかに肌から離れて身体に張りつかず、湿度の上がる時期にぴったりの絹地です。

藤と流水の刺繍をほどこしたこの半襟は、5月6月の二ヶ月間だけ、単衣の季節限定のお洒落用。

刺繍半襟は、
「着物を一枚仕立てる贅沢のかわりに、せめて刺繍の半襟を…」
という女性の気持ちに寄り添って作られた和装小物だったのでしょう。

藤と流水の刺繍をほどこした半襟

(5)「小満」の帯あわせと小物あわせ

杜若を思わせる帯結び

流水に藤からの連想で、塩瀬に杜若を染め花びらに刺繍をほどこした袋帯をあわせ、杜若を思わせる帯結びで遊んでみました。

着物の縞模様を雨音の五線譜に見立て、アール・デコの雰囲気いっぱいの銀×黒の音符文様を帯留にあしらって、雨音を楽しむ気持ちを表現。

雨音を楽しむ気持ちを帯留に
白木の台に竪絽の絽縮緬の古裂から誂えた鼻緒

履物は、白木の台にこれも今は珍しくなった竪絽の絽縮緬の古裂から誂えた鼻緒をすげ、着物の色合いとぴったり合わせてみました。

藤・牡丹・つつじ・さつき・えんどう豆・葵・枇杷…
こんな季節のモチーフを取り入れて「小満」のお洒落を!

着物の色合いとぴったりあわせて

(6)「小満」の着物スタイルをイメージする

今回は季節の絹地として、一越縮緬や楊柳縮緬をご紹介しましたが、紗を二枚合わせて仕立てる「紗袷」、「無双」も「小満」から「芒種」までの約二週間、ほんの短い季節を楽しむ着物です(現代では「紗袷」「無双」を単衣と考えられ、6月9月に着てよい着物とされています)。

あなたは「小満」にどんな着物スタイルを楽しみたいか、心に思い浮かべるイメージをカレンダーや手帳にメモしてみましょう。

無地や縞・格子の着物に節気のモチーフをひとつ取り入れるだけで、自然と調和した素敵なコーディネートになりますよ。

一年で二十四回、二週間ごとに着物に親しむ、あなただけの「二十四節気の着物スタイル」のはじまりです!

次回は6月5日に訪れる「芒種」についてお話しします。
前日4日の配信を楽しみにお待ちくださいね!

『旧暦で楽しむ着物スタイル』河出書房新社
 
※写真はさとうめぐみ著『旧暦で楽しむ着物スタイル』(河出書房新社)より。

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