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処暑:暦の上での夏の終わり! 「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

明日訪れる十四番目の節気は「処暑」です。「処」という字はもともと、「来て止まる」という意味の漢字で、そこから派生して暑さの終わりを意味する節気です。着物の世界では、「麻は処暑まで」という言葉があります。次に訪れる節気「白露」までの間、今夏の名残の麻の着物・帯を楽しみましょう。

(1) 二十四節気とは

「二十四節気」とは、旧暦(太陰太陽暦)における太陽暦であり、2月4日の「立春」を起点に1年を24等分し約15日ごとの季節に分けたもので、いわゆる「暦の上では…」のもとになっているものです。

どこかで見聞きしているものの、いまひとつなじみがないというあなたにこそ知ってほしい「二十四節気」。
いにしえの知恵「二十四節気」に親しむことで、

□ 季節を感じる感覚が豊かになる
□ 着物コーディネートが上手になる
□ 着物を着る機会が増える

こんな素敵な毎日がはじまりますよ。
月2回アップするこちらの連載で「旧暦着物美人」をめざしてみませんか。

(2)「処暑(しょしょ)」とは

さて、明日訪れる十四番目の節気は「処暑」です。

「処」という字はもともと、「来て止まる」という意味の漢字で、そこから派生して暑さの終わりを意味する節気です。
現在の夏の不安定な気象の中では、残暑とはいえ真夏よりも暑い日もありますが、自然の中では確実に季節の移り変わりが進んでいて、夕立ちの後の蝉時雨に、夏の終わりを実感する頃です。

着物の世界では、「麻は処暑まで」という言葉があります。

次に訪れる節気「白露」までの間、今夏の名残の麻の着物・帯を楽しみましょう。麻は天然素材で湿気にあたっても縮みにくく、夏にはもってこいの素材です。

盆踊り・花火大会には欠かせない浴衣は、今は木綿のものが主流でしたが、木綿が国内で栽培されて全国に流通するまでは、苧麻(ちょま)や大麻(おおあさ)の浴衣・帷子(かたびら)が着られていました。

そして、「流行は夏物から」というお洒落の言葉にもれず、夏物のアンティーク着物には、その年その年の流行が反映された面白いデザイン・新柄が数多く見受けられます。

「去年の柄の浴衣を着るのは野暮…」という戦前までの女性の感覚は、今の私たちが、「せめてTシャツくらいは、新しいものを…」と毎夏ごとに新しいTシャツを新調するような感覚に近いといっていいでしょう。
ちょっと面白い柄のTシャツをメインにお洒落をする…そんなイメージでアンティーク着物をコーディネートしてみました。

(3)「処暑」のアンティーク着物コーディネート

処暑のアンティーク着物コーディネート

◎ 着物…麻地 ワイングラス文様
◎ 帯…白地 レース織 松葉仕立て名古屋帯
◎ 半襟…1940年代のヴィンテージレース(さくらんぼのモチーフ)
◎ 帯揚げ…トランプ文様の染め半襟を帯揚げのかわりに使用
◎ 帯留…マドロス柄ブローチ(ドイツ製ヴィンテージ)
◎ 履物…ラフィアの台にレースの鼻緒
◎ 小物…ヴィンテージのシルクハンカチ(望遠鏡を持つ少年)
◎ バッグ…ホコモコラ(現代物)

ワイングラスは、それぞれ白・薄青紫・黄色の色違いになっていて、昼下がりのアペリティフを楽しむテーブルの風景を想起させます。
まるで現代物かと思うようなモダンなデザインは、昭和初期の舶来物ブームの影響を色濃く残す一枚です。

洋書からはじまり、煙草やパイプ、万年筆、香水などハイカラな嗜好品を扱っていた丸善や明治屋のショーウィンドウのディスプレイは当時の庶民の憧れ。手の届かない高級品を着るもののデザインに取り込んで、ちょっとランクアップした気分を味わう…

裏地が不要で表地一枚で仕立てられる夏着物は、費用も安く仕立てられるため、今までになかった大胆な面白柄が数多く取り入れられたようです。

しかし、悲しいかな、今も昔も夏物は汚れやすいもの。
着られる状態で残っているヴィンテージ・アンティークはほんのわずかです。

処暑のアンティーク着物コーディネート

そんな貴重な麻の着物に合わせたのは、真っ白なレース織の名古屋帯。

お洒落にこだわる人は、処暑までは芯の入らない羅(ら)や紗献上・自然布の単衣帯を合わせるといわれていますが、こんな洋風な織りの帯も気軽な夏の着物にはぴったりです。

名称は「名古屋帯」ですが、仕立ては「松葉仕立て」といって、手先部分一尺(約30センチ)だけを半分に折って縫製した仕立てになっています。
袋帯のように手先を半分に折る手間がないため、着装が楽なことと手先のすべてを半分に折って縫製する普通の名古屋帯の仕立てに比べて、自分の好みに前帯の幅を調整できるのがこの仕立ての利点です。

クーラーの普及していなかった時代、いかに汗をかかずに短時間で帯を結ぶか、また、気軽にクリーニングに出せなかった時代、前帯の折り目を少しずつずらすことで、淡色の帯の折り目汚れを隠して見た目良く装う、ヴィンテージの夏帯ならではの工夫がそこに見て取れます。

(4) 「処暑」の小物合わせ

夏の「白」は心意気のあらわれ。
このコーディネートのポイントは、白いレースの帯を演出する小物合わせです。

さくらんぼ柄レース

帯のレース織に合わせて、半襟は1940年代のさくらんぼ柄をつなげたモチーフが可愛い
ヴィンテージレースの端布を使ってみました。

幅15センチ・長さ120㎝のサイズがあれば、どんな布でも半襟として使うことができます。とくに汗をかく夏場は、じゃぶじゃぶ洗える素材の半襟は強い味方です。

舶来物のワイングラスからイメージを大きく広げて、豪華客船の船旅の昼下がりを楽しむ着物コーディネートに…

まずは、パイプを加えたマドロス(船乗り)を模したヴィンテージのブローチを帯留がわりにあしらって。

昔のブローチは、ピンが縦型に配置されたものが多く、帯締めを通せばすぐに帯留として使える楽しさがあります。

※横にピンが配置されたブローチには、「ブロッシュ」という金具をつければ帯留として使えるようになります。便利グッズを活用して、着物のお洒落の幅を広げてみましょう。

船旅といえば、波止場の盛大なお見送り。
淑女のたしなみとしてレースのハンカチを帯に挟んで、心躍る船出を演出してみました。

レースのハンカチがポイント
トランプ柄の半衿を帯締めに

長い船旅の相棒はトランプ遊び。
昭和初期には上流階級の女性の間で、トランプ占いが大流行したとか。
そんな流行を反映して作られたと思われる半襟を、アクセントとして帯締めかわりに使ってみました。

手には当時は「籠底(かごぞこ)」と呼ばれた、布付き籠バッグ、

ラフィア台の草履

足元はパナマよりカジュアルで手ごろなラフィアの台に、レースで仕立てた鼻緒を挿げて。
ラフィアはラフィア椰子の繊維から取られる天然素材で、夏の履物としてぴったりの草履表です。

和洋折衷、夢のようにロマンチックなコーディネートが不思議に決まるのも夏の魔法でしょうか…

(5)「処暑」のモチーフ

暑い暑いと言ってはいても、自然の中に確実に季節の移り変わりが見える処暑には、初秋を感じさせるモチーフがぴったりです。

今回ご紹介したモダンで大胆なモチーフのほか、

萩・すすき・葛・撫子・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)・桔梗など秋の七草・秋桜(コスモス)・鈴虫・虫籠・蜻蛉・玉虫

など、野原に一足先に訪れた秋の気配を取り入れてみてはいかがでしょうか。

処暑のモチーフが描かれたうちわ

着物に親しむことで、身の回りにある植物や花などを自然と再発見できるのも、装いの恩恵のひとつです。自然や季節との調和した着物姿は、着る人をより美しく見せてくれることでしょう。

(6)「処暑」の着物スタイルをイメージする

夏の疲れが出やすいこの時期は、いつも以上に細部を整える着物姿を目指しましょう。

おくれ毛がほつれ毛に見えないような櫛目の通ったヘアスタイル、帯揚げのねじれ、お太鼓の垂れのはね上がり…
後ろ姿を気にするしぐさは、着ている人を美しく見せる効果もあります。

元気いっぱいの夏から、しっとりした秋に移り変わる時の移ろいを感じつつ、「処暑」にどんな着物スタイルを楽しみたいか、心に思い浮かべるイメージをカレンダーや手帳にメモしてみましょう。

無地や縞・格子の着物に節気のモチーフをひとつ取り入れるだけで、自然と調和したステキなコーディネートになりますよ。

一年で二十四回、二週間ごとに着物に親しむ、あなただけの「二十四節気の着物スタイル」をお楽しみください。

次回は9月7日に訪れる「白露」についてお話しします。
前日6日の配信を楽しみにお待ちくださいね!

『旧暦で楽しむ着物スタイル』河出書房新社
 
※写真はさとうめぐみ著『旧暦で楽しむ着物スタイル』(河出書房新社)より。

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