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「忘れえぬこと」 貴久樹・糸川千尋 着物にまつわる物語:ジャワ更紗と南蛮船

ジャワ更紗と南蛮船 「忘れえぬこと その1」 貴久樹・糸川千尋

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一目惚れするほど個性的なお着物は往々にして帯合わせに悩むものです。 戸田先生は南蛮船の帯を見てこの小紋のことを思い出してくださったのだとしたら、それはやはり戸田先生ご自身が引き寄せたコーディネートなのでしょう。

「忘れえぬこと その1」

ジャワ更紗と南蛮船

戸田先生とは2008年に一畑百貨店で初めてお目にかかりました。
その当時先生は「貴久樹」というメーカーの名前を
もしかするとご存知ないまま、貴久樹のきものや帯を
影山さんやその他にもお付き合いのある呉服店さんでお求めくださっていたのではなかったでしょうか…?
一畑百貨店さんの呉服売り場で戸田先生が貴久樹のコーナーの前で立ち止まって
「このコーナー好きかも…」
と言ってくださったのを鮮明に覚えています。
それで
その時は名古屋帯を買ってくださいました。
私は先生の持っておられる雰囲気に心地よく包まれて
しばらくの日々、先生のことを思い返したりしていました。

また次の年。
今度は一緒にお仕舞を習っておられるご友人の田原さまをお連れくださって
一畑百貨店の催事に来てくださいました。
貴久樹のことをあれこれとご友人さまに説明しつつおすすめくださいました。
戸田先生は次の舞台で舞われる演目に合わせて船をモチーフにした帯を探しておられるとかで、あれこれと見てくださっていました。
それで私はちょうど出来上がってきたばかりの勇壮な南蛮船を刺繍にした袋帯をおすすめしたりしていました。
先生は、それを気に入ってはくださったのですが、
「千尋さん、私、大昔に一目惚れして買った小紋があるんだけど…
それに合う帯をずっと探してて今だに見つからないの。
明日そのお着物を持ってくるのでそれに合う帯も見立ててくれる?
貴久樹さんのお着物じゃなくて申し訳ないんだけど。」
と言ってその日はお帰りになられました。

そして次の日…
戸田先生が持って来てくださったお着物の風呂敷を私が開くと…
それは…
貴久樹で作った小紋でした。
とても細かい唐草文様のジャワ更紗の小紋だったのです。
この小紋は三丈六尺の長さを手間のかかる手描きの臈纈技法で
長い日数をかけて染めるため、
背の左右やおくみと上前が型で染めたようには合わないので
敬遠される方も多いのですが
そこがたまらない魅力でもあります。
ただ、貴久樹はその魅力を世界に向けてお伝えしきれなくて
このシリーズはとうに廃番になっていたものでした。

戸田先生に
「先生、これ貴久樹の小紋です…!」
と申し上げると
「え、嘘?」
とびっくりされて…。
でもびっくりしたけど
なんだかそうに違いない
そうであるはずだというような気持ちになって来て
じわじわうれしく、
顔を見合わせていたように思います。

結局そのジャワ更紗の小紋は
戸田先生にはこれはジャワ更紗の小紋ですので
背景に海のイメージがあります、
ですので南蛮船の帯もコーディネートとしてはとてもよろしいかと、
とご説明して
南蛮船の袋帯をお求めいただいたように記憶しております。

それからは偶然にいろいろな展示会で戸田先生にお目にかかり、
いろんな宿題をいただきながら
不思議なご縁にいまだに感謝しています。

一目惚れするほど個性的なお着物は往々にして帯合わせに悩むものです。
戸田先生は南蛮船の帯を見てこの小紋のことを思い出してくださったのだとしたら、
それはやはり戸田先生ご自身が引き寄せたコーディネートなのでしょう。

1万3466もの島々からなるインドネシア。
波濤を越えてジャワ島に集まった染織品。
ジャワ更紗、イカット、ソンケット。

息を飲むチャンチン染の布
チャンチン。息を飲む。
火の玉を吐くドラゴン
火の玉を吐くドラゴン
息を飲むチャンチン染の布
チャンチン。息を飲む。
息を飲むチャンチン染の布
チャンチン。息を飲む。
スンバ島のイカット
スンバ島のイカット
ソンケット。儀式のための織物。
ソンケット。儀式のための織物。
ソンケット。儀式のための織物。
ソンケット。儀式のための織物。

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