それは困りますね。しかもいきなりって！それは絶対に阻止したいです。かといって、首から「おさわり禁止」と札を下げておくわけにもいかないですもんね。せっかく楽しくきものを着ているのに、触られることに怯えてきものを着なくなってしまうなんていうことは避けたい。さて、どうしたらいいものか……

実はわたし、「結城紬大使」を仰せつかっておりまして、結城紬を着ているときはなるべく、いろんな方々に触ってもらいたいとすら思っておりました。

結城紬は反物の状態で触ると、汚れ防止の糊がついているので手触りが硬いのですが、仕立てると柔らかくなり、さらに洗い張りを繰り返すたびにますます柔らかくなるんです。

このふわふわの手触りは触ってもらわないとわからないんですよね。結城紬でなくても、着ているきものの手触りを知りたい、と興味を持ってくださることはうれしいことですし、これまでたくさんの方々に触っていただいてきました。

でもこれは、みなさんの手がきれいと信じてのこと。触りたいとお声がけくださる方の手がきれいなことが大前提だったのですね。今までわたしのきものに触ってくださった方、ありがとうございます！これからもどうか「きれいな手」で触ってください！

わたしの場合は「ドキドキしながらも信じるしかない」という状態ですが、みなさんはそういうわけにはいきません。これからはわたしも、触ってみたい生地のきものをお召しの方に出会ったら、手がきれいな状態であることをお伝えする、もしくはハンドバッグに入れてあるウエットティッシュで手を清めてから、触ってもいいかお声がけしようと思います。

もちろん、断る勇気も必要ですし、なんなら「1回100円です」と冗談を言うのもあり。きもの人同士は、お互い気を付けていくべきですね。

成人式で振袖姿の女性たちに向かって墨汁をかけた事件がありましたが、墨汁は紙に染み込みやすいように特殊な化学薬品が入っていますので、墨汁を布にかけるということは、布を墨で染めるということになってしまいます。

実際に事件で墨汁がかけられた振袖を写真で拝見しましたが、ガード加工をしてあるかしていないかで、生地への染み込み方がずいぶん違うようでした。ガード加工をしていないほうは完全に染み込んでいましたが、ガード加工してあるほうは、完全とはいえないまでも、墨汁を弾いていました。

つまり、自分で自分を守るには、ガード加工をしておく、というのが一番いいように思います。

格闘技に例えるなら、声を荒げて積極的に戦うプロレスよりも、ふりかかる災難をするりするりと躱していく合気道のようなイメージでしょうか。

植物に例えるなら、触るな！と棘を生やすサボテンではなく、撥水加工がしてある蓮の葉かな。そのほうが、こちらも穏やかでいられるように思います。イベント等でガード加工のキャンペーンなどがある場合は、見逃さないようにしたいですね。

ちなみに結城紬はガード加工をしないほうがいいと言われています。

ということは……

墨汁のついた手で触りに来る人がいないことを祈るしかない！！

ご質問者／Kさま