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ハードボイルドなカフェで日本刀を握る!? 「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」vol.11

ハードボイルドなカフェで日本刀を握る!? 「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」vol.11

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深川編、最終回!今回も、情緒あふれる下町を都留さんが着物でお散歩。コーヒー片手に、ぜひご覧くださいませ♪

2023.02.16

よみもの

江戸の職人が愛した郷土料理 「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」vol.10

みなさんこんにちは!都留詩織です。

「都留詩織の きもので下町おでかけ帖」、深川編最終回の今回。

江戸の職人技を紹介するギャラリーや、目利きの店主によるアンティークコレクションに囲まれた喫茶店をご紹介します!

深川の風土に育まれた伝統工芸品の数々

季華店内1

早速お邪魔したのは、富岡八幡宮の鳥居のすぐそばにある『深川・江戸 伝統工芸品ギャラリー&ショップ 季華』。

店内に入ると、木をふんだんに使ったあたたかみのある空間に、さまざまな伝統工芸品が並んでいました。

江戸切子

江戸切子

硯

「ここは、深川の風土と歴史に育まれ、受け継がれてきた伝統工芸品を紹介するギャラリーです。東京無地染、茶の湯指物、江戸簾、江戸切子、江戸表具、江戸木彫刻、貴金属 金工、江戸結桶などの、9人の作家さんの作品を展示・販売しています」

とスタッフさん。

建築物はもちろん、船や橋、道具や日用品にいたるまで、あらゆるものが木でできていた江戸時代。

木材はなくてはならないものでしたが、たびたび見舞われる大火は市中に点在する材木商による「高積み」が原因の一つとされたことから、材木商は墨田川の対岸の深川に集められ「木場深川町」が誕生したのだそう。

江戸簾

江戸簾

「現在でも『木場』という地名が残っていますよね。その名の通り、木材を置いて置く場所だったんです。それで自然と、木材を加工する技術が集結・発展しました。

また、深川には花街があり、辰巳芸者と呼ばれる彼女たちのかんざしや帯留めなどに使われた貴金属 金工の技術も発展しました」

例えば、こちらの江戸結桶(ゆいおけ)。

江戸結桶

江戸結桶

木曽産の天然サワラ材を用い、原木から桶に仕上げるまで70以上にも及ぶ工程のすべてが手作業で行われる伝統工芸品です。

複数の板を円形に接合しているにも関わらず、柾目の通った継ぎ目の見えない精緻な作りで、白木の清々しい香りも魅力のひとつ。

現代のライフスタイルに合わせて、江戸結桶のワインクーラーや石鹸置きなど、新たな商品も作っていらっしゃるそうです。

季華店内1

「職人さんたちはみなとてもチャレンジ精神旺盛。私たちも一緒になって、アイデアを出し合います。

このお店ではそうやって生まれた商品を紹介し、深川や江戸の伝統工芸を多くの人に伝える役割を担う場所にしたい」

スタッフの島田さん

スタッフさんにお話しを伺う

さらに、

「伝統工芸品はその工程の多さやかかる時間の長さ、職人による手作業ということから、安価な現代の製品などに比べれば高く感じるかもしれません。ですが、大切に使えば一生もの。

日々の暮らしの中にさりげなく取り入れて、たくさん使い込んでほしいんです」

手仕事への敬意と愛、熱意を持ってそう語ってくださいました。

最後にお土産を購入。江戸三大祭りに数えられる、深川八幡祭りの様子を描いたポチ袋です。

ポチ袋

「一般的なポチ袋より細長く、お札を「観音折(四つ折り)」で入れられます。縁起が良い粋な折り方なんですよ」

と教えてくださるスタッフさん。

なるほど!ここにも江戸っ子の粋な心遣いがあらわれていて、恐れ入りました。

アンティークに囲まれた名店へ!

続いてやってきましたのは、富岡八幡宮から徒歩3分ほどのところにある『江戸 深川珈琲本舗』。

初めて深川を訪れた時から、なんだか気になっていたお店です。

焙煎機

店内に一歩入るとなんとも香ばしい香りが。

ジャズが流れ、アンティーク食器がところ狭しとディスプレイされた圧巻の空間で、直火の珈琲豆焙煎機が稼働していました。

店主の山岡さん

迎えてくれたのは、店主の山岡さん。

大手コーヒーメーカーで30年、深川にお店を開いてから20年以上という、名物マスターです。珈琲焙煎機は開店当初からの相棒だそう。

いただいたオリジナルブレンドは豆の香ばしさと苦味が感じられる、ストロングな味わい。

アンティークの珈琲カップ

珈琲を飲む前には、お客さんに正しく味わってもらうため、必ずお水を出すというこだわりようです。

珈琲をいただく

「ここには本物しかないよ。今座ってるコーヒーカップはもちろん、その家具も、珈琲も」

店主の山岡さん2

山岡さんの言葉通り、1つひとつの物から力強いパワーのようなものが満ち、背筋が伸びるような、それでいて心地のよい不思議な空間。

夕方の店内には次々と常連のお客さんがやってきて山岡さんと挨拶を交わし、本を読んだり、のんびりと珈琲を味わっていました。

山岡さんとお話

災厄を斬る日本刀

ディスプレイされた日本刀

歴史好きで、日本刀コレクターという山岡さん。なんと自慢のコレクションから、日本刀を見せていただけることに!

握り方を伝授いただき、緊張しながら持ってみると、ずっしりとした重さが腕にのしかかります。

日本刀を持ってみる

これは「脇差」(わきざし)という比較的短い種類のものだそうですが、相当な鍛錬がないと、持つことすらままならないなと思いました。

「日本刀が斬るのは、厄災。だから名刀は宝として大切に受け継がれてきたんだよ」

という、山岡さんの言葉が印象に残りました。深川にお越しの際は、ぜひ立ち寄ってみてくださいね!

深川のみなさん、ありがとうございました!

いかがでしたでしょうか。3回にわたり、深川の歴史や文化を深堀りしてきました。

景色や時代が変わっても、深川の人々に脈々と受け継がれる江戸っ子の精神や、古いものへのリスペクトが感じられた取材でした。

今回もたくさんのステキな出会いに感謝です。ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました!

次はどこへ行きましょうか……どうぞお楽しみに!

撮影/YUTAKA SATO
ヘアメイク/MIKU SHIGEYAMA

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