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西原染匠・彩麗(sarai)「友禅染のよもやま話」 銀座店イベントレポート

西原染匠・彩麗(sarai)「友禅染のよもやま話」 銀座店イベントレポート

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京都きもの市場 銀座店にて、名門・西原染匠さんによる「友禅染のよもやま話」のトークショーが開催されました。語り尽くせない数々の技法や手仕事の苦労、そこから生まれるバラエティーに富んだ作風の染め帯や小紋着尺など…心踊るイベントの様子をレポートいたします!

みなさま、おかわりありませんか?
あいかわらず世の中全体が落ち着きませんが、そんなことにはおかまいなしに自然は悠然と移り変わり、残暑厳しい昼下がりの向こうに…
お着物のお洒落も、待ち遠しい秋の気配とともに変化していきます。

いつも日常から別世界へと誘ってくれる京都きもの市場さんのイベントや展示会!
今日も、元気をいただきながらお勉強もさせていただける機会と心踊りながら、銀座店へと向かいました。

レポーター 松嶋 綾

音大出身、ピアノ教師、フラワーアーティストとして活躍する傍ら、着物好きが高じて着付け講師資格を取得、着物愛好家として日常を通して着物文化の素晴らしさを広めることを使命とし、その着こなしは周囲から熱い支持を得ている。

レポーター松嶋綾)
素敵な響きのブランド名 彩麗

彩麗、―sarai。

下に小さくアルファベットで読み方が添えてあるように、サライと読むそう。
ステキな響きのブランド名です。

名門・西原染匠は創業70年。
京友禅を中心に、デザイン・プロデュースした多種多様な染技術のお着物を制作販売。20年ほど前に自社工場を設立し、現在は約半分を自社にて生産しそれ以外はおおよそ10社に外部受注しているとのこと。
たくさんの種類の染め帯や小紋を展開しています。

彩麗は、西原染匠が立ち上げたブランド名です。
お着物好きの女性たちがこのブランド名に惹きつけられて、何かキラキラとしたイメージを持ち、より優雅に美しく輝きを放つようにと願いを込めてブランド名に冠したということでした。

展示会場に足を踏み入れ、トークショーがはじまる前、まず私の目に飛び込んで来たのはこちらの帯!

鮮やかで印象的な色彩と図柄でありながら、とても優雅で上品な感じに魅了されました。
まさに「彩麗」という感じ!
古典的な更紗柄の中に、エレガントな彩麗のスピリットを感じました。

さて、トークショーでお話しして下さったのは、取締役の西村さん。
時節柄、マスクをして下さっているお顔からのぞくほほえみと穏やかな語り口、和やかな雰囲気に浸りながら、お話を聞かせていただきました。

来場のお客さまたちも、上品な上級者の着こなしの方ばかり。
通ならではの真を突いた質問もあり、さらに有意義なひとときとなりました。

まずは、知っておきたい基礎知識として…
トークショーでのお話と、少し調べた知識とを併せてお伝えします。

京友禅の種類には、未来に伝えたい4つの技法があります。
手描き染、型染、機械捺染、デジタル染。

彩麗では、手描き友禅と、型染の技法を駆使しての板場友禅がたくさん作られています。
板場友禅の制作過程を簡単に説明しますと、
◆図案・型の作製→地張り→型置き→糊伏せ→引き染め→蒸し→水元→仕上げ加工→完成
となります。

図案・型の作製

図案を描き上げ、一色につき一枚の型紙が必要ですから、色数が多ければ多いほど大変な労力です。

地張り

作業台となる一枚板に生地を糊で貼り付けていくのですが、真っ直ぐに貼り付けていくのがとても難しい作業。
模様の染色工程を板の上で行うため、型染は板場友禅とも言います。

型置き

型を生地の上に置き、染色していきますが、型をズレないように置き、柄によっては数百回も繰り返す大変根気のいる作業です。

糊伏せ

型で染色を施した箇所へ糊を伏せることで、乾燥防止、防染をします。
ここで板から生地が剥がされて、引き染めに移ります。

引き染め

生地がたわまないように広げて、糊伏せされていない部分に刷毛で染めていきます。

蒸し

高温の蒸気を当てることで、型置き、引き染めで染められた色を美しく定着させますが、その日の気温や湿度などにより蒸気の温度や時間を調節する難しさもあります。

水元

蒸し終わった生地は、糊や余分な染料を落とすために大量の水で洗われます。

仕上げ加工

柄に合わせた金加工や刺繍をほどこしてり、色むらを補正し全体を整えて完成となります。

「手描き」という言葉に弱いせいか、手描き友禅こそ唯一無二の貴重なものが多い…となんとなく思っていましたが、型染・板場友禅も大変な熟練の技術と時間をかけて作られているすばらしいもの、芸術性の高いもの。
型染だからこそ表現可能な図柄のお着物や帯がたくさんあるのだと、再認識させられました!

トークショーの限られた時間では語り尽くせない数々の技法や手仕事の苦労があるようですが、そこから生まれたバラエティーに富んだ作風の染め帯や小紋着尺などから、それらを味わってみましょう。

チャンチン染のジャワ更紗

こちらは、チャンチン染のジャワ更紗。

まずは先ほど、私が目を付けた紫系のジャワ更紗の帯に、もう1点並べてお話しされました。本命はトリにくることも世の常ですが、注目されるべき作品として最初に紹介下さったのかしら。

紫系の方は伝統的な更紗柄、ダークグリーンの方は新柄で、太陽や花火、はたまた万華鏡を表現しているとか。
印象的で想像をかきたてる柄行きです。

アップにすると、より万華鏡のよう。

チャンチン染という技法では、このような道具を使います。

インドで布地に蝋を付けて日本で染色、またインドで仕上げて輸入するという長い時間と場所の旅、早くて半年、多くは1年〜1年半という制作期間を経てできあがる逸品です。ですから、帯ではない着尺も作りますが制作時間がかかり過ぎ、技術保全のために作っている程度だそうです。

筆で一つ一つ手描きされた臈纈染め

こちらは、臈纈(ろうけつ)染めの作品。

この白い点々は、筆で一つ一つ描いているそう!

刺繍に見える織り柄が入った帯と合わせて。
お着物の色柄に高級感がありながら主張し過ぎないので、コーディネートの幅が広がりそう!

ハケ染めの帯

ハケ染、をご存じでしょうか?

このようなハケを使って、手描きでサッサッと描いていきます。
ハケの下側に写っているのは、先ほどのチャンチン染の道具です。

ハケとチャンキン染の道具
色々な図柄の板場友禅

ほかにも、いろいろな図柄の板場友禅がございました。

こちらは、摺り友禅のお品もの。

松竹梅と、本物の絞りのように見える刷り疋田の横段模様。

刷り疋田の横段模様の摺り友禅の帯
ぼかし染めとストライプ柄の板刷り作業を駆使した小千谷ちぢみ

ピンクのぼかし染めと、カラフルなストライプ柄の板刷り作業を駆使した小千谷紬は、なかなかの逸品。

こちらは、型絵染。

とても綺麗な発色はフランス由来のもので、日本古来のものには無いお色

地塗りを駆使した蝶々柄の作品は、モダンアートのようなリズムを感じます。

絞りをあしらった小千谷紬地の帯もございました。

アール・ヌーヴォーの雰囲気を感じさせるゴージャスな帯

箔を幾重にも重ねて、上品で古典的、かつアール・ヌーヴォーの雰囲気を感じさせるゴージャスな帯。私好み!
ドラマ『黒革の手帖』で、武井咲さんが着用されたそう。

こちらは、留袖を作る職人さんが手がけた手描き友禅の帯。
淡いホワイトベージュのお色地に、刺繍のように見える飾り紐と七宝の図柄が至極…上品!

留袖を作る職人さんが手掛けた手描き友禅の帯

次にご紹介する帯たちは、遊び心満載です!

まずこちらの作品のモチーフは…タマネギ!

そしてこちらは…ねずみ小僧!

友禅と蝋の堰出し技法のスカイツリーと東京タワーの帯

そして…スカイツリーと東京タワーを同時に見るという、贅沢な眺望!
友禅と蝋の堰出しという技法が用いられています。

右側のキツネちゃんのお顔は、なんと絞りに友禅が施されています。

絞り友禅のキツネちゃんのお顔の帯

どれも楽しくて…思わずほほえんでしまいます。
日本人にはもともと、江戸のカルタや川柳に垣間見られるように抜群なユーモアのセンスがありますもの!帯や着物というキャンバスに描かれた、このような絵を纏う日本人の遊び心に、乾杯したい気持ちです!

時代の流れとともに世相を映しながら、伝統にプラスして常に新しい試みでお着物の歴史が作られているのだと感じることが多いのですが、今日もしみじみと思い、うれしくなりました。

少々制約のある昨今の生活ですから、なおさら、今日のいろいろな作風の作品を味わいながら、これからのお着物ライフの構想や妄想が膨らみました。

お着物でのお出かけはゼロではないけれど…
控えめにしているかわりに、自分のみや、家族だけでひっそりと着姿を楽しむ、おうちご飯ならぬ、おうち着物はいかがですか?
家族の絆が強まることになるかも…そして、来たるべき時を待つことにいたしましょう!

西村さん、 これからも心踊るお着物をプロデュースして下さいね。
本当にありがとうございました。

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