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羽織の堀一「長羽織の魅力」 プレミアム銀座イベントレポート

京都きもの市場 銀座店では、2020年6月に「プレミアム銀座」イベントを開催。美しいキモノなどの雑誌掲載でも有名な「羽織の堀一」さんによるトークショーが行われました。羽織やコートの基本から、知らなかったあんなことこんなことまで…秋からの装いを考えはじめる前に、イベントの様子をレポートいたします!

みなさま、おかわりありませんか?

私にとって着物ライフは気軽に楽しむ日常の一部ですが、withコロナとなってからは、くすん、開店休業状態。
梅雨に入ったこともあいまって鬱陶しい日々が続いていましたが、久しぶりにお着物の世界をのぞかせていただく機会となり、少なからず心が弾みました。

今回は、京都きもの市場・銀座店にて開催された「羽織の堀一」さんの展示会とトークショーにお邪魔してレポートいたします。

レポーター 松嶋 綾

音大出身、ピアノ教師、フラワーアーティストとして活躍する傍ら、着物好きが高じて着付け講師資格を取得、着物愛好家として日常を通して着物文化の素晴らしさを広めることを使命とし、その着こなしは周囲から熱い支持を得ている。

洋装も季節による変化はありますが、ざっくり言うと布地の質や厚い薄い、長袖半袖という差異以外では、和装の方がはるかに様々な変化に富んでいるかもしれません。

産地ごとの布地の織り方や染め方等の特色、特に季節ごとのかなり明確なお約束ごとは和装ならではのもの。洋装にはない情緒や繊細な味わいを生み出し、日本人に生まれてよかった〜とまで思わせる、和装の醍醐味ですよね!

和装の主役は着物と帯ですが、それを引き立てる様々なアイテムのなかで、主役にも匹敵する大きな役割を持つのが羽織やコート。

「美しいキモノ」をはじめ、有名着物雑誌にもたびたび掲載されるのが「羽織の堀一」さん。

創業はおおよそ50年前。
20年ほど前から、羽織とコートの制作に特化して力を注いでいらっしゃいます。
別機で幅の広い反物を織り、ひと昔前のような「羽尺(=羽織・コート専用の短い反物)」ではなく、着物も仕立てられる「着尺」で羽織を制作しているそう。

有名雑誌にもたびたび掲載される「羽織の堀一」
ベテラン職人の勝西宏之さん

トークショーでは、ベテラン職人の勝西宏之さんの優しい語り口に魅了されながら、しばし耳を傾けました。
久しぶりにお着物に袖を通された方も多く、いつもよりは少人数でしたが、話し手も聴き手も、内にこもっていたであろうお着物への熱い思いが湧き上がってくるようなひとときでした。

時節柄、マスクのマナーを守って下さいました。

「羽織」と「コート」。
どちらも大切なお着物をほこりやチリから守る役割や防寒の役割がありますが、まず、このふたつの決定的な見た目の違いはというと…

「コート」は身体の前面が閉じておおわれているのに対して、「羽織」は開いていて帯の部分が見えること。ですので羽織は「着物と帯」さらには「着物と帯と羽織」3つのコーディネートが楽しめることですよね。

羽織紐も、最近は乳(ち:羽織側の輪っか)にフックで引っ掛けたり、前で結ぶ代わりにマグネットになっていたり…デザインも豊富で何通りも簡単におしゃれが楽しめるようです。

実は私は、せっかくの自慢の⁉︎着物と帯のコーディネートを、街行く人にも隠さず見せびらかしたい⁉︎と密かに思ってしまう時もありますが…

和装のマナーとして、羽織やコートは着なくてはいけないという大切なマナーがあります。羽織やコートを着ることが、自然界の邪気から守り、訪問宅にその邪気を持ち込まないようにする役割を持つそう。ハード面、ソフト面から守ってくれる守り神様のような存在ですね!

振袖だけは、その長いお袖で邪気を払えるからコートは要らない、あと芸者さんや舞妓さんも。
それ以外の人が羽織やコートを着ないで街を歩いていると「帯付き」といってマナー違反。
ご存知の方も多いかもしれませんが、知らぬが仏で、思いがけずちょっと恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。

そんなわけで、私にも羽織はうってつけだと、お話を伺うなかであらためて気がつきました。

もちろん、寒い冬の日には「着物にコート」さらに寒いと「着物に羽織にコート」、もっと寒いとさらにショールを重ねてなんてことも…
でも最近は温暖化の傾向にありますので、コートだけ、また羽織だけでも大丈夫かもしれません。
もちろん春と秋、そして熱い夏空でも透ける素材にて、羽織は大活躍のようです。

コートに比べて羽織姿は、軽快で小粋な感じがしますね。
そして羽織は、カーディガンやジャケットのような役割もはたしますから、屋内でも、おしゃれ着としてそのまま着ていられます。

またコートには衿の種類もいろいろとあり、形次第で多少用途が異なるそうで、表を見せていただきました。

こんなにもいろいろな衿があるのだわ…と、あらためて少〜しウンチクが増えました。
このなかで比較的一般的な「道中着」について、最近ではカジュアルからフォーマルまで着用してしまいますが、本来はおくみ部分がないのでカジュアルな用途だそう。
ふーむ…ちゃんとは解ってなかったかも。

コートの衿の形にはいろいろな種類が

さて、話は今回のテーマ、長羽織にうつっていきます。
コートの丈は「七分丈」「対丈」等、季節や好み・用途に合わせていろいろとありますが、羽織の丈はというと…

実は、羽織丈は時代とともに変化していて、ひと昔前はヒップが隠れるくらいの短めの丈でした(残念ながら実はそれだと実際以上に太って見えるのですが)。
最近の羽織丈は膝下までの七分丈くらいがトレンドで、これが「長羽織」と呼ばれ、今や主流な丈となっているそうです。
とてもすぐれもので、もともとスラリとした人もそうでないかもしれない人も…目の錯覚で⁉︎全体のシルエットがスラリと美しく見えるのです!

羽織丈による印象の違い

ふたつの写真を見比べてみて下さい。
左側の短い丈の方は、色味のせいもあるかもしれませんが、ひと昔前、言わば昭和の時代を思わせますね。

まさにマジック!
右側の長羽織の方は、横から見た時の帯の膨らみを包み込んだその曲線が下へ長くスラリと伸びたシルエットが、なんともたおやかで優雅で美しい。
なんとなく色気さえ感じて女っぷりも上がります。
長羽織、まさに、映える美しさです!

雑誌の誌面から、長羽織の着こなしをいくつか抜粋させていただきます。

こんな風にスタイリッシュで凛とした羽織姿…真似したい!
新しい風を感じながら、颯爽と着こなしたいものです。

一方で、このご時世、お着物を着るのが難しい時には、正統派な着こなしだけでなく、例えばジーンズの上にコート代わりににひらりと羽織をはおってみるのはいかがでしょう?エキセントリック過ぎます?
海外の方のそんなフォトをたまに見かけます。逆輸入です。

会場にはズラリと、いろいろな織り方や柄行きの着尺、仕立て上がった羽織が並んでいました。

会場に並べられた様々なお品物
伝統的なもの上品なもの大胆で個性的なものなど…

伝統的な柄行き、上品な感じ、大胆で個性的なものなど、選択肢は豊富です。

そのなかから、堀一さんご自慢のものをひとつふたつご紹介しましょう。

バリエーション豊富です
紗格子という独自の生地のもの

こちらの2点は、7年ほど前に開発した「紗格子」という独自の生地のもの。
この生地を織るためだけに開発した織り機は、今や豪華マンションが買えるくらいのお値段に跳ね上がったすご〜い織り機だそうです。

「紗格子」は主に夏用のための生地ですが、コートや羽織としては3月〜10月の3シーズンに活躍するそう。
下に着ている着物がうっすらと見える透け感がなんとも美しいですし、涼やかで、これから梅雨があけて暑くなる夏場、クーラーよけにも重宝しそうです。
薄くて軽くて張りがあるので、シルエットも綺麗に出るようです。
個人的に(これ、モダンで素敵!)…でも今日はお客様ではないので、トキメキを隠しておりました。

もうひとつ、会場にいらしたコーディネーターの美しいお姉さまにモデルとして羽織っていただいた、ドビー織りの絵羽柄の長羽織。

ドビー織りは着心地も抜群

ドビー織りは、密度が高く高級感のある生地で、伸縮性もあり着心地も抜群。
絵羽の羽織は、羽織丈が長くなったこととあいまって、「羽織はカジュアルなコーディネートのアイテムだから小紋くらいにしか合わせないわ」というイメージから、「付け下げ・訪問着等フォーマルなものにも幅広く対応できるもの」という概念の変革をもたらしました。

こちらも絵羽の羽織で、勝西さんおすすめのひと品です。

上品な華やかさがあって素敵ですね!

いろいろなお品を拝見しながらお話を伺って、羽織やコートのあれこれ、あらためて知ることばかりで、とてもお勉強になりました。
勝西さん、本当にありがとうございました。

上品な華やかさのある絵羽羽織

追記

今回の新型コロナウイルスは、人類の長い歴史のなかでは周期的に起こりえるpandemicとはいえ、私たちにとっては未曾有の経験。
ステイホーム、自粛の中、あたりまえの日常が奇跡的な幸せであったのだと気づかされ…
いつも身近だった着物ライフが、遠い夢の世界に遠ざかったようで悲しかったのですが、このレポートを書くなかでとてもパワーを感じました。

やはりお着物は元気をチャージしてくれる大切なエネルギー源だと確信!
withコロナ、ニューノーマルの時代にも、無理なくしなやかに、つきあい方を工夫しながら、永く永く着物ライフを楽しんでいこうと前向きになることができました。

羽織やコートが邪気を払ってくれるのなら、それこそ街中ではきちんと羽織って、しっかり守ってもらいながら…
今のような状況下では尚更のこと、そしてこれからもずーっと手離せないアイテムなんですね!

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