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時代と身分を映し出す四季の着こなし『黒牢城』 「きもの de シネマ」vol.79

時代と身分を映し出す四季の着こなし『黒牢城』 「きもの de シネマ」vol.79

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銀幕に登場する数々の着物たちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だって着物で愉しみませんか。今回注目するのは、第79回カンヌ国際映画祭 カンヌ・プレミア部門正式出品作『黒牢城こくろうじょう』です。

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ごきげんよう、椿屋です。

医者の成長を描いた『幕末ヒポクラテスたち』に続いて、今回は武将の物語をご紹介します。

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

時代劇となると、どうしても多くの男優さんが集結し、往々にして画面が黒っぽくなりがちですが……(笑)。そんな中で華を添えてくれるのが、ヒロインの存在です。

本作でその任を担うのが、主人公・荒木村重あらきむらしげ(本木雅弘)の妻、千代保ちよほを演じた吉高由里子さん。

NHK大河ドラマ『光る君へ』をきっかけにオファーを熱望した黒沢清監督の狙い通り、独特な深みある声を活かして、控えめながら言葉の節々に芯の強さを滲ませる千代保を体現されています。

注目ポイントは、4パターンの華やかな色柄のお召し物!

彼女が着用しているおはしょりのない衣裳は、日本の着物の原型となった「小袖」です。片流しに結ばれた帯との組み合わせや色の重ね方、合わせる小物や髪の結い方など……武家の奥方らしいトータルコーディネートは必見です。

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

平安時代、小袖は公家装束を着用する際の下着のような役割でした。

束帯や十二単など縫い詰められていない袖口の大きな衣服=大袖に対して、小さな袖口の衣服を小袖と称しました。その後、鎌倉時代には下着ではなく表着として着られるようになり、小袖は身分や貧富を問わず普及していきます。

作品の舞台となった室町時代後期(戦国時代)には、武家の婦人の間でも表着として用いられるように。安土桃山時代に入ると身幅と袖幅が同じくらいの振りのついた袖がつくられるようになり、豪華な打掛型の小袖なども誕生しました。この頃の小袖を「桃山小袖」といいます。

そして、江戸時代後期には袖が巨大化して「振袖」へと変化していき、小袖という名称は使われなくなっていくのです。

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謎解きの面白さが魅力となった心理サスペンス

本作の原作は、「このミステリーがすごい!」第1位となった第166回直木賞を受賞した傑作として注目される本格ミステリー。

戦国の世を舞台に、織田信長に反旗を翻した武将・荒木村重あらきむらしげが、籠城する有岡城の土牢に幽閉した天才軍師・黒田官兵衛くろだかんべえ(菅田将暉)に命じた謎解きこそが中核となる時代劇です。

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

であれば、城主・村重×軍師・官兵衛の丁丁発止のやり取りこそが、本作の最大の見どころと言えるでしょう。もう、意地と魂と矜持のぶつかり合いです。じりじりとした心理戦が繰り広げられます。

ふたりが解決に挑むのは、冬春夏秋に起きた4つの怪事件。

冬の少年殺人事件における密室殺人の犯人は誰か?春には大将首に起きた怪異に迫り、夏の僧侶殺害の謎と消えた至宝の行方を探ります。

そして、秋――すべての事件の裏にある人物の真の目的に辿りつくのです。はたして、黒幕の狙いとは?

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

地下牢に囚われた官兵衛は、事件のあらましを記した調書のみで事件の本質を突きほどの切れ者。対する村重は、殺さずの信念を持ち、事件解決のため官兵衛に助言を求めます。

狭き空間におけるふたりだけの密談は、演じる本木さんと菅田さんの技量とメガホンを取った黒沢清監督の巧みな演出が相俟って、緊迫感に満ちたシーンになっています。

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

ロケーションとバイプレーヤーが支える“風景”

本作の更なる魅力が、説得力とリアリティのある“風景”です。それを生み出すのに欠かせない要素は2つ。

ひとつが、とことん“ほんまもん”を追求したロケーション。もうひとつは、存在感を放ちながら物語を支える名バイプレーヤーたちです。

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

いまや大河をはじめ時代劇には欠かせない青木崇高さんや『木挽町のあだ討ち』で主演を務めた柄本佑さんをはじめ、クセのあるキャラクターをチャーミングに演じる荒川良々さん、渋川清彦さん、ユースケ・サンタマリアさん、オダギリジョーさんらが名を連ねる本作。

中でも、登場後しばらく気づかず、あれ?やっぱり……んー??いや!舘だてさまやん!!と声に出さずとも叫んでしまった、宮館涼太さん(Snow Man)の好演にもご注目あれ。

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©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会

萬福寺・東福寺・旧嵯峨御所大覚寺門跡といった有名ロケーションでの撮影において、映画のまち・京都の底力が存分に発揮されただけでなく、有岡城という舞台設定上、5つの現存する城をロケ地としたことによる画力えぢからこそがものを言う作品となっています。

その迫力、ぜひとも劇場にて!

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