着物・和・京都に関する情報ならきものと

女優に扮する広瀬すずの衣裳裏話『ゆきてかへらぬ』 「きもの de シネマ」vol.60

女優に扮する広瀬すずの衣裳裏話『ゆきてかへらぬ』 「きもの de シネマ」vol.60

記事を共有する

銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。前作に続き、今回ご紹介するのも実在の人物をモデルとした物語。ふたりの男に愛された女を、広瀬すずさんが説得力ある佇まいで魅せる『ゆきてかへらぬ』に注目です。

こちらも公開中!

2025.01.23

よみもの

無名の町医者が叶えた奇跡の実話『雪の花 ―ともに在りてー』 「きもの de シネマ」vol.59

大正時代を生きた3人の若者の情愛

梅の香が春の訪れを告げる今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
ごきげんよう、椿屋です。

今回わたくしが注目したのは、実在した女優と天才詩人と文芸評論家の奇妙なトライアングルストーリー『ゆきてかへらぬ』です。

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

ふたりの男性に愛される駆け出しの女優・長谷川泰子には、Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』の四女が記憶に新しい広瀬すずさん。

ドラマでは四姉妹の中で唯一、着物を一度も着ることがなかった彼女が、本作ではときに妖艶で、ときに可憐な着姿を存分に披露してくれています。

2025.01.20

よみもの

是枝監督が現代に甦らせた名作 Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』〈前編〉「きもの de シネマ」番外編

2025.01.28

よみもの

伊藤佐智子さんに聞く!衣装裏話 Netflixシリーズ 『阿修羅のごとく』〈後編〉「きもの de シネマ」番外編

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

彼女を挟んで、二等辺三角形のトライアングルを構築するひとり――不世出の天才詩人・中原中也を演じるのは、Netflixシリーズ『First Love 初恋』で一躍注目を集めた木戸大聖さん。

冒頭、雪の舞う京都で外套を身にまとい、赤い番傘を手に歩く彼の登場シーンは息を呑む美しさです。

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

そして、泰子と中也の間へ身を置くことになるのは小林秀雄。のちに日本を代表する文芸評論家になる男を自然体で表現したのは、話題作への出演が絶えない岡田将生さん。

中也に心を残しながらも惹かれ合う泰子との愛欲を、ときにひどく冷静に、ときに驚くほど情熱的に演じ切っています。

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会
物語の始まりは京都から。中也と泰子がローラースケートに興じるシーンは、妙心寺で撮影された

無邪気さや直向きさと表裏一体で存在する執着や嫉妬。渦巻く愛憎の果て、3人が行きつくところとは――。その結末は、ぜひ劇場で。

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

衣裳デザイナーが語る衣裳の裏側

3人の人間模様こそが本作における最大の見どころですが、「きものと」読者にとっては広瀬さんの着姿も見逃せない要素です。

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

というわけで、衣裳デザイナー・大塚満さんに本作の衣裳についてお話をお伺いしました。

――大塚さんは、大正時代の着物が大好きとのこと。選ばれた着物はどれも、広瀬さんに大変よくお似合いでした。

大塚さん:大正時代の着物は大胆な色、柄使いが多いのですが、その中でも女優さん(長谷川泰子)ならどんな着物を着るだろうと考えました。それと共に演じる女優さん(広瀬すずさん)が活きる、なるべくシンプルなものが良いだろうと思って選んだのが、自然と柄は大胆であるけれど色はあまり入らないような着物になりました。

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

――傘や帽子、懐中時計など時代を感じさせる小物使いも印象的でした。

大塚さん:現代の役者さんが演じるこの映画を観た人が大正時代を感じられるようにしないといけないという点を意識しながら、その時代・雰囲気に合ったスタイルと、ご本人のサイズに合ったものをセレクトしています。

加えて、役者さんがその衣裳を気に入ってくれること、役にしっかりと入れる衣裳であることを、常に大切にしています。実際の衣裳を着せたからといって大正時代にはならない。エキストラさん含め、それぞれが大正時代に生活しているような雰囲気をつくることに苦労しました。

――衣裳という観点から、一番のお気に入りはどのシーンですか?

大塚さん:撮影所のシーンでしょうか。よい雰囲気になったと思います。

――撮影中の風景といえば、墓参りシーンでの広瀬さんのコーディネートも素敵でした。

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

大塚さん:次に出てくる黒のドレスからの逆算で、あの着物にさせてもらいました。劇中劇の着物ではあるのですが、ある程度時間経過があって、女優として成功をした泰子の変化をあの着物で見せつつ、ラストの黒ドレスに流れていってくれれば良いかなと。あと、中也の奥さん(藤間爽子 as 中原孝子)との対比も考えてあの着物にしました。

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

©2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

――葬儀シーンのブラックドレスは、とてもインパクトがありました。

大塚さん:あのドレスは伊賀くん(スタイリスト・伊賀大介さん)のスタイリングです。今回は伊賀くんと二人でこの映画を担当することになったのですが、あのドレスを中心として私たちの共同の作業が始まりました。そこで伊賀くんと「泰子の人生を、衣裳という流れで表現できれば良いね」と話し合いました。

お互いに思うものを持ち込んで、伊賀くんがこれにするならばこうしようとか、伊賀くんもこちらに合わせてくれたり。最後の黒ドレスにどう持っていくか……大変な作業でしたが、うまい流れをつくれたのではないかと思います。伊賀くんにはよい刺激をもらいました。

2024.11.25

インタビュー

純喫茶ときもの feat. 小谷実由 「きもの、着てみませんか?」vol.8-1

2024.12.17

インタビュー

無類の着物好きが編み出した自在な着方 キモノ好きフォトグラファー さんかくさん(前編)

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

  • デイリー
  • ウィークリー
  • マンスリー

HOT KEYWORDS急上昇キーワード

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する