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夏木マリさんが全編着物姿で“粋なおばあちゃん”を体現『ほどなく、お別れです』 「きもの de シネマ」vol.72

夏木マリさんが全編着物姿で“粋なおばあちゃん”を体現『ほどなく、お別れです』 「きもの de シネマ」vol.72

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銀幕に登場する数々の着物たちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だって着物で愉しみませんか。2026年「きもの de シネマ」始めは、命について描いた『ほどなく、お別れです』と『安楽死特区』に注目です。

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2025.12.16

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葬祭は前を向いていくためのセレモニー

ごきげんよう、椿屋です。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2026年最初のピックアップ作品は、「死」と丁寧に向き合うことで命の尊さを描く2本です。まずは2月6日公開『ほどなく、お別れです』から。

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

こちらは、浜辺美波さんと目黒連さんのW主演で話題になっている、人気小説シリーズ(長月天音著/小学館文庫刊)の実写化作品。

就活全敗中のヒロイン・清水美空(浜辺美波)が、亡くなった人の声を聴くことができるという誰にも打ち明けられない力により葬祭プランナー・漆原礼二(目黒連)にスカウトされ、葬儀会社「坂東会館」にインターンとして入社するところから物語は始まります。

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

自身の悲しい過去から遺族に寄り添った葬祭をプロデュースする漆原。彼の厳しい指導を受けながら成長していく美空。

ふたりは4つの家族の「大切な人との別れ」をサポートするなかで、遺族にとっても故人にとっても区切りとなる「最高の葬儀」を目指すのです。

夏木マリさんの粋な着姿こそ、本作最大の見どころ!

本作最大の見どころは、美空の祖母・清水花子役を務められた夏木マリさんの圧倒的な存在感とその着姿の自然さです。

花子おばあちゃんは、美空のよき理解者であり、葬儀社への就職に戸惑う彼女の背中を押すキーパーソン。芸者を引退後、自宅で舞踊教室を開いている彼女は、お稽古以外でも常に着物を不断着として生活しています。

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

何より印象的なのは、映画の冒頭シーン。始まってすぐ、花子は孫娘と手をつなぎながら、真っ白な羽織が春らしい装いで登場します。

作品について、夏木さんは以下のようにおっしゃっています。

「私は役をいただいた際に、そのキャラクターの“履歴書”を作るのが楽しみなのですが、花子は亥年生まれで、過去に芸者をしていたこともあり、芸事に猪突猛進なタイプの人だなと。“粋なおばあちゃん”としての花子の姿が、画面の中でしっかり表現できていればいいなと思い演じました」

作中では、幾度となくスカイツリーが映し出されます。清水家の面々が暮らすのは、そのお膝元である東京の下町。そんなバックボーンもあってか、夏木さん演じる花子は全身全霊で“粋”を体現されているおばあちゃんです。

着物スタイリスト・秋月洋子さん的「ここ見て!」ポイント

そんな夏木マリさんのスタイリングを担当されたのは、「きものと」でもお馴染みの着物スタイリスト・秋月洋子さん。

photo by Natsuko Okada

「元芸者さんで、すっきりと背筋の伸びた粋なおばあちゃんという役どころなので、色半衿や色足袋、半巾帯などの普段着が中心ですが、上質なものをさりげなく着こなしている雰囲気を醸し出せたらと思って衣裳を揃えていきました。

あまり見えていないかもしれませんが……控えめだけど、ただ地味になるのではなく、花街の人ならではの裏や襦袢などに小粋な遊び心のあるものを意識しました」

と、秋月さん。

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

「衣裳コンセプトについては、マリさんが役柄のイメージをしっかりとお持ちでしたので、相談しながら進めていきました。入院の際の浴衣も、肌あたりが良く、着込んで柔らかくなった鳴海絞を選ぶなど、良いものを長く手入れしながら着ている方というイメージで、素材感などにもこだわっています」

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館

秋月さんに、衣裳の視点からの見どころをお聞きしました。

「現代のシーンでは補正は一切しておらず、マリさんのナチュラルな体に沿ったゆったりとした着付けです。対して、若い頃のシーンでは補正をして少しカチッとした感じの着付けにしています。その辺りも注目して見ていただけたらと思います」

秋月洋子さんのコラムはこちら!

2025.12.29

ファッション

徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー

「安楽死」をテーマに描く衝撃の社会派ドラマも公開中

現在絶賛公開中の『安楽死特区』もまた、『ほどなく、お別れです』とは違った“もしも”の世界を描く珠玉の1本です。

『痛くない死に方』(2021年/渋谷プロダクション)『夜明けまでバス停で』(2022年/渋谷プロダクション)を手掛けた高橋伴明監督の最新作は、近未来の日本で「安楽死法案」が可決された世界の物語。

国家主導で導入された制度のもと、人間の尊厳を問い、現代日本が抱える課題や矛盾を炙り出しています。

©「安楽死特区」製作委員会(北の丸プロダクション、渋谷プロダクション)

©「安楽死特区」製作委員会(北の丸プロダクション、渋谷プロダクション)

夏木さんに勝るとも劣らない演技力で魅せてくださるのは、同じく「命」をテーマとする『おくりびと』(2008年/松竹)と『ディア・ドクター』(2009年/エンジンフイルム、アスミック・エース)で2年連続日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞された余貴美子さん。

認知症を抱え、完全に呆けて大切な過去を忘れてしまわないうちに死なせて欲しいと願う元漫才師・真矢役で、余韻あるラストシーンを素敵に彩っておられます。

その際にお召しになっている舞台衣裳としての一張羅の着姿にも、どうぞご注目あれ。

©「安楽死特区」製作委員会(北の丸プロダクション、渋谷プロダクション)

©「安楽死特区」製作委員会(北の丸プロダクション、渋谷プロダクション)
相方はなんと!歌手「水谷千重子」としても活躍する友近さん

そんな彼女は、ケア施設「ヒトリシズカ」で常に総絞りの羽織を部屋着として着用しています。

そのナチュラルな着こなしは、本連載の初回で取り上げた『幸せの答え合わせ』(2021年/キノシネマ)や、来週ご紹介する河瀨直美監督最新作『たしかにあった幻』(2026年/ハピネットファントム・スタジオ)にも通じます。

2025.07.06

カルチャー

海外でも愛用されるきものガウン 『ローズメイカー 奇跡のバラ』『幸せの答え合わせ』 「きもの de シネマ」vol.1

ぜひ劇場へ足をお運びになり、本作が投げかける「死にたいと願うのはエゴか、生きていてと望むのは愛か」という問いについて、いま一度立ち止まって考えてみるのもよいのではないでしょうか。

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