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“死ぬる覚悟”で魅せる悲恋の名作が蘇る シネマ歌舞伎『曽根崎心中』 「きもの de シネマ」vol.76

“死ぬる覚悟”で魅せる悲恋の名作が蘇る シネマ歌舞伎『曽根崎心中』 「きもの de シネマ」vol.76

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銀幕に登場する数々の着物たちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だって着物で愉しみませんか。今回の作品は、これぞまさしく!着物で観るのに相応しいシネマ歌舞伎から。新作『曽根崎心中』のご紹介です。

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ごきげんよう、椿屋です。

京都も桜が満開。言うてる間に、高瀬川や疏水を花筏がゆくようになり、気づけば初夏の花々が咲き始めます。春の終わりに甘い香を放つ花といえば、藤。

その藤が印象的な歌舞伎の演目といえば「藤娘」ですが、「曽根崎心中」も忘れてはいけません。

©松竹株式会社

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映画『国宝』で注目された「曽根崎心中」。

3月には南座にて『曽根崎心中物語』が上演され、文楽の「曽根崎心中」もチケット入手困難になるほど、世は「曽根崎心中」ブームと言っても過言ではありません!

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その「曽根崎心中」が、シネマ歌舞伎となって全国の映画館にやってきます。そもそもシネマ歌舞伎とは?という方のために、少しばかりご説明を。

シネマ歌舞伎とは、歌舞伎の舞台公演を撮影し、映画館の大きなスクリーンで楽しんでもらう新しい観劇空間をつくる試み。歌舞伎のもつ面白さや美しさ、心を打つ数々の場面を分かりやすく、身近に感じてもらいたいという願いのもと、2005年から始まりました。第1弾の『野田版 鼠小僧』から数えて、レパートリーは40作以上に上ります。

©松竹株式会社

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4月10日から上映される『曽根崎心中』は、2009年4月に上演された「歌舞伎座さよなら公演」をシネマ歌舞伎として蘇らせたもの。

遊女・お初を人間国宝の四世坂田藤十郎氏が、お初の恋人である商人の徳兵衛を上方歌舞伎の大名跡を継いだ中村鴈治郎さんが務めた舞台です。

名作「曽根崎心中」のあらすじ&見どころ

日本アカデミー賞を席巻した映画『国宝』の影響で、「死ぬる覚悟がぁききたぁい――」というセリフがあまりにも有名になった本作ですが、簡単にあらすじをご説明しておきましょう。

©松竹株式会社

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物語の中心となる人物は、互いに想い合っている遊女のお初(19歳)と商人の徳兵衛(25歳)という若いふたり。

徳兵衛は友人・九平次から手酷い裏切りを受け、伯父に返すはずだった大金を騙し取られてしまいます。お金も信用も失って絶望の淵に追いやられる徳兵衛と、彼を信じるお初。

覚悟を決めて天満屋を訪れた徳兵衛を縁の下に匿ったお初は、命を懸けて身の潔白を証明する覚悟を問い、徳兵衛は“死の決意”を合図。ふたりは来世で添い遂げるため、夜陰にまぎれて曽根崎の森へと向かうのです。

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物語の見どころは、床下に身を潜める徳兵衛にお初が自らの足で心中の覚悟を問うシーン。映画『国宝』でも見せ場のひとつでした。女方が素足で演技をするのは珍しく、官能的かつあふれんばかりの情感で魅せる場面です。

もうひとつは、ふたりが天満屋を抜け出して曽根崎の森へと向かうときに、花道でお初が徳兵衛の手を取り先立って駆け込んでいくクライマックス。

これは、長らく上演されずにあった「曽根崎心中」を復活させた四世坂田藤十郎氏が初めて演じた手法で、それまでの女方は立役(男性)より一歩下がって行動するという歌舞伎の常識を覆しました。

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「曽根崎心中」の成り立ち、そして名作になるまで

「曽根崎心中」の初演は、元禄16(1703)年。その年に露天神社つゆのてんじんしゃで実際に起こった情死事件を題材に、近松門左衛門により人形浄瑠璃として上演されました。当時の厳しい社会の柵しがらみから逃れ、自由な愛を貫こうとする「心中」は社会現象となり、事件が多発。

江戸時代において、現代のニュースやスクープのような役割を担っていた歌舞伎は、世の中に情報を届けるに留まらず、人々を扇動する力も持っていました。

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それを問題視したお上からのお達しにより、一時は上演が中断されるほどの人気ぶりだった「曽根崎心中」。その後、宇野信夫氏と二世中村鴈治郎氏、四世坂田藤十郎氏の手によって、脚色・演出が加えられ、再興されました。

そして、「曽根崎心中」は上方歌舞伎の名作として、また成駒家のお家芸として、多くの人に親しまれてきたのです。

©松竹株式会社

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本作でお初を演じる四世坂田藤十郎氏(1931~2020)は、上方歌舞伎を代表する女方。21歳で初めてお初役を担って以来、約50年にもわたって演じ続け、その生涯で1,401回という驚異的な回数を務めました。

19歳の娘らしいフレッシュな可愛らしさや愛する男のために自分の命をも懸ける毅然とした姿は大変評判となり、天満屋の遊女「お初」は藤十郎氏の当たり役となったのです。

彼の芸と血は、長男の四代目中村鴈治郎さん、孫の初代中村壱太郎さんへ、脈々と受け継がれています。

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映画を観た後は、「曽根崎心中」聖地巡礼へ

その名が示す通り、「曽根崎心中」の舞台となっているのは大阪のまち。真っ先に思い浮かぶのは、「お初天神」ではないでしょうか。

こちらの正式名は「露天神社」。そう、通称となっている「お初天神」は「曽根崎心中」が由来なのです。現在は、商店街の中にこじんまりとありますが、それこそ心中事件が起こった頃は、「天神の森」と呼ばれる広い空間があったと言われています。

ちなみに、現在の境内にはお初&徳兵衛の石碑とブロンズ像があり、2013年にはプロポーズに相応しいロマンチックなスポットとして“恋人の聖地”に選定されました。

お初と徳兵衛の像
露天神社の絵馬

幕が開き、お初が徳兵衛と偶然再会するのは、「生玉(生國魂)神社」でのこと。当時、境内には芝居小屋や見世物小屋が軒を連ね、数多くの文化芸能がこの地で花開いたと伝わります。

生國魂神社

同神社には、近松門左衛門はじめ文楽関係者の霊や芸能上達の神様が祀られた「浄瑠璃神社」もあります。毎年7月11-12日に行われる夏祭り、8月11-12日の大阪薪能、9月第1土日に開催される落語家とファンとの交流イベント「彦八まつり」などをきっかけに訪れてみては。

本門法華宗の寺院「本覚山 久成寺」の山門前には、「曽根崎心中 お初墓所」の石柱が建てられています。ちなみにこちらの寺院は、大相撲大阪場所が開かれる3月には高砂部屋の宿所となるため、「高砂部屋」の看板も掛けられています。

©松竹株式会社

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歌舞伎座での実際の公演を収録した映像を駆使して、幕開きから幕切れまでを臨場感たっぷりに魅せてくれるシネマ歌舞伎『曽根崎心中』。

ポイントを押さえた編集はもちろん、クリアな音声や細かな表情まで分かるクローズアップなど、シネマ歌舞伎だからこその没入感を、劇場で体感してください。

歌舞伎初心者なら、イヤホンガイドアプリでの同時解説を利用して、登場人物の心情の変化を追いかけてみるのもお勧めです。

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