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衣裳によるキャラクターづくりで描く戦後の世界『わたしの知らない子どもたち』 「きもの de シネマ」vol.84

衣裳によるキャラクターづくりで描く戦後の世界『わたしの知らない子どもたち』 「きもの de シネマ」vol.84

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銀幕に登場する数々の着物たちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だって着物で愉しみませんか。今回ご紹介するのは、戦後の日本に実在した“名もなき子どもたち”を描いた『わたしの知らない子どもたち』です。

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2026.10.02

カルチャー

物語を彩る花火大会のための浴衣『汝、星のごとく』 「きもの de シネマ」vol.82

名もなき子どもの目を通してみた戦後ドラマ

ごきげんよう、椿屋です。
芸術や読書に留まらず、エンタメの秋がやってきました。中でも、映画は新作が目白押し!

『汝、星のごとく』『遥かな町へ』に続くこの秋注目の作品は、西川美和監督最新作『わたしの知らない子どもたち』です。

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

舞台は、戦後の日本。描かれるのは、敗戦によってすべてを奪われ、自分自身をも手放してでも生き抜くしかなかった多くの戦争孤児たちが再生へと向かう姿です。

家も家族も大好きな音楽も失った12歳の少女・琴子(小八重葵美こやえあみ)は、長い黒髪を切り、親からもらった名前を変え、少女であることを隠し、少年として生きる道を選びます。

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

価値観が大きく揺らいだ戦後という時代を“子どもの視点”から構築する物語を手掛けたのは、広島市生まれの西川美和監督。

「戦争の惨禍を知らない私がそんな題材をあつかうことに絶えずためらいもありました。いっぽうで、どうせやるならなるべく新しいトーンで、かならず今を生きる人に届く語り口にしよう、これから大人になる人たちに観てもらえるものにしようと、ものを調べ、長い時間をかけて脚本を書いてきました」

という言葉どおり、戦争そのものではなく、戦争が終わった後を生きた子どもたちを通して、彼らを取り巻く世界が丁寧に描かれています。

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

衣裳担当・小川久美子さんにインタビュー!

――映画における衣裳デザインという役割を、どのように捉えていますか?

「衣裳デザインって衣裳を選ぶことだと思われがち。最終的にはそうなんですが、その前の段階が大変なんですね。まず『どんな空気感の映画にするか』ということを考えないといけないので。本作だって、本当に暗い映画にしようと思えば暗い映画になる。それはもう画面の問題なんです。だから私は、絵を描くように考えて衣裳をつくったり選んだりしています。

衣裳は、映画のかなりの部分を占めていると思います。ずっと人物が出てくるわけだから、まずキャラクターに合っているか、どんなキャラクターかが見て分かるか、ということが大切です。それから、大きな画面で見たときに、そのまま見えたほうがいいのか、見えないほうがいいのか。画面の綺麗さとか、画面から生まれる印象に合っているか、ということも考慮します。

悲しい場面だったら、画面全体を見てもなんとなく悲しい画面になっていたほうがいいじゃない。最終的には、衣裳でも『キャラクターをつくる』ということを考えているので、そういう意味では、衣裳で世界観をつくっているんだと思います」

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

――キャラクターをつくることを意識して衣裳を選ぶとき、具体的にはどんなことを大事にされていますか?

「その子が元気な子なのか、静かな子なのか。それによって、やっぱり選ぶものも違う。だから、『キャラクターに合っている』というのは絶対に大事。例えば、すごくおとなしい子がわざと派手な格好をすることもあるし、逆に、清楚な子だから清楚な格好をしますというわけでもない。ホンを読んでその子のことを考えて、どっちに持っていった方が、“その子らしさ”が出るのか、ということですね」

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

――琴子が孤児になった際に、唯一自分で選んで買ってもらったブルーの衣裳も印象的でした。

「琴子のブルーというのは、男の子でも女の子でもないという感じがあったんです。あの子は本当は女の子だけど、男の子に扮しているから女の子のものはもちろん選ばない。何でもいいと言って買ったんだと思う。だから、一瞬、中性的なものを選んだような感じもある。

もちろん、それだけじゃなくて、画面の中で立っているだけで語ってくれるというか……。ポツンと立っていて、楽しくも見えるし、悲しくも見える。『中間の、どちらの人も使える色を選んだ』というのは、ちょっとあったと思います」

“キャラクターをつくる”衣裳とヘアメイク

――様々なキャラクターの中で最もインパクトのあった赤間麻里子さん演じる、曽根の勤め先の女将さんの衣裳について教えてください。

「あの時代の置屋の女将さんというものをイメージして選んでいます。もっと言えば、『この人はこういう仕事をしていた人なんだろうな……』と、衣裳を見ただけでなんとなく分かるようなものを選んでいます。

たぶん、セリフの中でははっきり言っていないと思うんだけど、もともとは置屋さんとか、そういうところの女将さんだったんじゃないかな、と私は想像していたんです。戦前はそういう商売をしていて、戦争が終わったら今度は米兵相手にやっている、という設定だと思います。だから、それがなんとなく分かるような着物にしたわけです。

着物を知っている人が見れば、『これは素人じゃないな』と感じる。お化粧も少しそういう雰囲気にしてあるし、全体として、以前からそういう仕事をしていた人なのかなと思わせるようなものを選びました」

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

――衣裳を選ぶ際には、メイクさんともバランスを相談するのでしょうか?

「メイクさんも衣裳を見て合わせてくれるので、細かく相談するわけではないです。例えば、着物を見たら、やっぱり口紅をしっかり引きたくなる。色味が濃いから、『これは普通に暮らしている女性じゃないな。何かしらの仕事をまとめている人だ』と感じる。そうすると、メイクも自然とそれに合わせてくれる。だから、いちいち言わなくても、こうなっていくんです。

眼鏡は、ちょっと面白いから入れようかという話はしたかもしれません。ちょっとやり手っぽいというか、ただの女将さんというより、商売がデキる人に見せたかったんです。お金のことをしっかり考えているというか、なかなか抜け目がない。単に綺麗な人というだけではなくて、商売上手な感じ。ただ流されているだけじゃなくて、『こういうことをすれば商売になる』ということを見据えている、頭の回る女将さんをイメージしてみんなでつくり上げました」

リアリティを生み出す設定に沿った衣裳選び

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

――二階堂ふみさん演じる曽根の着物や浴衣について、どんなふうに選ばれたのでしょうか。

「浴衣においては特別なものはありません。曽根が普通に持っていそうな浴衣を選んだ、というだけですね。当時の女性は普通に浴衣を着ていたわけですから。ただ、女性たちの衣裳は、リアリティを重視しています。いまのものでもクラシックな柄だったら、全然変わらない。だから、『その時代に、この人が学校の先生だったときにも着ていただろうな』という感じにはしています。

寝る際の浴衣にしても、どんなものにするかというより、この先生が着ていた浴衣を寝巻きにした、という感じ。この人は、東京大空襲で被害に遭っていない状況で、中野かどこかの設定だったと思うんだけど、その家自体が焼けていない。戻ってきたら、自分のものが残っているわけです。だから、割と普通の、学校の先生だったときのものをそのまま使っている設定です。東京で普通に暮らしている、仕事を持った女性が着ていた浴衣、という感じですね」

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

――最後に、この作品の見どころを教えていただけますか?

「この作品は、監督やスタッフともいろいろな色を入れて画面からもエンターテインメントとしての楽しさが伝わるようにつくっています。映画を見た直後ではなくて、ずっと時間が経ってから、この作品で感じる何かの重さのようなものがじわっと来ればいい。画面を一瞬見たときに『怖い、見たくない』とならないようにしたかったのもあって、そのあたりは注意しながら描いています。

実際、当時はもっと色のある時代だったと思うんですよ。モノクロ写真で見ると、全部白黒に見えちゃうけど、写真がそうなっているだけだから。いまの映画は、みんなそこに合わせてしまうところがあるけど……実際には、戦争に入る前はかなり華やかな時代だったわけだから。戦争の話だからといって、画面から伝わる重さがないように意識しました。それは結構、見どころかもしれませんね。

この作品の魅力は、色味や画面の美しさだけではなく、そこから伝わってくる子どもたちの活気や、生きようとする姿にもあると思う。悲惨な状況に引っ張られるんじゃなくて、自分の意思で生きていこうとする子たちの話になっていると思います」

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

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