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白昼のアンニュイ 「自分らしさを解き放つ、シーン別着物コーディネート」vol.5

白昼のアンニュイ 「自分らしさを解き放つ、シーン別着物コーディネート」vol.5

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燦々と降り注ぐ太陽の光を浴びていると、身も心も陽気になり解放的な気分になります。一方でうだるような暑さと快適な冷房のはざまで、なんだか気怠い時もあります。動と静のギャップは夏ならではです。気怠さをアンニュイに転化すれば、いつものあなたがさらに魅力的に映るかもしれません。

真夏の陽気を感じて

長い梅雨がようやく明け、暦の上では立秋ですが夏本番となりました。
全身を包む明るい光、肌を刺す陽射し、うっそうとした緑の深呼吸の香り。
真夏の陽気は身も心もなんだか解放的にさせられます。

しかし今年は夏の行事やイベントもことごとく少なくなりました。
そんななか、あなたには会いたいと首を長くして待っておりました。自由に旅にも出られず、気軽に屋外で過ごすことも許されず、あなたと思い出を重ねた褐色の跡はすっかり消えてしまいました。今私は真っ白で、もうあなたを忘れてしまいそうです。

昨年の旅先に思いを馳せて…
自身の肌からすっかり消えてしまった水着の跡を確認しながら、今年もちゃんと会いにきてくれる夏に、そんな風に言葉をかけてみました。

昨年とは違う夏の過ごし方をしている方、工夫している方、たくさんいらっしゃると思います。私も今回を機に自分の心地良いちょうどいいところを探っています。

真夏の陽気というと快活やヘルシーなイメージですが、暑いさなか常にそうはいられません。時に暑さや冷房で気怠くなったり、のんびりしたくなったり、ゆっくりしたくなったり色々あります。

今回は誰しもが持っている多面性に焦点をあて、前回の夏における大人ヘルシー(”日まばゆい大暑”参照)のもう一つの側面である気怠さをアンニュイと転化させ、違う魅力を発見するコーディネートをしてみましょう。

なんだか動きもゆっくりで、視線もやわらかな感じは、ヘルシーとはまた異なる女性らしい感じかもしれません。

アンニュイをあらわすコーディネートのコツ

アンニュイはフランス語で、退屈や倦怠感、物憂げなさまを示します。
どちらかというとマイナスの印象ですが、現在はプラスの意味でほどよい抜け感や無造作、色っぽいなどで使われることがあります。
元の意味をプラスに転化してコーディネートしてみましょう。

真夏の明るい太陽と同じように元気でハツラツとした感じもいいですが、
ほど良い抜け感やこなれ感で、優美なやわらかさやしなやかさを表現してみます。

抜け感やこなれ感を再現するには、ご自身の自由な感性をもとに「いい加減」をおすすめします。
以前のコーディネートでは(”みずみずしい新緑と調和する花々”参照)、仏教用語で言う”中道”がよく、完璧や精緻に考え尽くされたものをよりもその時の感性から「なんとなくといういい加減さ」がちょうどいいように感じるとお伝えました。

たおやかでは しなやかな優美さを
ゆたやかでは ゆったりとした優美さを
まどやかでは おだやかな優美さを

みなさん自由に想像して、楽しく考えてみてください。
着物3枚に帯3本(半幅帯1本)で3パターンご紹介します。お好みに近い感じはありますでしょうか。

着物コーディネート たおやか

・芭蕉柄の絹芭蕉の小紋
・自然布の名古屋帯
・黄色の麻の帯揚げ
・茶系の左右色違いの帯締め

しなやかな優美さ

着物コーディネート ゆたやか

・観世水柄の紗の小紋
・水玉柄の絽の夏用の袋帯
・網織の銀ちらしの帯揚げ
・薄いグレーの冠組の帯締め

ゆったりとした優美さ

着物コーディネート まどやか

まどやか前後横

・麻の葉柄の木綿の浴衣
・首里花織の半幅帯
・紺色の三分紐
・波頭の陶器の帯留め

おだやなか優美さ

こなれ感のある着姿

みなさん「こなれ感のある着姿」と聞くと、どのような方を想像されますでしょうか。
着物を普段から着慣れている方、長くお召しになられている方でしょうか。

上記の方々もそうだと思いますが、私は「骨格でお召しになっている方」にこなれ感を感じます。
それを感じるようになってから、着物は骨格で纏うものだと思って自分の身体と向き合うようになりました。着付けさせていただく時もお客様の骨格を必ず意識しています。

着付けの基本は大切ですが、そこから自分の骨格に合わせて、微調整させていくことがこなれ感に繋がると考えています。
着付けを習っている最中は忠実に基本を守っていて、変化させることに勇気がいるかもしれませんが、ぜひ自分自身にちょうどいい着付けを探ってみてください。

骨格で纏うことに慣れてしまえば、多少の体重の増減などは当然カバーできます。
しかし体型カバーになるかと言えば、そこは少し違うと考えています。

補正の有無関係なく、実は、その方自身の体型やスタイルが洋服よりよくわかる衣装であり、それも着物のひとつの魅力と考えております。

そして本質的なその方の美しさを引きたて、潜在的な魅力を引き出す力が宿っていると信じています。

センスを磨くには Part.6

センスを磨くには

以前、センスを磨くにはの初回において(”口説かれ着物の纏い方”参照)、コツはないけれど、3つおすすめをしました。

1.想像力を養うこと
2.一般的な概念や型に囚われないこと
3.自分を知ること

今回はその中で、2においてファッション雑誌のパラパラ見をお勧めします。着物の雑誌より洋服のファッション雑誌は多種多様なので、好みはさておき感性が刺激されます。パラパラ見で何も印象に残らなければそれはそれでよく、残れば自分にとって何かしらの気づきになるので、気が向いた際ににぜひ行ってみてください。

昨年BAZARという海外系のファッション雑誌で、目に留まった言葉がありました。

”Not How to Dress up, But How to Show it.” 
”どう着飾るかより、どう見せるか”

西洋は足し算の美学という認識だったので、衝撃的でした。
まさしく日本の引き算の美学に近いのではと思いました。

日本人は徹底的に引くかまたは必要な僅かなもので本来の美を見出す文化を持っています。
着物において柄と柄を合わすこと、色と色を合わすことも着る人が引き立つように工夫します。けして華美過ぎず野暮にもならないセンスというところでしょうか。

どう着飾るかより、どう見せるかと訳されていましたが、さらにどう魅せるかと捉えると
よりステキだなと思って、今でも心に留めています。

洋服が好きなこともありますが、着物ではなくファッション雑誌からインスピレーションをいただくことも多いです。着物から遠いファッションが好きな方々にも、この感じなら着物を着てみたいと思われるようなコーディネートができたらと思っております。

Kimono is Best Fashion in Japan.

着物一枚に帯三本

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