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大久保信子先生のコーディネート講座「夏の装い」イベントレポート

コロナウイルス感染拡大防止のために出されていた外出自粛要請の緩和が進み、県をまたぐ移動が許可されて数日の6月23日、大久保信子先生のコーディネート講座が開催されました。毎回、大人気の大久保信子先生のトークショーや講座。今回は夏の装いを中心に、基本のルールや、着こなしのポイントをお話しいただきました。

大久保信子先生 プロフィール

着物スタイリスト、江戸着物研究家。東京・日本橋に三代続いた木綿問屋に生まれる。お茶の水女子大学附属高等学校、学習院女子短期大学(現・学習院女子大学)英米文学科卒。着付け講師を経て、着物スタイリストに。雑誌をはじめ、舞台やテレビの衣装担当もこなす。豊富な経験から一人ひとりの個性を引き出すセンスと技術に、多くの女優や歌手から支持されている。歌舞伎などの伝統文化にも精通し、江戸文化研究家としても知られる。
『伝統を知り、今様に着る 着物の事典』(池田書店)※監修
『大人の素敵なお出かけ着物』(世界文化社)※監修
『手ほどき七緒 大久保信子さんの着付けのヒミツ』(プレジデント社)※監修
『徹子の部屋』(テレビ朝日)出演

レポーター 美鈴

母の着物を受け継いでから「自分で着物を着たい!」と着付け教室へ。
美術鑑賞や音楽鑑賞に着物を着てでかける。
京都きもの市場ウェブサイトで商品の説明を読むのが大好き。
母の遺した着物の整理や帯や小物の合わせ方に悩んでいた時、大久保信子先生の『伝統を知り、今様に着る着物の事典』に出会う。以来ことあるごとに開き、わからないことや扱い方などを調べ装い方を確かめたりする、私の着物バイブルに。

レポーター美玲
コロナ対策万全でイベントスタート

先生のコーディネート講座を取材できるとあって、うれしさ100倍で銀座店に伺いました。
取材当日はあいにくの雨。でも、コロナによる自粛が解かれて久しぶりのおでかけなので、がんばって着物を着ました。
参加された方もほぼ着物でいらっしゃっていました。

早速…「荷物が多くなるところが少し面倒ですけど、雨でも着物を着てほしい。」「雨に対応した履物があるのよ。」「雨コートもあります。」と先生のお話がはじまりました。

コロナ対策も万全でスタートしております。

さて、テーマは夏の装いのコーディネートです。

まず着たいと思う着物と帯を決めたら、次は何を決めたらよいでしょうか?
帯締めを決めますか?帯揚げを決めますか?
参加者の反応はまちまち。
先生の答えは帯締め。理由は、帯揚げはほとんど隠れて見えないからだそう です。

夏の帯締めで重宝するのは冠(ゆるぎ)組と呼ばれる帯締め。
近年、夏用にレースの帯締めが登場してきましたが、以前はオールシーズン使える帯締めとして冠組が主流であったとのこと。強いて言えば太さの違いで使い分ける、夏用は細いものにする、つまり量感を減らすという使い方だそうです。

レースの帯締め

また、夏らしさを表現するには、涼しげな色合いを選ぶことがポイント。
白や薄いブルー、薄いピンクがお勧め。
また、この色合いはいくつになっても似合うそうです。

ここで注意することは、
装い全体を基本三色でまとめるということだそうです。
着物や帯の中の一色を取り入れたりして、三色で収めるとすっきりとした装いになるとのことです。

細冠組の帯締め

次は帯揚げ。 

夏物は「絽」か「紗」のものにする。
帯と着物の間に入るので、着物か帯に同化する色を選ぶようにするとよい。

おすすめは飛び絞りの帯揚げ。
写真は、涼しげな白地に彩度を落としたオレンジの絞りの飛び柄。

着つけるときに、この柄をひとつ左側に、持ってくることがポイント。
重いもの、尊いものを左側に、心臓のある方に持ってくるとバランスが良いのだそうです。従って、色変わりの帯締めは、色の強い方を左側に持ってくるように締めるのだそうです。
付け下げの肩の柄も左側ですね。同じ理由からです。
ただし20代の方や振袖の場合は、中央寄りにもってきたり、もっと華やかにしてもよいとのこと。

絞りの柄の出し方
飛び絞りの帯揚げ

先のものとは色違いのとび絞り。
小さな点を絞ったものもあります。

6月1日になったら、半襟と帯揚げは必ず夏物に衣替えをします。 
長襦袢は着る人の自身の感覚で、暑ければ袷の時期でも夏物を着ても構わないということです。着物も5月ごろ(立夏のころ)から単衣を着てもよいそうです。

次は草履。

夏向きの草履として、パナマと言われる草履があります。かなり高額です。

※パナマ草履とは、南米産のヤシに似た葉を編み上げて草履に仕立てたもの。着物好き憧れの高級品です。

そこでおすすめはエナメルの草履だそうです。

パナマ草履
白のエナメル草履

エナメルの草履は、オールシーズンに使うことができます。
白のエナメル草履が一足あると何にでも合い便利だそうで、薄いグレーや薄いピンクは白と同様に考えてよいとのこと。また、強い色を合わせる場合は基本三色の考え方から、着物を中心に同化する色を選ぶとよいそうです。

さらに、礼装用として選ぶなら、前が高くなっているものを選ぶとよいそうです。
豪華に見えるそうですよ!

お話は、続きます。
                         
夏の羽織は「色は黒など濃い色で素材は紗が便利」とのこと。

夏物は「他人が見て涼しそうと感じること」が装いのポイント。
おすすめの反物はこんな感じ。向こうが透けて見えます。

羽織を着たら、帯枕は薄くする。
薄くならないときは上下逆さに使う。
薄い枕なら必要に応じて、タオルを巻くなどして厚くできるので、薄いものを求めるとよい。
へちまの帯枕がおすすめ。
 
※羽織の丈は、近年長めになってきています。さかのぼって、昭和時代は短め、大正時代は長めでした。時代とともに人々の感覚は変化します。生活様式の変化も関係しているようです。

大久保先生は膝裏ぐらいの丈がお好きとのこと。
それが歩きやすい長さだそうです。歩く姿が美しいことが大事とおっしゃっていました。
羽織の良いところは、室内でも脱がなくてよいところ。そのまま着ていてよいので、帯結びに自信がないとき助かる。また、年齢を重ねたら、体形をカバーしてくれるところも良いそうです。

紗の涼しげな羽織生地
羽織ついて熱心にトークする大久保先生

写真中央の、先生が手にしていらっしゃるステキな反物はなんと絵羽柄で、袷用の羽織にもコートにもお仕立て可能なものです。

ところで、まずはじめに揃えるコートは「雨除けと塵除けを兼ねるもの」がよいとのこと。
素材はあまり透けないタイプで、色は濃い目のものにしておくと便利だそうです。
また、飛び柄の小紋をコートにするのもよいそうです。

おりしも、銀座店は「プレミアム銀座」と題してイベントの真っ最中。
写真の反物は、羽織とコート専門で有名な「羽織の堀一」さんのものです。
プレミアムとだけあって、各地のすばらしい織物や染めものが集まっていました。

さらに、大久保先生の深い見識を発揮していただくべく、「江戸小紋」についてお話を伺うことになりました。

「江戸小紋」とは
細かい模様を白抜きし単色で染める日本の型染めの一つ。江戸時代の武士の裃 (かみしも) に用いられて発達し、羽織、着尺などにも使用されるようになった。明治以降、婦人着尺に細かい模様で多色の型友禅が現れ、これも小紋と呼ぶようになったため、本来の小紋と区別するため江戸小紋の名が使われた。この語は 1955年小宮康介 (1882~1961) を重要無形文化財保持者に認定するにあたり、文化財保護委員会が当用したもの。( ブリタニカ国際大百科事典より )

遠目には無地に見える江戸小紋。
目上の人に会う時の装いとしてもふさわしいとのこと。色無地と同様、紋をひとつつけると格が上がりフォーマルな装いになるそうです。
江戸小紋のなかでも特に格式が高い柄は「鮫」「角通し」「行儀」という文様で「三役」と呼ばれています。

フォーマルな装いにもなる江戸小紋ですが、合わせる帯によって、もちろんカジュアルなシーンに着ていくこともできます。
袋帯をすれば正装、染の名古屋帯をすればカジュアル。ランチに行くときなどは名古屋帯は染でも織でもよいし、しゃれ袋帯もよし。コーデイネートしやすい着物です。

ほぼ無地に見える江戸小紋。この写真では柄がわからないほど細かいですね。
この反物は、東京染小紋の染元「石塚染工」さんのものだそうです。

東京染小紋の染元「石塚染工」さんの江戸小紋

最後に、参加者から質問が出ました。

Q:左側にポイントを持ってくることについて

着物の左肩に柄がある場合、帯締めや帯揚げのポイントを左側に持ってくると、重なったりけんかしたりしないか?

A:けんかしないし、重なることもない。左にポイントがある方が落ち着く。

Q:帯のお太鼓について

新しい帯を締めるときに、お太鼓に折線が入ってしまい締めなおすのに苦労することがある。お太鼓の部分に折線が出ている方を見かけることもあるが、そうならないようにするにはどうしたらよいのか?

A:お太鼓の部分をよけ、ずらして畳む。

お太鼓ずらして畳む方法

納品されてきたときのように端を揃えて畳むのではなく、自分の体型からお太鼓の位置を考えてずらして畳む。

たとう紙用の長さに畳む方法

着物用のたとう紙に変えて、長めに畳むのもひとつの方法。

ついてしまった線を消すにはアイロンをかける。
裏から当て布をし、その布に軽く霧を吹き、アイロンをかける。
スチームはかけてはいけない。

着物は一晩干すと、大体の皺はとれる。
畳むときは手で撫でて、見えない中の部分が折れ曲がっていないか確かめる。

装いを磨くには古典を知ることが大切。
古典を知り、その中から自分のセンス引き出していく。

ひとつ聞けば、ふたつみっつも答えが返ってくる大久保先生。
短い時間のなかで、たくさんの装いやコーディネートのポイントをお話しくださいました。

そして、ちょっとしたこぼれ話も。

「これは玉三郎が好きな色柄なのよ。」

歌舞伎にもお詳しい先生ならではのお話に「へえ、そうなんだ。」と、思わず会場に笑みがこぼれました。

池田重子先生との着つけのやり取りでは、着物用の着つけのボディーを作られたお話が楽しく、また、池田先生のコレクションのすばらしさを紹介してくださいました。

「もっと聞きたい。」
きっと、参加されたほかのみなさまも思われたことと思います。

次の機会が待ち遠しいです。
ありがとうございました。

大久保先生