今年の初め、『竺仙』の展示会に伺い、小川社長と着物研究家・大久保信子さんの対談を聞きました。「江戸末期には上等物の浴衣は外出着として定着していた」(小川さん)という史実があること、「よそゆき浴衣にお太鼓、足袋、半衿ならホテルにもいけますよ」(大久保さん)という着こなしアドバイスに、お墨付きをもらったように思いました。
お手入れがラクなのも、浴衣のありがたいところです。
初めは洗うのが怖くて、クリーニング屋さんに水洗いをお願いしましたが、2年目からは自分で手洗いするようになり、最近ではネットに入れて洗濯機へ。
メンテナンスも少しずつ大胆になってきました。
とともに、生地は綿紬独特の柔らかさが出てきて、色は少し褪せた分、優しさを増しました。
9年目の奥州小紋はもはや私の皮膚の一部のよう。
着るときも向こうが体に合わせてきて、まるで着物が私の体を覚えているかのようなのです。
この形状記憶感は私にとって初めての感覚で、直線裁ちの平らな布が体に沿ってくる愛おしさは格別。
素朴な綿紬ならではかもしれません。
くたくたになったら家着にして、そのあとは寝間着に。
最後は端切れにし、生活の役に立ってくれたら。
奥州小紋にとって、それは誇らしい大往生ではないでしょうか。