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團十郎襲名披露へ行こう! 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.24(最終回)

團十郎襲名披露へ行こう! 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.24(最終回)

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延期になっていた市川團十郎白猿襲名披露が11月から2カ月間、歌舞伎座で行われています。一年の締めくくりに、新しい團十郎に会いにいきませんか?

現在公演中!

2022.10.19

よみもの

初代国立劇場さよなら公演へ! 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.23

祝祭の助六

『十二月大歌舞伎』(12月5日~26日、12・19日は休演)は、市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露、そして八代目市川新之助初舞台の公演です。

昼夜二部制の公演から、夜の部の『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』をご紹介しましょう。

歌舞伎十八番のひとつである『助六由縁江戸桜』は、吉原三浦屋の格子先の一場だけ。

でも、その中で吉原の習俗や花魁(おいらん)の暮らし、客たちの駆け引き、俠客の生態や喧嘩(けんか)沙汰が描かれ、荒事・和事の立役、女方、二枚目、敵役…と歌舞伎のさまざまな役柄が登場します。

江戸の街の〝祝祭劇〟でもあったようです。
そのため、助六が上演されるときは吉原あげてバックアップ、劇場だけでなく街全体がお祭り騒ぎになったのだとか。現在でも、いつもより華やかな雰囲気になるように思います。

豪華な顔ぶれ

お話は荒唐無稽です。

俠客の花川戸助六は、三浦屋の花魁・揚巻の情夫(まぶ)。粋な男ですが喧嘩が絶えません。しかし、それは仮の姿。

実は曽我五郎で、源氏の宝刀・友切丸を捜すため吉原に出入りしていたのでした。

友切丸を持っているのは、揚巻に言い寄る髭の意休というお大尽。意休は助六の正体に気づいています。助六は意休を切り、友切丸を手に吉原を脱出します。

助六はもちろん團十郎、三浦屋揚巻は坂東玉三郎(5~15日)と中村七之助(16日~)。

白酒売新兵衛(助六の兄・十郎)に中村勘九郎、意休には坂東彌十郎。ほかに市川猿之助、尾上菊之助、市川左團次、松本幸四郎と豪華な顔ぶれが揃います。

紫と男は江戸に限るなり

助六といえば、紫の鉢巻きが代名詞。二代目團十郎が始まりです。

紋付の黒、衿・袖・裾に見える赤、鉢巻きの紫、足袋の黄色…と江戸の男の粋を体現しています。

人気役者が舞台で身につけた色は、町人たちにとって「粋」な色となりました。

藍・茶・鼠しか着ることを許されなかった人々がその中で微妙な色の差を追求し、色彩感覚を磨いていたことも、「粋」の源になったと思います。

2022.04.16

よみもの

“四十八茶百鼠”をまとう 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.17

助六の鉢巻きが桔梗の花の色のような青みがかった紫だったので、この色が「江戸紫」として定着していったようです。

助六人気にあやかって紫は大流行しました。「紫と男は江戸に限るなり」という川柳もあるくらいで、江戸っ子は紫が大好きだったのです。

紫は、紫草という植物の根(紫根)で染めます。武蔵野は古くから紫草が育ち、江戸では井の頭の池の水を使って紫が染められました。

ところが高価な紫根で染める「本紫」は、なかなか庶民には手が届きません。知恵を絞って「似紫(にせむらさき)」を生み出しました。藍で下染めし、蘇芳や茜といった赤の染料を重ねるなどして紫に似せたのです。

歌舞伎では、大店(おおだな)の女房などがよく紫の衣裳をまとっています。紫は富の象徴でもあったのでしょう。

助六にちなんで、紫を装いに取り入れるのはどうかしら。特に紫の染め帯はおすすめ。

紬や、縞などのちょっとした小紋に合わせると、カジュアルな装いが楽しめます。

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また、紫の帯締めや帯揚げで、ちらりと〝助六感〟を出すのも素敵です。

2020.05.07

まなぶ

着物で広がる彩りの世界・紫色編 「色の印象・コーディネートを学ぶ」

襲名披露の装い

市川團十郎は江戸時代から続く大名跡であり、その襲名披露は特別なものです。

劇場中が華やかな空気で満たされます。いつもより、ドレスアップして!

1階、2階席なら訪問着などをお召しになって、お祝い気分を盛り上げましょう。

装いの中に成田屋ゆかりのものをしのばせるのもいいですね。

色なら團十郎茶、紋なら三升、杏葉牡丹。

ちなみに、助六の衣裳にも付いている杏葉牡丹が市川家の替紋になったのは、江戸城の大奥が関係しているそうです。

二代目の團十郎は、贔屓にしてくれていた奥女中から杏葉牡丹の紋付を贈られます。それは、将軍の御台所(みだいどころ)から奥女中が拝領したもので、杏葉牡丹は御台所の実家である近衛家の家紋でした。

おわりに

2年にわたる「歌舞伎へGO!」も最終回となりました。

物語のテーマや舞台衣裳の色や柄、役者ゆかりの色や紋、そして季節を織り込みながら装いのヒントをお届けしてきましたが、少しでもコーディネートの参考になっていれば幸いです。

コロナ禍で急遽休演になったり、客数を制限したりと、上演する側も見る側もそれぞれに大変な日々が続き、現在も完全に元に戻ったとはいえない状況です。

それでも、劇場で歌舞伎を見ることがどんなに心の映えになったことでしょう。このお芝居なら何を着て行こうか、考えるだけでもワクワクしませんか? 

ぜひ、おしゃれして、お出ましになってくださいませ。

次は劇場でお目にかかりましょう!

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